第2話 少女の隠し事2

 勝手場でウツギは慣れた様子で作業を始めた。そばではポチが尻尾を振っている。


「トウカ、皿を出してくれ」

「うん」


 トウカは重ねて置かれている皿を手に取った。そのとき、指に鋭い痛みが走る。思わず声を上げたトウカをウツギが振り返る。


「指を切ったのか。ああ、皿が欠けていたんだな。悪い、気づいてなかった。待っていろ、今手当を」

「ううん、大丈夫だよ」


 甲斐甲斐しく手当をしようとするウツギに首を振った。指からは赤い血が滴っているが、トウカは傷口をおさえて身を引く。


「自分でやるから」


 それだけ言うと自分の部屋へと向かう。後ろでウツギがなにか言っていたが、足早にその場を去った。


 ――変に思われたかな。


 部屋につくとおさえていた指をそっと離す。赤い血がこすれて指先に広がっている。だが、そこに傷口は。滑らかないつもの肌だ。

 トウカは眉をひそめながら、血のあとをふき取り何事もない指先に布を巻きつけた。


(第二章 第2話「少女の隠し事」 了)

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