第7話 幕間1 冒険者ギルドの焦燥感
ニーナが商人ギルドで狂乱の試食会を大成功させた翌日の冒険者ギルドでは......
「おい! 一体どうなってるんだ!」
冒険者ギルドのギルドマスターマクシーは出勤早々荒れていた。
理由は商人ギルドの昨日の試食会と銘打たれたイベントが大成功を収め商人ギルド前が早朝から長蛇の列を為しているのを出勤途中に見たからだった。
「昨日の商人ギルドでの試食会とかいうイベントを開いた少女の担当者は誰だ!?」
職員達の目は一人の女性に向けられている。
「また君か、エイミー。君は一体どういうつもりなんだ?」
エイミーからすると登録だけさっさと済ませると立ち去ってしまいその後も一切顔を出さない新人冒険者の少女が商人達を集めて試食会なるイベントを開き大成功を収めたなんて今朝ギルドマスターに言われるまで知りもしなかった。
「しかし、ギルドマスター、登録以来一度もギルドに顔を出して居ないんです。私にはどうする事も......。」
「言い訳はいい! 今すぐ少女を冒険者ギルドにつれてこい! 君の今日の仕事はそれだけだ。見付けて連れて来るまで戻った来なくていい。」
マクシーの理不尽な強権が発動しエイミーは出勤早々にギルドから追い出されてしまった。
「うっ.......うぅ......何で私がこんな目に......。」
エイミーは今にも死にそうな顔をして街中をフラフラと彷徨っていた。
そもそも少女が何処に宿を取っているかも分からない上に冒険者だから遠出して数日から数週間戻って来ない可能性もある。
それなりに広いこの町で少女が簡単に見つかる訳も無い。
早朝にギルドを追い出されたエイミーはその後、日が完全に落ちても未だ街の中を彷徨っていたのだった。
ニーナは商人ギルドからの帰り食堂で食事を取り定宿している宿に戻っている最中に偶然にも街の中に流れている用水路に飛び込もうとしている女性の姿を見つけた。
最初は見なかったフリをしようとしていたのだが余りにも幸薄く悲壮感が漂っていたので見過ごす事が出来なかったのであった。
「あの〜少しいいかしら?」
ニーナはその今にも死にそうな女性に声を掛けた。
油が切れた玩具の人形の様にギギギと音でも出そうな感じでニーナの方へ顔を向けた。
ニーナの顔を見て女性は瞳から涙が滂沱の如く溢れ出していた。
その後女性はニーナに縋り付く様に泣きじゃくっていたのだが大の大人がこれだけ泣きじゃくると言うのは余程の事があったのだろうとニーナより遥かに歳上の女性を落ち着かせ声にならない声で必死に理由を話しているのを聞いたのだった。
女性の支離滅裂な話を解釈すると
この女性の名はエイミー。冒険者ギルドの新人職員らしい。
どうやらニーナが冒険者登録に行った際に手続きをしてくれた女性だと言う事が分かった。
ニーナ自身は全く記憶に無かったのは敢えて言わない。これ以上泣かれても話しが進まないのが理由だったからだ。
商人ギルドでの噂を耳にしたギルドマスターがたまたまニーナの受付をしたこのエイミーという女性に八つ当たりしただけのくだらない話だったのだが一日中ニーナを捜して街中を彷徨って憔悴していたと知ると無碍にする訳にも行かなかった。
取り敢えずこのボロボロの女性エイミーに明日必ずギルドに顔を出すことを約束し家に帰らせたのだった。
「少女ちゃんは相変わらず面倒ごとにクビを突っ込むのが好きですねぇ。」
「人聞き悪いことを言わないで。私は平和を望む少女なのよ。」
はいはいそうですねぇと呆れた様に言うアレクを無視し連れて来いと偉そうに言っているギルドマスターをどうやって締めてやろうかと考えたて帰路についたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます