第4話 魔法の練習と家の外へ

 


 4.魔法の練習と家の外へ



 俺です。



 最近は目もはっきり見えるようになって来ていたので、起きている時には家族の目がない時を狙って魔法を使う練習をしている。



 元の世界と違ってこの世界では何にでも魔素が宿り魔力を持っているそうなので、目を閉じて自分の身体を意識する。



 そうすると何となく薄っすらと全身からエネルギーを感じじる事ができ、特に胸の中心辺りから若干強めのエネルギーが出ている気がする。




 そこで、胸の中心辺りにある若干強めのエネルギーに向かって左手へ動けと念じてみると少しだけ左手が暖かくなって僅かに動かしやすくなった。



 このよくある魔法の練習でもこの世界自体が思っていたのと違っていたため、ちょっと魔力を動かしたら気絶したり、怪我をしないか最初はかなりビビりながら魔法の練習をしていた。



 暫くこのように魔力を身体の内側だけで移動させて練習していた。



 今では魔法の使い方に関しては説明された様に自分の意思で動かす事ができる事が分かったため、今日はついに魔力を身体の外側へ動かして魔法を使ってみたいと思う。



 今は母親は寝ていて、父親と兄達は外へ出ていていないので丁度いい。


 最初は何をしようか。この木と草でできた家で火を使うのは危ないしいきなりそんな事をしても魔力がなくなってしまわないか怖い。



 そしてまだ母親は寝てるので出来るだけ起こさないように練習したい。



 そこで家の入り口付近にある打製石器が目に入ったのでそれを動かす事が出来るか試してみることにした。



 胸の中心にある魔力に意識を向け、その魔力を外へ伸ばして打製石器を押すイメージをしてみる。



 すると1cmくらい打製石器が動いた。



 初めて魔法を使った事で嬉しくなり、手を叩いて喜んでいたら母親が起きたので練習は一旦終わる。



 俺は産まれてからずっと家の中で過ごしている。



 母親もその間ずっと家にいて、俺の世話をする以外には父親や兄達が外で採ってきたツタと乾燥された草を編んでいたり、夕飯の準備として木の実の皮を剥いたりしている。



 ちなみにここまでで一度も家族の名前が出てきていないが、それは家族に名前がないからだ。



 家族内で互いを呼ぶ時はこうだ。



「ウォ!」(おい!)



 酷い呼び方だと思う。



 このウォ!のイントネーションと声の違いで誰が誰に呼びかけてるか判断するしかない。



 それはさておき、母親が起きたので授乳され、今日もいつものように作業に戻ると思っていたがいつもと違い授乳された後もずっと抱き抱えられている。



 お?なんだ?



 母親はそのまま立ち上がって家の入り口に近づいていく。



 今は俺も首がすわって安定しているし、少しはハイハイもできるようになっているからついに外に出れるのか?期待に胸が膨らむ。



 母親はそのまま入り口付近にある打製石器を持ち、入り口の草を退けて外へ出た。



 視界に入り込んでくる眩い光。



 今までは家の中にいて、入り口から漏れてくる外の光しか無かったためとても眩しくて目が開けられない。



 時間が経ちようやく目が慣れてきて俺は初めて家の外の景色を見る事が出来た。



 初めて見る外に興味が抑えきれず、母親の腕の中で必死になって首を振り外の景色を視界へ収める。



 抱きかかえられているので母親の背後を見ているが、家の外は10cmくらいの丈の草が生えていてところどころ土が見えるような土地で、家の裏側200メートルくらいの所から森なっていて、さらにその奥には山が見える。



 母親は家の入り口から出て、そのまま真っ直ぐ歩いていく。



 今は母親の背後しか見えないので、前の方を見たくてもぞもぞ動いていたら横向に抱き直してくれた。



 抱き直してくれたので前方も見えるようになり、この家のある土地は半径100mほど木があまりなく開けている土地で、森と山に囲まれている事が分かった。



 この世界でも太陽が東から西へ動くとすると、家の入り口は北向きのようだ。



 そしてこの開けた土地の中に他にも家らしき物が5つある事に気付いた。



 俺はこの近くには家族しか住んでいないと思っていたが実はこの開けた場所は村だったようだ。



 他にも人がいる!とかなりワクワクする。



 母親は村の中心付近に着くと座った。



 俺も地面に降ろしてもらい母親の手の届く範囲をハイハイで散歩する。



 一部地面が黒くなっているところがあり、そこに木の燃えかすや灰が落ちている。



 以前焼いたネズミのようなものを家族が食べていたがここは村で共有している台所のようなものかもしれない。



 俺が散歩を楽しんでいると俺の家から20mほど離れた所にあるお隣さんの家からも女の人がこっちへ向かってくるのが見えた。



 やっぱり毛がもじゃもじゃの猿人だ。



 そして服を着ていない。



 初めて家族以外の人を見つけたのでもっと見たいがどんな人か分からないので母親の元へ戻る。



 しばらくすると他の家からも女の人が出てきてこっちへ集まってきて、母親と話し?始める。



「フォッブフォ」(久し)



「ウォ キャッ フォ」( 子 大きい 来た)



「ウォ ワフォッ ウィ」(子 丈夫 良い)



 翻訳スキルが余り仕事をしていない気がするが、恐らく「久しぶりだね〜」「子供が大きくなったから来たよー」「子供が元気そうで良かった」的な会話をしているんだろう。



 やっぱりこの世界の言語はこれなんだなと落胆していると甲高い高い声が聞こえた。



「キャベ フィ」(初 見)



 俺より少し大きい恐らく1歳くらいの女の子が俺に向かって話しかけていた。



 話しかけられたのでまだ喋れないがとりあえず返事をする。



「ダ!」



 そうするとその子は俺に近寄ってきてほっぺたをつついたり、手をムニムニしたりしてくる



 友達認定されたのだろうか。



 転生初の友達だと思うと凄い嬉しい。



 俺もその子が触ってくる度に「ダ!」とか「ア!」とか反応して転生初の友達と遊んでいた。



 しかし身体はまだ赤ちゃん。



 今日は魔法の練習もしたし、少し散歩もしたからかすぐに疲れて眠くなってきた。



 必死に眠気に抗ったがいつのまにか寝てしまったようで次に起きた時は家に戻っていた。



 もっと長く起きられるように早く成長したい。






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