3話 戦いは終わらない


(レイセ視点です)


 俺たちの距離は五十メートル。


 斬撃を連続で撃ちあっている。


 斬撃の威力は同程度。


 斬撃同士がぶつかり合って、相殺している。


 相殺する位置も、二人の中間距離だ。


 斬撃のスピードも同程度。


 魔銃を撃つのは止めている。


 左手に魔銃を持ったまま、左手を下して右腕で斬撃を放っている。


 クロスも同じ状態だ。


 クロスが出来ることは、俺にも出来る。


『能力』もオーバーライドインフィニティーで再現できる。


 今の所は互角だろう。


 勝負の分かれ目は、力の引き出し方にある。


 どこまで出力できるか、だ。


 俺は移動速度を一段階上に設定した。


 俺の斬撃発射速度が上がる。


 クロスも俺の動きに合わせて一段階上に設定した。


 俺はクロスを中心に左回りに移動しようとした。


 クロスは回り込まれないように右に移動する。


 クロスの移動方向は、俺から見て左。


 俺たち二人は、加速しながら左に移動する。


 その間も斬撃を放ち続けている。


 斬撃の威力は高い。


 一撃受けた時点で勝負が決まる。


 お互いが、お互いの動きを読み、斬撃に斬撃をぶつける。


 俺は斬撃の威力を一段階上げた。


 俺が放った斬撃は、クロスが放った斬撃を突き破る。


 クロスは冷静に斬撃を回避し、奴も斬撃の威力を一段階引き上げる。


 また互角になった。


 俺は左に移動するのを止めた。


 クロスも距離を保ったまま移動を止めた。


 斬撃は放ち続けたままだ。


 俺は斬撃を放つ速さを二段階引き上げた。


 最初に斬撃を放っていた時と比べて、倍の速さになった。


 クロスも俺の動きに合わせてくる。


 奴も俺と同じ速度になった。


 俺は斬撃の威力を二段階引き上げた。


 クロスは慌てずに威力を引き上げた。


 俺の斬撃は、クロスの斬撃を突き破って飛んでいたが、やがて相殺するようになった。


 俺はクロスに向かって移動を始めた。


 移動速度を二段階引き上げた。


 クロスは警戒して後ろに下がった。


 クロスも動きを二段階引き上げている。


 俺は自分の動きをさらに三段階引き上げた。


 三段階引きあがったまま前進した。


 クロスも三段階引きあげたまま後退した。


 俺は斬撃の発射速度と威力を更に三段階引き上げた。


 クロスも俺の動きに合わせて発射速度と威力を上げてくる。


 領域を展開。


 黄金の領域が広がる。


 クロスも領域を展開。


 黒と白の領域が広がる。


 領域同士が触れ合った空間は打ち消し合っている。


 領域を維持したまま、俺は前進、クロスは後退。


 俺は移動速度、斬撃発射速度、斬撃威力、領域展開威力を五段階引き上げた。


 クロスは慌てて俺の動きに合わせてくる。


 そう、慌てだした。


 クロスの余裕がなくなっていくのを感じる。


 俺か?


 俺はまだやれる。


 今度はクロスが力を引き上げた。


 更に五段階。


 俺は同じタイミングで七段階引き上げた。


 クロスは力を絞りだした。


 奴はまだついてくる。


 俺は奴を引きはがす。


 更に七段階引き上げた。


 クロスは三段階引き上げたあと、四段階引き上げた。


 クロスは距離を詰めてきた。


 不利なのを自覚したらしい。


 あっという間に二人の距離はゼロになった。


 クロスがカタナを右から左へ。


 俺はさらに一段階引き上げた。


 俺はクロスのカタナを下から上に払って、左で魔銃を発射。


 クロスが弾丸を魔銃で相殺。


 クロスも力を一段階引き上げる。


 俺は同じタイミングで力を一段階引き上げる。


 俺は右手で剣を右から左へ。


 クロスがカタナを下から上へ。


 俺は左手でクロスの太ももを撃った。


 クロスは回避できなかった。


 クロスの動きが一手遅れる。


 俺は魔銃を手放し、左手でクロスの左手を掴んだ。


 クロスは右手のカタナで左手を切り離した。


 切り離した左手が灰になる。


 クロスは太ももと左手を回復したいだろう。


 させない。


 俺はそのままの流れでハイキック。


 右足がクロスの左肩に命中する。


 クロスが横に吹き飛ぶ。


 俺は力を十段階引き上げた。


 クロスが前に構えたカタナを下から上に払った。


 キシで出来たカタナは、折れて半分の長さになった。


 俺はもう一度剣を下から上に払った。


 クロスは折れたカタナで攻撃を受けた。


 クロスは攻撃を防ぎ切れなかった。


 キシで出来たカタナが後ろに吹き飛ぶ。


 俺は動きを止めた。


 クロスの首に剣を突き付けて、静止した。


 クロス:「俺の負けだ」


 レイセ:「だと思った」


 クロス:「ふざけた性能だな」


 レイセ:「まだいけるぞ」


 クロス:「俺はもう無理だ」

 クロス:「そこまで体が動かない」

 クロス:「そこまで力を引き出して、恐怖心は出ないのか?」


 レイセ:「最初から恐怖している」

 レイセ:「段階を引き上げる度に恐怖心が増す」


 クロス:「お前には目標が無い」

 クロス:「なんの為だ?」


 レイセ:「そんなのどうだっていいだろ」

 レイセ:「それより、お前は役目を降りろ」

 レイセ:「お前に役目は似合わない」


 クロス:「俺は負けた」

 クロス:「従うさ」


 レイセ:「もっと怒り狂うと思ったぞ」


 クロス:「ああ、俺もだ」

 クロス:「だが、勝てそうにない」


 クロスは笑っている。


 笑顔だ。


 レイセ:「あんたが俺を引っ張り込んだんだ」

 レイセ:「俺はそれに答えた」

 レイセ:「あんたはまた休みだ」


 クロス:「チッ」




 これで戦いはすべて終了した。


 選定は俺の、俺たちの勝利だ。


 俺は管理者になる。


 管理者は四人だ。


『フィナリスラーウム』から俺とルプリレ、あと二人だな。


 誰にするかな?


 時間が無い。


 はやく決めないと。


 レイセ:「バランサー、選定は終了でいいか?」


 バランサー:「…………」


 バランサーが返事しない。


 バランサーまで距離がある。


 聞こえていないのか?




 ジャドがキシで出来たカタナを拾うのが見えた。




 ジャドがこっちに向かって歩いてくる。


 ジャド:「選定は、まだ終わっていない」


 レイセ:「どういう意味だ?」


 ジャド:「やあ、レイセ、また会ったね」


 レイセ:「?」


 ジャド:「わからないかい?」

 ジャド:「また今度、って言ったろ?」


 レイセ:「お前、もしかして、キシか?」


 ジャド(キシ):「やっぱりアルコルは勝てなかったか」

 ジャド(キシ):「そうなる気がして、保険をかけておいた」

 ジャド(キシ):「アルコルが負けて、ジャドが僕を手に取ったら、洗脳がかかる」


 レイセ:「今更お前が出てきてもどうにもならないぞ」


 キシ:「情報はジャドの肉体から引き出した」

 キシ:「なんとかなりそうだ」


 ルプリレ:「レイセ!」


 レイセ:「わかっているが、ジャドの肉体が取られている!」


 キシ:「根源は複数ある」

 キシ:「根源は重なり合っている」

 キシ:「根源の隣にも根源がある」

 キシ:「外の世界だ」

 キシ:「外の宇宙だ」

 キシ:「ジャドの感覚を借りて、外界から神を呼び出す」


 キシ:「ジャドの契約している神獣すべてを生贄にする」

 キシ:「冥界の神よ、姿を現せ!」


 上空の空間がゆがむ。


 巨大な目が空間から見えている。


 キシ:「僕の心が読めるか?」

 キシ:「供物は捧げた、願いを我に!」


 空間から、魔物の王が出現した!


 ロレアムド:「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」

 ロレアムド:「手筈通りだな」


 キシ:「当然だ」


 レイセ:「お前ら」


 キシ:「僕たちは融合する」

 キシ:「カインやシェルミが融合する前の状態のロレアムドを復活させた」


 レイセ:「な!?」

 レイセ:「ジャドはどうなる?」


 キシ:「僕には肉体が無い」

 キシ:「彼には変わりをやってもらう」


 ジャドとロレアムド、折れたカタナが重なり合う。


 異様な風貌の、黒い角の生えた、白装束の男が出来上がった。


 クロス:「はー、お前は誰なんだ?」


 キシ:「僕は負けを認めない」

 キシ:「最終決戦だ」


 レイセ:「ロレアムドの意思よりも、キシの意識が勝っているのか?」


 キシ:「僕と彼は相性がいい」

 キシ:「だか、まー、意識は僕だ」

 キシ:「僕はこれから、何をすると思う?」



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