6話 確認


(レイセ視点です)


 気持ちを落ち着けようとしたけどダメだった。


 絵を書いている途中で泣いてしまった。


 他に手が無いんだから仕方が無い。


 泣いたってどうにもならない。


 ぐっすり眠れなかった。


 鏡華にバレないようにしないと。




 昼に鏡華を迎えに行った。


 鏡華の家は普通の一軒家だ。


 両親は不在。


 チャイムを鳴らすと鏡華が出てきた。


 鏡華:「大人の着替えいる?」


 レイセ:「ああ、酒飲みたい」

 レイセ:「俺も着替え持ってきた」


 鏡華:「駅に着いたらトイレで着替えるわ」

 鏡華:「コインロッカーに荷物を預ける」


 レイセ:「俺もそうする」


 鏡華:「ちょっと待ってね?」


 鏡華は着替えを取りに行った。


 一駅先の映画館に行く。


 駅までは自転車だ。


 ここまでも自転車で来た。


 そんなに遠くない。


 歩いても駅まではすぐだ。




 駅に着いた。


 トイレで年齢操作して大人になる。


 着替えて出てきた。


 鏡華が着替えを済ませて待っていた。


 服装を褒めた方がいいのか?


 照れくさい。


 それはいいか。


 鏡華:「何か言う事ないですか?」


 レイセ:「似合っている」


 鏡華は笑った。


 電車で一駅移動する。


 レイセ:「あの映画で良かったか?」


 鏡華:「有名だけど、私見たこと無いから」


 レイセ:「そうか」

 レイセ:「泣くなよ?」


 鏡華:「そっちこそ」

 鏡華:「目が腫れてるよ?」


 レイセ:「気づかなかった事にしといてくれ」

 レイセ:「上映まで時間がある」

 レイセ:「あ、着いたか」


 一駅なんてすぐだな。


 会話の途中で移動が済んでしまった。


 駅を出た。


 鏡華:「近くに公園があったでしょ?」

 鏡華:「そこで時間潰しましょ」


 レイセ:「暑いぞー」


 鏡華:「日傘持ってきたし」


 レイセ:「暑いのは俺だけか」




 公園に着いた。


 ベンチに座る。


 噴水で遊んでいる子供と、それを見守る母親が見える。


 鏡華:「平和」


 レイセ:「そうだな」


 無言。


 無言が続く。


 言いたいことが何もない。


 お互いがそうだ。


 そのまま一時間程座って噴水を眺めていた。




 レイセ:「何か食べるか?」

 レイセ:「昼御飯まだだろ?」


 鏡華:「和食が食べたい」


 レイセ:「うん」


 昼御飯を食べた。


 会話はあまりない。


 鏡華には笑顔が少ない。


 俺も笑う余裕が無い。




 映画館に移動した。


 客は少ない。


 真ん中の席に座る。


 映画が始まる。




 映画が終わった。


 鏡華は泣いていた。


 娘と娘の婚約者の為に自分が犠牲になって世界を救う。


 そんな物語。


 エンドロールに壮大な主題歌が流れている。


 エンドロールを最後まで見た。


 喫茶店に向かう。




 鏡華は泣き止んでいた。


 鏡華:「映画としては良かったけど、今見ていい物語じゃないわ」


 レイセ:「そうだな」


 鏡華:「なんでこれを見たかったの?」


 レイセ:「あれをハッピーエンドに感じるか?」


 鏡華:「それを聞きたかったの?」


 レイセ:「まあ」


 鏡華:「うーん、それを聞くってことは、疑問に思うところがあるのよね?」


 レイセ:「そうだな」

 レイセ:「昔見たときは深く考えなかったけどな」

 レイセ:「今見ると感じ方が違う」


 鏡華:「答え、出てる気がするけど」


 レイセ:「お前の意見が聞きたいんだよ」


 鏡華:「許さないわよ」


 レイセ:「え?」


 鏡華:「許さないわよ、死んだら」


 レイセ:「だよなー」

 レイセ:「そうだと思った」


 わかってた。


 わかってるんだよ。


 レイセ:「酒、飲みたい」


 鏡華:「いいけど、私はあまり飲まないわよ」


 居酒屋に移動した。




 俺は吐くまで飲んだ。


 鏡華は呆れていた。


 レムリアスが解毒してくれない。


 死ぬかと思った。


 フラフラになって帰った。


 鏡華を家に送った帰りにメールが来た。


 明日は十夜と友介と会う。


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