23話 終わりと始まり


(レイセ視点です)


 ロレアムドの腕は折れた。


 ロレアムドの命は一つになった。


 無数にあった命が一つに束なった。


 命が一つに束なった分、ロレアムドの地力が上がっていた筈だ。


 そのロレアムドに俺の全力が通じた。


 形勢は俺とアルコルにある。


 俺とアルコルは新たな力の使い方を知った。


 根源からの力の引き出し方。


 武器との共鳴。


 七つの大罪の乗り越え方。


 キシで出来た刀も、アルコルの意思で特殊な光を放っている。


 アルコル:「今まで、さんざん好き勝手やってくれたな?」

 アルコル:「覚悟はできているか?」


 ロレアムド:「ハ、ハ」

 ロレアムド:「全力を出すのに慣れていない」

 ロレアムド:「数万年ぶりだからな」

 ロレアムド:「覚悟が必要なのはお前の方だ」

 ロレアムド:「笑わせるな」


 レイセ:「まだ余裕があるのか?」


 ロレアムド:「当たり前だ」


 レイセ:「でも、腕が折れただろ」


 ロレアムド:「油断した」


 レイセ:「お前が、か?」


 ロレアムド:「俺の計画に死角は無い」

 ロレアムド:「今のお前らにはわからないだろう」


 ロレアムドは竜化した。


 白竜との同化。


 確かにそれで地力が上がるだろう。


 だが、程度は知れている。


 力の増した俺たち二人とは同程度だろう。


 命が無数にあった時の方が脅威だ。


 やはり、こいつは弱体化している。


 今の俺たちにはわからない?


 何を言っている?


 まだ何か、隠された力があるのか?


 仲間たちと領域で繋がっている。


 力が漲る。


 ごちゃごちゃ考えていても仕方が無い。


 こいつを倒す。


 いけるはずだ。


 全力を出す。


 先のことは考えない。


 今に集中する。


 ロレアムドは巨大な両手剣を右に構えた。


 ケルスで出来た剣は特殊な光を放っている。


 ロレアムドは両手剣を右から左に振った。


 凄まじい剣速。


 躱せない。


 俺とアルコルを振りの射程に入れている。


 俺とアルコルは、二人同時に剣を上に振り上げた。


 巨大な両手剣を上に弾く。


 俺たち二人は剣に押され、後ろに吹き飛ばされる。


 ロレアムドの左側の空間に、巨大な両手剣が出現。


 剣は左から右に振るわれた。


 ロレアムドは巨大な両手剣に触れていない。


 念動力か何かで操っている。


 凄まじい力で両手剣が振るわれる。


 やはり躱せない。


 速度がある。


 剣と盾で防御する。


 アルコルは刀だけで防いだ。


 巨大な両手剣の攻撃を受け止め、体に衝撃を受ける。


 俺は盾で押し返し、右手の剣を振り下ろした。


 ロレアムドが左の片手剣で受けた。


 力は拮抗している。


 アルコルが奴の右側に攻撃。


 ロレアムドは、アルコルの斬撃を至近距離で受けた。


 ロレアムドは右の片手剣で器用に斬撃を打ち消している。


 ロレアムドの片手剣が光る。


 二本の片手剣が光を放ち長く伸びる。


 威力のある攻撃が、ノータイムで放たれた。


 俺とアルコルは防御出来なかった。


 体に斬撃を受ける。


 重症だ。


 俺たち二人は、攻撃を受けたと同時に反撃した。


 俺とアルコルの攻撃も、ロレアムドを貫いている。


 これも重症だ。


 普通なら。


 俺とアルコルは回復した。


 ロレアムドも回復した。


 根源の新たな使い方があれば、回復は容易だ。


 この相打ちが引き金になった。


 ロレアムドから無数に斬撃が飛んできた。


 俺とアルコルは防御出来なかった。


 攻撃をすべて受けた。


 受けたと同時に反撃した。


 こちらも斬撃を飛ばした。


 ロレアムドも防御出来ていない。


 そのまま、ノーガードで打ち合った。


 死ぬほど痛いが死なない。


 奴も同じだ。


 お互い、斬撃を受けても瞬時に回復する。


 気力の勝負だ。


 そのまま斬撃を打ち合った。


 ドドドドドドドドドドド。


 斬撃を飛ばし、リフレクトで反射して速度を速めた。


 凄まじい威力の斬撃が連続で飛ぶ。


 俺とアルコルの斬撃はロレアムドへ。


 ロレアムドの斬撃は俺とアルコルへ。


 かなり長い間そうしていた。


 段々と気力が消耗され、回復に時間が必要になってくる。


 完全回復しないまま、次の攻撃が来る。


 ダメージは蓄積した。


 俺とアルコルはボロボロだ。


 ロレアムドもボロボロになった。


 ロレアムドにも底があった。


 さらに攻撃を続けた。


 アルコルの渾身の一振り。


 ロレアムドは躱せない。


 ロレアムドは攻撃を受けて反撃。


 アルコルも攻撃を受けた。


 ロレアムドから俺に攻撃。


 俺は盾で受け止め、剣で反撃。


 俺の剣が、ロレアムドを貫いた。


 ロレアムドからの反撃が無かった。


 ロレアムドは倒れた。


 倒れて、起き上がらない。


 もう、起き上がらない。


 ロレアムドは、淡い光を放って消滅した。


 勝った。


 ついに。


 ついに勝った。


 これで少し休める。


 ふー。






 仲間が駆け寄る。


 嬉しそうな顔しやがって。


 そう思った時、何かが俺にぶつかった。


 ドン!


 駆け寄ったロークが俺にぶつかりそうになった?


 違う!


 間に青年の管理者がいる。


 青年の管理者が血を流している。


 ロークも青年の管理者に反撃され、血を流している。


 青年:「レイセ、油断したな」


 レイセ:「何が起こった?」


 青年:「コイン集めが再開された」


 レイセ:「な!?」


 ローク:「やはり妨害がある」


 青年:「俺は無敵の存在なんだが、俺も油断した」

 青年:「処刑人の持っていた『能力』を引き継いだのか?」


 ローク:「『能力』の無効化、そういう『能力』だ」


 青年:「俺との相性は最悪だ」

 青年:「ふざけやがって、バランサーから情報が上がってきてないぞ」


 ローク:「口止めも含めたこちら側への加担だ」


 青年:「レイセ、俺はここで退場だ」

 青年:「管理者が減り過ぎた」

 青年:「今、この場で選定が始まる、そうだな?」


 バランサー:「そうなります」


 青年:「最後まで見られないのが残念だ」

 青年:「ロークは連れていく」


 ローク:「ああ、俺も致命傷だ」

 ローク:「俺は役目を果たした」

 ローク:「アルコル、頼んだ」


 アルコル:「俺は俺のするべきことをする」


 ローク:「そうだな、それでいい」


 二人は倒れた。


 いや、死んだ。


 もう、生き返らない。


 バランサーが何かして、遺体が消えた。


 後日別の場所で弔う。


 ふー。


 勝利の喜びに浸っていた仲間は茫然としている。


 俺も頭が働かない。


 つまり?


 つまりどういう事だ?


 選定で管理者を四人決める筈だった。


 さらにもう一人死んで、五人か?


 いや、四人で良いのか?


 残っている管理者は、バランサー、ガリム、少女。


 管理者は七人。


 残りを選定する。


 やはり必要なのは四人。


 どういうわけか、女性の管理者、ルプリレが選定無しで増えていた。


 一時期八人登場していた。


 その話は、今はいい。


 必要なのは四人だ。


 今、この場でコイン集めを打ち切って、選定を始める気か?


 バランサー:「コインの枚数で選定しても良いのですが、そうなると各チームから二人ずつになります」


 バランサー:「選定の後、揉めて欠員が出ると、また選定が必要になります」

 バランサー:「先に決着をつけてください」


 レイセ:「今、この場でか?」


 バランサー:「そうです」


 レイセ:「ボロボロなんだけど?」


 バランサー:「時間がありません」


 アルコル:「少し休憩させろ」


 バランサー:「四時間です」

 バランサー:「四時間後に決着をつけて貰います」


 アルコル:「わかった」


 レイセ:「ああ」

 レイセ:「魔物達はどうなった?」


 バランサー:「魔物の王が死んだ事が知れ渡っています」

 バランサー:「魔物達はこの場を離れだしました」

 バランサー:「通信妨害も直っています」


 レイセ:「わかった」


 四時間か。


 消耗が激しい。


 こんな状態で戦えるのか?


 俺とアルコル。


 ルプリレとジャド。


 そういう感じか?


 落ち着いて考えるには、疲れすぎている。


 どうやって勝負を決めるかも、四時間後だな。


 ルプリレとシロさん、他、武器化していた仲間は、武器化を解除している。


 シロ:「レイセ、話がある」


 レイセ:「なに?」

 レイセ:「あらたまって」


 シロ:「選定を始める前に、アルコルと融合しようと思う」

 シロ:「主導権を誰が取るか勝負して決める」


 そうか、そうだな。


 それがいい。


 その勝負が先だわ。


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