第4話 街 分かち合う

二日後の午後、アキとミナミは久しぶりに街まで出掛けた。

この地域には二人が住むようなコミュニティが複数あり、麓には人々が集まる街があった。

街にはお店のような建物が並び活気があった。


ただここでは商売をしている人は一人もいなかった。

街中に色とりどりの野菜、服、生活用品が並んでいたが、それは店主に声をかけて自由に持って帰ってよかった。


ここでは全てのものを分かち合うことが普通の感覚だった。

なので市場経済は存在せず、売り買いではなく循環があるだけだった。



「久しぶりに来たけど、街はやっぱり楽しいね。」

アキは木の器や雑貨が並ぶお店を覗きながらそう言った。


「お、アキちゃん、ミナミちゃん、何か必要なものあるかい?」

お店の奥で丁寧に木を削っていたおじさんが顔を上げた。

「ううん、大丈夫、充分足りてるよ、ありがとう。」

おじさんは満足そうな顔をしてまた作業に戻った。


ここではみんなが足りているという感覚でいた。

全てがあり、足りないものは何もない。

その一人一人の観念こそが、このコミュニティを支えていた。

そしてみんながそれを当たり前に生き、行動していた。


「あ、アキちゃん、ワコさんが手を振ってるよ。」

ワコは二人が待ちきれなかったのか、お店の前で待っていたようだった。

二人を見つけて大きく手を振っていた。


二人はワコの元へ走り出した。

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