第30話 神と人 旅立と期待
「それで私はこれから何を糧に生きていけばいいのかしら?」
「それは少女ちゃんが考えればいいんじゃないですかねぇ。例えば魔王に挑んでみるとか?」
「何でそんな面倒くさい事しないといけないのよ!」
「人種には大歓迎されるんですがねぇ。」
「それに魔王って元人種じゃないのかしら?」
「そうみたいですねぇ。」
「敵対している訳じゃあるまいし答えはノーよ。」
うーんと首を捻るアレク
まさかアレクの身の振り方のオススメが魔王討伐だとは思わなかった。
寧ろ魔王は邪神側じゃないのかしら?と思うニーナ。
それを滅ぼして良いのだろうかと思うが悪対悪と言っても必ず一枚岩では無いのだろう。
そもそもこの邪神は悪ではあるが、善良な面も持ち合わせている。
本当にそれでいいのかは謎であるが邪神には邪神の何らかの都合があるのだろう。
「世界の強者を倒して回るとかはどうなんですかねぇ?」
「そうねぇ、手始めにアドラメレクとかいう
「それは余りオススメ出来ないんですねぇ。」
「名前からして打たれ弱そうじゃない?」
強ち間違っていないので渋面を浮かべるアレク
「強者と戦うとか何処かの国に遣えるとかそういう面倒事は避けたいので当てのない旅にでも行ってくるわ。」
「少女ちゃんはイベント体質だから何処に行っても退屈しないでしょうねぇ。」
「それは褒めてるのかしら?」
「邪神流の賛辞なんですねぇ。」
「そう? じゃあそういう事にしといてあげる。」
そういうとニーナはアレクに手を差し出した。
「色々あったけど一応感謝しといて上げるわ。」
「ツンデレですかねぇ。」
違うわよバカと手をは叩かれた。
それだけ言うとニーナはクルリと背を向けた。
「行くのかい? 少女ちゃん。」
「えぇ、エリスを頼むわよ。」
「挨拶はいいのかい?」
「また、その内会えるでしょ? だからさよならは無しよ。」
そういうとニーナは外壁を飛び降り闇に紛れていった。
「寂しくなりますねぇ......。」
アレクの声が夜の帳に溶ける様に消えていったのだった。
ニーナが旅立った翌日
別れも告げず泣き噦るエリスを慰めるのにアレクは苦労していた。
今はエリスは泣き疲れた様でパルムの膝を借りて眠っている。
「本当に良かったんですか? 邪神様。」
「何がですかねぇ?」
「一人で行かせて。」
「少女ちゃんはワタシ達が思っているより強いんですねぇ。それに今は外に出て行く方が良いと思うんですねぇ。」
「邪神様がそうおっしゃるなら。」
「それにさよならとは言わなかったんですねぇ。」
「邪神様も変わられたんですね。」
「ワタシはワタシのままなんですねぇ。これからもこの先も。」
アレクとてニーナとの旅は楽しかったのだ。
ただ最大の目的を失った少女を今は止めるべきでは無いと考えた。
紆余曲折あったが次に会った時はどんな風に成長しているのか楽しみでもあった。
「それに」
この先をアレクは言葉にしなかった。
何処にいても少女ちゃんの噂は聞こえて来そうですからねぇ。
こうしてニーナは旅立って行った。
どの様な成長を遂げて帰ってくるのかは邪神ですら分からないのだろう。
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