第5話 妖しい挑戦状3

 トウカが見たアオヒメは艶やかで、美しく、微笑が似合う少女だった。姫と言われても違和感はない。首を傾げていると、ポチを指先で小突いていたウツギが顔を上げた。


「たまゆら堂の娘はみんな微笑をたたえた人形のような態度をしている。つくりもののような完璧で美しい娘が揃う、それがあの店の売りなんだそうだ。そういう風にあそこの娘たちは指導されているんだろうな」


 その言葉にアサヒは頷く。


「他の娘がどうなのか俺は知らないけど、すくなくともアオイは昔あんなんじゃなかった。もっともっと、明るく笑うやつだったよ」


 カチャカチャと錠前に突っ込んでいた器具を外して、アサヒは「開かない」と呟いた。それまで使っていた器具を放り出して次の細長い器具を掴む。


「アオイはさ、ずっとたまゆら堂で働くのが夢だったんだ。たまゆら堂の娘はこの街の女の中じゃ憧れなんだよ。だからあそこで働けることになって、俺も応援したし、今でもしてる。でも――、俺は前のアオイの方が好きだった。それに、たまゆら堂の娘はそう簡単に会えない。俺ももうずっとあいつに会ってないんだ」


 寂しそうにそう言った。

 だからアサヒはあの披露目の日、ずっとあそこにいたのかとトウカは思った。じっとアオヒメがいた三階を眺めていた少年の姿が思い出された。

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