10章
1話 前触れ
(レイセ視点です)
ロークが俺を殺そうとした。
それを庇って青年の管理者が死んだ。
ロークも青年の管理者の反撃を受けて死んだ。
ロークは頑固な奴だった。
『リーベラティーオー』との共闘で、『マギ』や『トパーズ』とはかなり仲良くなっていた。
例外になりえるのはロークくらいだった。
ロークが処刑人と融合したと聞いて、嫌な予感はしていた。
こんなに早く行動に出るなんて。
油断していた。
共闘を始めるときに、アルコルやジャドと話した内容そのままだ。
魔物の王を殺した途端、戦闘になるかもと話していた。
アルコルとジャドは動かなかったが、ロークは違った。
ロークは別に俺を嫌っていない。
俺の言いたいことも理解していた。
が、『トパーズ』の仲間が永遠に生き続けるのには、最後まで否定的だった。
だからアルコルに有利になるように動いた。
ロークは管理者が邪魔をすることを読んでいた。
反撃を受けて自分が死ぬことも。
ロークは覚悟していた。
死ぬ間際まで、泣き言はなかった。
青年の管理者は、『能力』を選んでいなかった。
恐らく、いくつかの戦闘に関する『能力』を選んで発現させる『能力』なのだろう。
『能力』に頼った戦闘能力は、『能力』が使えない場合は致命的になる。
ロークが処刑人から受け継いだ『能力』は、青年の管理者の急所を突いていた。
青年の管理者は俺に協力的だった。
狙いすましたように、青年の管理者が殺された。
こうなるように仕組んだのは、バランサーだ。
魔物の王を倒し、管理者に近づいた途端、妨害が起こる。
俺の運命は、前進しているのか?
後退しているのか?
別に管理者になりたい訳じゃない。
他に出来そうな奴がいないだけだ。
俺に務まるかは、ハッキリとわからないが。
アルコルに任せたら、破滅する気がする。
アルコルは危うい。
シロさんとアルコルが融合する。
恐らくそうなる。
シロさんとアルコルで主導権を賭けた戦いをする。
勝負の行方はわからない。
予想が出来ない。
シロさんが勝った場合。
アルコルが勝った場合。
その後の展開はどうなる?
二人が融合した黒巣壱白はどんな決断をするのか?
場合によっては黒巣と戦闘になる。
シロさんはアルコルと戦闘するときに武器が無い。
俺が武器になるつもりだ。
その後、黒巣と戦闘になるかもしれないが、俺はシロさんを応援したい。
魔物の王の城の前にいた仲間たちと合流した。
全員が、魔物の王の巨大闘技場にいる。
『トパーズ』と『マギ』に戦闘の意思は無い。
青年の管理者が死んで、コイン集めが無くなったからだ。
本格的に選定が始まったため、人間同士の争いは無くなった。
選定される人間同士で戦うだけだ。
そういう意味では、ロークの行動は犠牲を少なくしたとも言える。
代わりに青年の管理者が犠牲になったが。
レイセ:「シロさん、アルコルとの戦闘では俺が武器になるよ」
シロ:「助かる」
シロ:「だが、融合の後、お前に協力できるかはわからないぞ?」
レイセ:「勝っても、負けても、か?」
シロ:「そうだ」
シロ:「勝つとか、負けるとか、そういう概念が無いかもしれない」
アルコル:「勝ち負けは無い、か」
アルコル:「意識の主導権はあるだろ」
シロ:「同一存在同士の融合ではありえる話だが」
シロ:「完全に同一な者同士が元に戻る場合には、本人らしさしか無いだろ」
アルコル:「今の管理者はすべて殺す」
シロ:「させない」
アルコル:「意見が対立している」
アルコル:「どちらかの意見を採用するべきだ」
シロ:「融合するとどうなるか、お前には予想できていない」
シロ:「俺には予想できている」
アルコル:「ごちゃごちゃとうるさい奴だ」
アルコル:「レイセとの決闘は四時間後だ」
アルコル:「お前とは二時間後に勝負する」
アルコル:「それまで少し眠る」
アルコル:「静かにしていろ」
レイセ:「あー、ハイハイ」
レイセ:「好きにしてくれ」
レイセ:「俺たちも休む」
コナル:「はー、眠たいー」
ニーナ:「寝たらだめよ」
ニーナ:「寝過ごすよ?」
コナル:「わかってる」
ダズ:「一応ひと段落だな」
アリア:「まあ、そうね」
ベル:「レイセが勝って、管理者に」
ラン:「そうね」
ジャド:「複雑な心境です」
サリーン:「同じく」
コナル:「戦わないんだし、もう気にすんな」
ファガス:「そうそう、あとはレイセとアルコルに任す」
フィビニ:「単純な性格は便利ですよね」
ファガス:「疲れたー」
リアンナ:「私も」
アスマ:「俺だって疲れたわ」
フレド:「死ぬかと思った」
ジーク:「役目を果たした」
アリシア:「そうね」
ボーデン:「まだ終わっていませんよ?」
ペセシュ:「回復いるやついねーか?」
バルド:「更に強くなったらしいの?」
バルド:「詳しく聞かせてくれ」
ルプリレ:「バルドがなんか言ってる」
レイセ:「領域で感覚を共有したからなー」
レイセ:「俺たちの強さは、魔物の王と戦ったあの場にいた全員がほぼ同じになった」
ルプリレ:「かもね」
レイセ:「飲むのはダメだから、なんか食べようぜー」
レイセ:「何食べたい?」
ルプリレ:「ダメ」
ルプリレ:「携帯食にしといて」
ルプリレ:「あなたはしっかり休んでください」
ルプリレ:「気持ちを途切れさせてはダメです」
レイセ:「わかった」
レイセ:「じゃ、寝るわ」
レイセ:「疲れが酷い」
レイセ:「二時間経ったら起こして」
ルプリレ:「出来れば起きといて欲しいのに」
ルプリレ:「仕方ないなー」
俺は寝袋に入って寝た。
みんなの騒ぐ声が聞こえていた。
なぜか気持ちよく眠れた。
二時間後。
俺は武器になった。
シロさんが使うナイフ。
シロさんは左手に魔銃を装備している。
アルコルは右手にキシで出来たカタナ。
左手に魔銃。
バランサー以外の管理者も来ていた。
ガリム。
少女。
三人の管理者が見ている前で戦闘が始まる。
二人の距離は十メートル。
二人は同時に領域を展開。
領域同士がぶつかり合い、相殺される。
領域が無駄と判断したあと、銃の発砲。
銃を撃ちながら、お互いが反時計回りで移動。
発砲した弾を弾で撃ち落とす。
十メートルの距離で二周した後、スライドで急接近。
二人はそれぞれの武器の間合いに入る。
アルコルのカタナの方が、シロさんの持ったナイフより間合いが広い。
まー、ナイフは俺だ。
シロさんからナイフを使いたいという意思が伝わってくる。
シロさんが追いかけ、アルコルが後ろに下がる。
アルコルがカタナを右から左へ。
シロさんがカタナをナイフですくい上げる。
カタナとナイフが触れ合った瞬間、それぞれの左腕の魔銃を発砲。
それぞれの左太ももを狙撃。
銃弾数発が太ももを貫通。
遅れてリフレクトを展開。
数発がリフレクトに反射したタイミングで発砲を止めた。
二人は同時にいったん後ろに距離を取った。
太ももが回復する。
二人の動きはほぼ同じ。
持っている武器が違う程度だ。
シロさんは未来予知を使っている。
が、アルコルも同じことが出来る。
根源を共鳴させ、根源の大きさを許容している。
武器との共鳴もやっている。
実力は拮抗している。
二人は後退を止めた。
シロさんは右手にナイフを持ったまま、左手の魔銃を両手で持って構えた。
アルコルも右手にカタナを持ったまま、左手の魔銃を両手で持って構えた。
二人同時に発砲。
銃弾数発が、ぶつかり合う。
全く同じ動作。
銃弾がぶつかり合った瞬間、瞬間移動。
二人の距離は二十メートルのまま、二人は自分の右前側に移動。
二人とも瞬間移動で出る位置が読める。
二人は迷わず発砲。
やはり銃弾はぶつかり合う。
銃弾がぶつかり合った瞬間、超速度移動。
銃を撃ちながら、お互いに前進。
銃弾を銃弾で撃ち落としながら突進。
アルコルの間合いの内側にシロさんが入った。
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