第10話 鏡写しの少女たち3

 思わずトウカは瞳を閉じる。それでもなお、ちかちかと昼間のような明るさが瞼の裏に残っている。それほどに、強い光だった。ぎゅっと眉を寄せる。

 どれほどの時が経ったのか。トウカは恐る恐る瞳を開く。強い光を浴びた目は未だおかしな具合になっていて、なにも見ることができなかった。目を開けたとて、白い世界が続いているだけだ。何度も瞬いて、夜の気配に目を慣らそうとした。そうして人知れず戦っていると、トウカの体に突然衝撃がかかって、うわっと声がもれた。


「トウカ、戻った」

「戻ったよ!」


 どうやらヨシノとカグノに抱きつかれているらしい。着物越しに温かな体温を感じる。ようやく目が慣れたころ自分に抱きつく少女たちを見下ろせば、ヨシノとカグノは頬を紅潮させていた。


「ほら」

「ほら!」


 自慢げに二人が見せてくるのは群青色の石だ。ただし、先ほどまでの勾玉の形ではなく、美しい真円の。


「本当だ――」

「綺麗でしょう」

「中の子がね、とっても喜んでいるんだよ」

「そう、だね――。きっととても喜んでいるんだろうね」


 群青色であることはなんら変わらないのだ。しかしトウカにはその石が、先ほどまでのものと決定的になにかが違うことは分かった。とても言葉で表すことができそうになかったが、とにかく違うのだ。先ほどとは異なる石だと言っても差し支えない。内包しているものが、あふれ出ているものが、匂い立つものが違う。


「この石、こんなに綺麗だったんだ――」


 ウツギと簪屋の店主も石をのぞきこんで、「ほう」と声にならないため息をついた。魅入られたように無言で石を見つめる。


「――これは、一つに戻してやってよかったと思えるな。まさか、これほどとは――」


 ようやく己を取り戻したらしい店主はそう呟いた。そんな店主に、ヨシノとカグノはおもむろに手を突き出す。店主は首を傾げた。

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