第14話 ニーナ報復を考える 其の2 散歩のついで

 今日は絶好の日和だわ。


 商人ギルドから帰り日が落ちる迄ゆっくりしたニーナはいざ散歩へと繰り出した。


 商人ギルドのマスターのオススメスポットだ。


 「確か街を出て北に向かった湖だったわね。」


 散歩と行っても夜の散歩だ。


 月明かりに照らされてニーナの黒に赤が入り混じった髪色が綺麗に映えている。


 散歩なのに完全武装なのは万が一夜道で魔物に出会ったら面倒臭いからその対策を兼ねて。


 素手でもこの辺りの魔物なら十分なのだが宿で身体を綺麗に拭いた後なので手足が汚れるのが嫌っだったからだが。


 街を出て一時間程歩くと湖が見えて来る。


 夜半なので人影は無いし夜盗などの気配もしない。


 若干弱い魔物の反応はあるが態々ニーナにやられには出てこないだろう。


 暫し湖面に映る月を楽しんだ後、湖の周りを散策する。


 風が吹いていないので湖面は穏やかなものだった。


 「流石商人ギルドのマスターのオススメね。素晴らしいわね。」


 湖の周りを散策しながら散歩を楽しむ。


 湖から見える少し高い位置に篝火が見えた。


 「あれは一体何かしら?」


 ニーナは篝火に導かれる様に歩いて行くと何やら斜面を切り立てて入口と思われる穴が開けられている。


 篝火は焚かれているが人が居る気配は無かった。


 「流石にこんな時間じゃ誰も居ないわね。しかし、こんな斜面に穴なんか空けて湖に遊びに来た子供が入って迷子になったり怪我でもしたらどうするつもりなのかしら?」


 そう言うとニーナは切り立てて無い斜面に移動してダークホールを作った。

 作ったダークホールを穴の入口に作ったもう一つのダークホールと繋げて穴が塞がるまでに土砂を流し込んだ。


 それはもう完璧に完全に綺麗に塞がる様に。


 これで穴の中に入って怪我をする者は居なくなるだろう。


 出来栄えは胸を張って誇れる様に。

 

 仕事は完璧にやり遂げてこそだからだ。


 ついでに闇魔法の陰移動を応用して地面を動かして大木を移動する。

 移動した大木を穴を埋めた付近に配置して自然になる様に並べて行く。


 これで不自然に削られた斜面に美しい景観が蘇った。


 「まぁ、こんなものでしょう。」


 何処からどう見ても自然な出来上がりニーナは満足した。


 これでこの穴に入って怪我をする様な子供は出ないだろう。


 念の為、他にも穴が空いていないか見て回った結果他にも数カ所同様に何故か篝火が焚かれて不自然人工的な穴が空いていたので同様の処理を行なって行く。


 「自然環境の保護や景観を保つのは前の世界でも行われていたしこれは人類の責務だと思うわ。」


 全ての作業を終えたニーナは


 「良いことをした後はやはり気分がいいものね。」


 そう言って清々しい気持ちのままやどに帰り普段以上にぐっすりと安眠する事が出来たのだった。


 

 翌日街が何やら騒がしかったが、特に気にする事も無く商人ギルドへ向かった。


 商人ギルドのカウンターにてギルドマスターであるゲールに面会したいと告げると受付嬢は急いで階段を駆け上がって行った。


 少し待つとどうぞ此方へと階上へ案内される。


 階上奥にある扉まで案内されると受付嬢はノックしてニーナ様をお連れしましたと声を掛けた。


 「お入り下さい。」


 その返事と共にギルドマスターの部屋へと受付嬢に伴われ入室する。


 昨日とは違いゲールは机に置いてある紙束を難しそうな顔をして見ている。


 目線は紙束に集中しているが、受付嬢へお茶を用意する旨を言付け受付嬢が部屋を出たのを確認してから話し始めた。


 「すいませんニーナ様、少々立て込んでおりまして。」


 「いいえ、構わないわ。昨日はゲールオススメの場所に散歩に行ったのよ。湖の周りが緑豊かでとても良い場所だったわ。今日はそのお礼に来たのよ。」


 「早速行かれたのですね。ご満足頂けた様で何よりです。」


 それは安堵の表情だった。


 「お忙しいみたいだし又、日を改めて出直すわよ?」


 「いえいえ、もう終わりますので。」


 そう言うとゲールは紙束を横に除けるとニーナが座っているソファの対面に座り直した。


 「少し鉱石の販路を変更しておりまして、それで時間が掛かってしまいました。」


いや〜お恥ずかしい限りですと言って苦笑いをしている。


 「それは大変ね。何なら私が新しい鉱脈探してもいいけど? 但し、いま旅の連れが留守にしているので戻ってきてからになるけど?」


 「その際はご尽力をお願いします。」


 分かったわと軽く返すニーナ。


 「鉱脈については後程ご尽力頂くとして当ギルドにもニーナ様が考案なされたマヨネーズに匹敵する目玉商品の開発のご協力をお願いしたいのです。」


 「それは約束だから構わないわ。私の利益は売上から一割の部分も変更に依存は無いわよ。」


 「しかし、一割だと我々が儲け過ぎてしまうんです。実際マヨネーズだけでも既に商人ギルドにがかなりの利益を上げております。ファースデイルの製造だけでは追い付かず各街で工場を作る流れになりそうです。」


 この世界にもマヨラーを生み出してしまったのかと少し申し訳ない気持ちになる。


 「儲かっているならいいじゃない。私はお金よりも今は情報が欲しいからそこはお互いに益があるならそれでいいじなないかしら?」


 「そうおっしゃって頂けるなら幸いなんですがね。ニーナ様がお金が入用になる事がございましたら商人ギルドの方で用意はさせていただきます。」


 「ありがとう。もしもの時はお願いするわ。それでマヨネーズに代わる物だけど調味料がいいの?それとも出来上がった料理がいいのかしら?」


 「調味料は持ち運びが可能なので商人間でのやり取りの面では便利ですね。既にマヨネーズは王国にも出回っていると商人連中から聞いております。」


 販売価格よりかなり高額でも貴族連中が買い集めているという話を聞いて貴族ならもっと良い物を食べればいいのにと思うニーナ。


 「そうね、調味料も良いけどこういうのはどうかしら?」


 ニーナはゲールに持ち運び出来る軽食の提案をした。


 材料は既にある物で作れるので特に困る事は無いだろう。


 ゲールに材料を揃えて貰えれば作る作業の実演をするので軽く料理が出来る職員の手配も同時にお願いした。


 ゲールもこれならと目が輝いていたので儲ける算段はあるのだろう。


 余談でゲールから聞いたのはエイミーの移動屋台がかなりの勢いで広がっており既に他の街でも屋台が走っていると聞けたのはニーナにとっては嬉しい話だった。


 何が自分に向いているかなんて自分では中々分からない物で、それを見つけた人はその道で成功を納める可能性が高いのだと思うと天職に巡り合える人は稀なんだろうなと改めて思ったのだった。


 以前はオフィスレディーとは言え身体を余り動かさない事務方だったのが今は剣を振り魔法を使っているのだから人生なんて分からないものである。


 「ゲール、そろそろ私は戻るわ。用意が出来たら声を掛けて貰えるかしら?」


 「分かりました。ニーナ様。なるべく早く材料の方は手配致します。」


 「頼んだわよ。」


 そう言って部屋を出ようとした所でゲールからこちらをどうぞと何やら手紙を貰った。


 後でゆっくりお読みくださいとの事だったのでありがとうと礼を言って商人ギルドから立ち去ったのだった。


 多分手紙の内容は例の件なのだろうと推測しそれを服の内側に入れニーナは宿に帰ったのだった。


 宿に帰って少し休憩してから手紙の封を開けると其処にはじゃじゃ馬の話と共にとある貴族についてかかれていた。


 ニーナは手紙を読み次に取るべき行動を頭の中でシュミレーションしていくり

 鉱石の採掘については復旧迄に数十年はかかるだろう。


 また一から木の伐採だと思うと愉快な気分になってくる。


 「伯爵家の基盤の産業は潰した。これは大ダメージなのは間違いないわね。次に貴族の権威を失墜させる為にはと考えると......。」


 どうしようかしら?


 じゃじゃ馬は最後にお仕置お楽しみが決まっているので今しばらくは放置しておく。


 もう一度ゲールからの手紙を読み直しニーナは最大限屈辱を与える方法を思案していくのだった。


 


 


 


 



 


 

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