第5話 妖しい挑戦状2

「あれ、あんた、この前の」


 街に出た二人はウツギの鼻をたよりに鍵師の少年アサヒを探した。ウツギが歩いて行った先は小さな長屋で、そのうちの一室にアサヒがいた。ウツギが挨拶をすませたあと、トウカは木箱を差し出す。


「今日は仕事をお願いしたくて。これを開けてほしいの」


 アサヒは色々な角度から錠前を観察し、眉を寄せた。


「なんか、すごく開けにくそうだな。相当性格悪いやつが使っているんじゃないか」

「ああ――、それシラバミさんのだよ」

「うわ」


 アサヒは心底嫌そうな顔をした。トウカとウツギは思わず笑ってしまう。


「バミさんのってことは試されている感じがする――、絶対開けるから、ちょっと待っててくれ」


 心強い言葉とともに、アサヒは細かい道具をいくつか取り出して作業をはじめた。トウカはその手元をじっと見つめる。トウカにはよく分からないが、ずいぶんと細かい手仕事だ。


「ねえ、アサヒ」


 黙って作業を見ているのが退屈になったころ、トウカは声をかけた。作業中に話しかけるのは迷惑だろうかと思ったが、アサヒは「なに?」と返事をする。


「たまゆら堂のアオヒメのことだけど、アサヒは知り合いなんだよね」

「そうだよ。昔はよく一緒に遊んでいたんだ。アオイがたまゆら堂に入る前の話」

「アオイ?」

「あいつの名前。今はアオイの姫でアオヒメって呼ばれているみたいだけど。でもあいつ、姫なんて柄じゃないんだよ。そんなお淑やかなのは似合わない」


 アサヒは一度手を止めてそう言うと、再び作業をはじめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る