第19話 エリスは自身を振り返る
時間はアレクとエリスがニーナの元から離れ修行に行くと神界に戻った頃に遡る。
「邪神さま、ここは?」
「ここは神界ですねぇ。」
「神界? その様な所に入ってもいいんでしょうか?」
「ワタシが着いてるから大丈夫なんですねぇ。それにここは
「そうなんですね。」
分かった様な分からない様なエリスだった。
「先ずはチカラについて説明は必要ですかねぇ?」
「はい邪神様。是非お願いします。」
「邪神の使徒になると特別なチカラが与えられるんですねぇ。
「流石はお姉様。」
尊敬、敬愛、様々な感情が含まれている。
「幼女エリスちゃんは少女ちゃん程では無いですが、それでもそこいらの強者よりはよっぽど強くなれる筈なんですねぇ。」
今まではかなり魅力的な説明だったが邪神の使徒になるのにデメリットが無いわけではない。
ニーナはその
例え一人になっても復讐をやり遂げるだけのチカラが。
故にデメリット等気にもしなかった。
そのデメリットが人では無くなるという物だったとしてもだ。
見た目がモンスターの様になっている訳では無いので見た目上は人と変わりはない。
中身が本質的には亜人又は亜神になっているのだ。
「幼女ちゃんは人を辞める覚悟はあるんですかねぇ?」
今から人間辞めますか?と聞かれて即答で人間辞めますと言える人は一体どれだけ居るのだろうか?
普通なら少しは躊躇いを見せるだろう。
「少女ちゃんは即答だったんですねぇ。少女ちゃんには少女ちゃんの事情があるからワタシからは特には何も言わなかった訳なんですがねぇ。」
「私は...... 私は......。」
「まぁ幼女ちゃんのその反応が普通なんですねぇ。人が人を辞めると言うのは思っている以上に大変なんですよ。」
例えエリスが邪神の使徒にならなくてもアレクは困らない。
その上でエリスがどちらを選択するのかを委ねる。
「ゆっくり考えればいいんですねぇ。」
そう言って邪神は姿を消した。
幼女ちゃんの年齢で人生を左右する選択肢は酷だと思うんですがねぇそう呟きながら。
一人で考える時間を貰えた事はエリスにとっても今まで子供だから、何のチカラも無い弱い私、可哀想な私と理由を付けては眼を背けてきた色々な事を振り返る良い機会になる。
こういう機会は今まで全く無かったので時間を気にする事も無くエリスは自身の事を振り返ったのだった。
私にあった物
優しかったお母様とお兄様はもういない。
お父様は変わってしまわれた。
意地悪な義母さまと気持ち悪い義兄様
あれ?私なんで迷ってたんだろう。
私には大切だったものが何も残っていない。
ずっと考えない様にして目を背け自分の心に蓋をしていた
自分がまだ子供だから何のチカラも持たないからただただ現実から逃げていた。
弱い可哀想な私
どうせもう私には失う物はない。何も残っては居なかった。
その事に漸く向き合えたエリスは大好きだったお母様とお兄様を思い初めて大声を出して泣いたのだった。
もう迷う必要はないだろう。
「私も前に進まないとお母様とお兄様に顔向け出来ないの。」
一人の何も出来なかった弱い幼女はそれを卒業し何かを為し得る少女へと今羽化を始める。
「邪神様、私決めました!」
「随分早かったですねぇ。」
声が先に後からその本来の姿を現したアレク。
「では答えを聞こうエリス・アルザベート」
「私、エリスは邪神様の使徒になります。」
「後悔はないか? エリス・アルザベート。」
「ございません。」
アレクは只の可哀想なだけだった幼女が今そこから変わろうと決意を宿した意思をその目に浮かべているのを感じていた。
「良かろう。エリス・アルザベートよ。これより貴様は邪神の使徒となる。
「かしこまりました。」
本来の姿をしているアレクの手からエリスに向かって黒い波動が与えられた。
「闇のチカラを受け入れて見せよ! それが最初の試練だ。」
そう言うとアレクは踵を返して消えていった。
「必ず受け入れてみせます。邪神様。」
エリスは膝をつきアレクを見送った。
身体の中に手を突っ込まれ中身をごちゃ混ぜにされている様な不快感と頭がおかしくなりそうな激痛に苛まれながらもエリスはギリギリで意識を無理やり保っていたが、それも最後までは持ち堪えられず意識がブラックアウトしたのだった。
エリスが倒れるとアレクは元の姿で直ぐに現れた。
「少女ちゃんでも意識を失ったのに幼女ちゃんには酷過ぎたかもしれないですねぇ。」
そう言うとエリスを加えて運びベッドに寝かせる。
「一応あの姿をだと邪神らしく振る舞わないといけませんからねぇ。」
ニーナの時も結局は介抱したアレクは全く仕方のない使徒共ですねぇと言いながらエリスが目を覚ますまで見守っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます