未完成な夏の思い出。

野彩

未完成な夏の思い出。

プロローグ


此処は何処だろうか。

昨日の事が思い出せない。

ただ分かる事は、

今は私の中の「Uz」

(あ、普通の人からすると夏だね)

ということ、隣には親友の未来が居ること。

そして、

此処は何かのホームのような場所ということ。

それだけだ。

これから私はどうなるのだろうか。

また明日は来るのかな。



 一部  夜明け


あれから一日が経った。

昨日新たにわかった事は、

ここは空の上にあること。

下には、海?と町並みがあること。

謎だけれどコンセントもあって電気も供給されていること、これぐらいかな?

待っていても今は夜だし、

風も無く茹だりそうだから、

偶然持ち合わせていたスマホで好きなアーティストの音楽でも聞こうかな。

そう思っていたら、隣の未来が耳元で囁いた。

「二人で一緒に笑えない、変わらない日々を抜け出そうよ」

私はどういう意味なのか、その時はわからなかった。

未来が笑ったけれど、その声は藍の空に響いていった。


星空が白みだしてきた。

胸が鳴っている。

眠ってしまわないように

上がる音楽を流した。

無駄なモノは何一つ無いから

前を向こう。

そうすればきっと笑えるさ。

終わらずに、一生生きて征けるさ。


何故かそう聴こえるような気がした。



二部  雨



ふと、昔のことを思い出した。

親や周りの人達に、散々嫌味を言われていたときのことだ。

そんな時、私はずっと自分より下手くそな人を探して優越感に浸っていた。

でも、そうする度に、

少し自分を嫌って現実逃避の毎日だった。

そんな時に、声を掛けてくれたのは

紛れもない、今すぐそこに居る未来だった。

未来は

「別に良いんじゃない?

無理に強がらなくても。

下を見て強くなれるのも人間だからさ」

そう言ってくれた。

だけど私は

「わかんない、もうわかんないよ!」

を何遍も叫んでいた。

私達は毎日存在証明に一生懸命で

素晴らしい世界でも

まだ生きる意味を探している。

希望が無ければ人間は生きれないんだ。


希望が消えかけたときも

未来がいてくれた。

おかげで今私は生きている。



三部  同じ景象


未来は私にこんな言葉を掛けてくれた。

「貴女は単に自身持っていればいいだけっしょ

 卑屈にならなくたっていいよ

 全部吐き出しちゃえよ

 きっと貴方も持ってるんだよ

 願ったのならば叶えてしまえや」

って。そう言われても私はずっと

同じ景象に参っていて。

答えを探すとどこか不安になっていた。

 


 四部  空奏


ふと目が冷めた。

眠っていたようだ。

ホームに何かが来ている。

列車のようだ。

未来が手を掴んだ。

「走りだそうよ!

 未来の世界へと!」

体が動いた。

私と未来は列車の事を

『空奏列車』

と読んだ。

この列車のダイヤグラムは不思議で、

夢に満ち溢れている。

理想へ連れて行ってくれそうな気がする。

私と未来は、列車に乗っていた。

とても景色が良く、風が心地良い。

今にも滑り落ちそうだ。



エピローグ


あの日、空から落ちた日から私は変わった。

あの日までは私は

気分によって敵を選び戦う少女だった。

あの日から未来には会っていない。

あの日の事を思い出してみると、

未来の頭の上に

『輪のような物』

がついていた気がする。

貴女がいなくなってから、私は

あの日貴女に言われた事を度々思い出しては

その言葉について考えている。

あの日言われた言葉。

「だから今絶対に君も歩みを止めないで」

あの言葉を受けて私は。

君が居なくても笑って夏を迎えている。





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未完成な夏の思い出。 野彩 @8sai

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