fentexoler ――「反革命主義者」(3)


 ユエスレオネ連邦がファイクレオネやデュインとは別の世界であるギオンシャントヴェード世界に介入し始めたのはファルトクノア共和国が成立してからである。

 ファルトクノア共和国は、アポラ動乱やシャグマ=ラゴン戦争などの紛争に関係し、事実上の保護国や租借地における行政を通してリパライン語などの言語を浸透させてきた。

 今回と次回では、ギオンシャントヴェード世界における"fentexolerフェンテショレー"の多様な受容と発展に関してみていくことにする。


 アポラ星系国際連盟は2つの居住惑星を保持する星間国家である。一時期から紛争の負債によって産業が壊滅し、経済危機によって暴動が起きた結果、国内が荒廃した。ユエスレオネ連邦を構成するファルトクノア共和国はラヴィル・ド・エスタイティエの強力なリーダーシップの元で影響圏拡大のために援助を行い、この暴動を終結させた。

 この後に星連軍所属のハンゲンフォルタイナー・ファーダがクーデターを主導し、星連政府を暴走させるなどの事案が発生したがファルトクノア共和国はファーダを暗殺し、アポラ・イェスカ主義議員連盟が生まれるとファルトクノア共和国は自らの影響力の強さを利用して民衆を煽り、指示を拡大した議員連盟は星連中枢府を奪取し、議員連盟と当時中央の権力を持っていた社会労働党は併合され、アポラ・イェスカ主義行動党が結党された。星連は「ファールリューディア自決権条約によるイェスカ主義C.Q.D.独立自治領域」(P.J.C.Q.D.ペーイェーセークウェーデー)として国家再編が行われ、以降ファルトクノアの強力な影響の下、事実上の保護国としてリパライン語も広まっていくことになる。


 問題はアポラの政治における"fentexolerフェンテショレー"の立ち位置である。

 シンテーア暦(ギオンシャントヴェード世界では、便宜的にピリフィアー暦ではなく、こちらの暦を用いる)1761年の星連議会選挙においてアポラ・イェスカ主義議員連盟の連盟長であったイェスケルン・アポラス(またの名を、シルキン・ユノア)は社会労働党との併合に反発する右派に対して「彼らがどれだけ我々を忌み嫌っていようと、我々"xolerショレー"と同じように歴史に抗う"fentexolerフェンテショレー"である以上、彼らもまた遠い同胞であると私は信じている」と発言している。


 気をつけておきたいのは、ここでは"fentexolerフェンテショレー"という語が敵意を表す言葉ではなく、彼女なりの「敬意」を表した表現だったということである。イェスカ哲学における"fentexolerフェンテショレー"は"xolショル"「革命」という世の中の自然現象のような変革に抗おうとする動きであった。ユノアが"fentexolerフェンテショレー"をこのように理解していたのであれば、"xolショル"に関する理解も完璧だったと思える。

 実際、ユエスレオネ連邦四代目首相のターフ・ヴィール・ウォルツァスカイユはユノアに対して「連邦ではもう居なくなったレベルの超正統派(paskcelternejtパスクセルテーネイト)イェスカ主義者だ」と評し、イェスカ主義思想家のレシェール・アルヴェイユも「私の聞いたイェスカの言葉と幾分も違うことなく、超正統派パスクセルテーネイトだと言える」と讃えているところを鑑みるとユノアの理解は純粋なイェスカ主義における理解だったと言える。


 しかし、"fentexolerフェンテショレー"の語は歴史的な変遷を遂げることになる。

 ファルトクノア共和国が後に述べるロフィルナ連邦共同体のラーツォルペン公国における苛烈な同化政策――連邦化政策を始めるとアポラ・イェスカ主義行動党は古典的なイェスケルン・アポラス(シルキン・ユノア)から潮流を引き継ぐ「イェスケルン派」、ファルトクノアへの徹底的な恭順を誓う「ランドレン派」、ファルトクノアからの依存脱却を掲げる「エントフォン派」などに分派した。


 当時の星連本部長であったメイラル・ナナはイェスケルン派に属してはいたが、このような分裂に対して「ようやく再出発できそうな国を再び分断するとか、やつらは自国の改革も忘れた他国しか見れない"fentexolerフェンテショレー"か何かなわけ?」と苦言を呈している。ここでの"fentexolerフェンテショレー"は明確にユノアのものとは異なる。「政敵」の意味が強くなっているのである。


 このような変遷はユノアの正しい理解がナナの時代に劣化したと見ることも出来るが、実はナナはこれによって


 メイラル・ナナはファルトクノア共和国の指示に対して従順というわけではなく、「面倒くさい」の一言で撥ね付けたりすることもあった。これに憤慨したファルトクノア首脳部ではナナを暗殺して、従順な傀儡を据えようと考えていたようである。しかし、そんなときに先の分裂が起き、民衆により近い意味での"fentexolerフェンテショレー"を使ったナナの発言が飛び出してきた。これにユエスレオネ連邦の本国側の世論はナナに「民衆に近い政治家」であると考えられた。

 このため、本国側の世論に配慮してファルトクノア共和国はナナに手が出せなくなった。


 アポラ・イェスカ主義行動党におけるイェスカ主義理解の劣化はユエスレオネ社会党からも批判されていたが、奇妙にも回り回って暗殺の予防に帰結したのである。


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