第10話 鏡写しの少女たち2
そのうち、盃と彼女たちを中心に風が生まれた。初めはそよそよと髪を揺らす程だったが、次第に鋭さが増し、ヨシノたちの袖がはためき、トウカの髪をかきまぜた。思わず顔の前に手をかざして、目を細める。
――あ。
トウカはぼんやりと盃の水が瑠璃色の光を帯び始めたのに気づいた。柔らかい光が輝いて、盃から溢れ出す。光は際限なく生まれた。まるで、瑠璃色の蛍が盃からあふれ出してくるようだった。こぼれた光は地に落ちると、あちこちに散らばる。
その幻想的な光に照らされて、少女たちは微笑みを浮かべていた。
ひときわ強い風が生まれて空気が震えた。
よろめいたトウカの肩をウツギが掴む。支えられながら、トウカは目の前を見据えた。
盃の中の水が、渦を巻きながら宙に立ち昇った。光を帯びた水がぐるぐる、ぐるぐると緩やかに回る。やがて、水は大きな丸い形を成した。盃に収まっていたとは思えない大きさの水のかたまりだった。その中で、群青色の二つの石が揺れている。
丸い形にはなったものの、水はいまだ回転を続けていた。その流れに乗って、二つの石は近づいては離れることを何度も繰り返す。近づくたびに、ちかちかと光が生まれた。その光で庭が照らされる。トウカはその度に目を細めた。
だんだんと、光が生まれる感覚が短くなっていく。石が近い場所を回っているのだ。ぱん、ぱんっと光が生まれては消えていく。間隔はさらに短く、そして光は強くなっていく。
勾玉のようだった二つの影が、水の中で丸い形を作っていく。影が、重なった――。
「――っ」
一瞬、まばゆい光で辺りが包まれた。
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