17話 覚悟


(ダリドベ視点です。)


 マモンはカウンター型だ。


 こちらに攻撃させ、こちらを上回る攻撃を返す。


 そして、返した攻撃で態勢を崩し、隙を作って追撃して来る。


 隙を作られると防御出来ない。


 必ず追撃を受ける。


 奴は殺気を出さない。


 攻撃の切っ掛けを出さない。


 焦れてこっちが攻撃するのを待っている。


 さっきは相打ち覚悟で攻撃した。


 予想通り相打ちになった。


 お互い右腕を負傷し、お互い回復の時間を稼いでいる。


 私とキニダゼは、マモンを睨んだまま動けない。


 どうする?


 どう動くか?


 相打ち覚悟なら、ダメージを与えられる。


 行くしかない。


 こっちは二人いる。


 私が玉砕覚悟で攻撃を仕掛け、キニダゼを温存する。


 私の方がキニダゼより長生きだ。


 私の役目だな。


 クラウシア様。


 もう会う事は無いだろう。


 奴が完全に回復する前に仕掛ける。


 ダリドベ:「キニダゼ!」


 キニダゼ:「承知しました!」


 キニダゼが泣いている。


 意図は伝わっている。


 かわいい奴だ。


 だが、それでいい。


 私はキニダゼが持っていた、レートルで出来た武器を受け取った。


 私は動かない右腕を部分融合で補強し、無理やり動かした。


 私は踏み込んで、右から左に剣を振った。


 マモンも部分融合で右腕を補強して右から左に剣を振る。


 武器は衝突し、私の態勢が崩れる。


 予想通り。


 ここからだ。


 態勢の崩れた私をマモンは追撃する。


 マモンは左腕に剣を具現化して突いてきた。


 躱せない。


 突きを受ける。


 私も突きで返す。


 腹を貫かれた私は、左腕を使ってマモンを突き刺した。


 お互い、剣を引き抜き次に備える。


 マモンは笑っている。


 構わない。


 続ける。


 右腕で振り下ろし。


 マモンも同じ動作で返す。


 マモンが押し勝ち、私の態勢が崩れる。


 マモンはもう一度振り上げ、振り下ろす。


 私は肩から腹に斬撃を受けた。


 同時に私は左腕で下から上に振り上げた。


 マモンの腹を切り裂いた。


 マモンの傷口から、黒い霧が洩れている。


 私は、切られた傷から出血している。


 ダメージが大きすぎて、部分融合で補強する余裕が無い。


 痛みで感覚が麻痺して来た。


 あと一撃が限度だ。


 それで終わりだ。


 私の存在感が持たない。


 後は、キニダゼに任す。


 マモンは眼鏡を握りつぶした。


 マモンの体が変化する。


 獣と人の間の様な姿に変化した。


 与えた傷が塞がっている。


 しかし、ダメージは与えた筈だ。


 あと一撃じゃない。


 もう少し粘る。


 とりあえず一撃入れる。


 私は剣を振り下ろす。


 マモンも剣を振り下ろす。


 私の攻撃は弾かれ、追撃を受ける。


 左腕を払われた。


 私の左腕が落ちる。


 私もマモンの左腕を払った。


 マモンの左腕が落ちた。


 続けて右を戻して右から左に払う。


 マモンも右から左に払う。


 私の態勢が崩れる。


 動きがスローモーションのように感じる。


 私は右腕を切断された。


 私の右腕が落ちる。


 私は、私は、私は。


 部分融合で腕を創り出し、落ちた腕二本から武器を拾って、マモンに突き刺した。


 マモンは防御出来なかった。


 瞬間的に五千パーセント以上出した。


 もっとか?


 とにかく全力。


 限界以上の動きで返した。


 部分融合出来たのは一瞬だけだ。


 痛みで部分融合を維持できない。


 私は片膝を付いた。


 もう、立てない。


 出血で気が遠くなる。


 キニダゼが、マモンに刺さった剣を引き抜くのが見える。


 キニダゼ、後は任せた。


 そいつは強い。


 油断するなよ?


 私は仰向けに倒れた。


 天井が見える。




(フレド視点です。)


 どうなっている?


 ダリドベが倒れている。


 キニダゼが敵から剣を引き抜こうとしているのか?


 ダリドベは腕が無い。


 大量に出血している。


 フレド:「リアンナ!」


 リアンナはダリドベの影に入った。


 間に合うか?


 キニダゼが剣を引き抜いた。


 キニダゼが剣を振り上げた。


 フレド:「待て、キニダゼ!」

 フレド:「敵から離れろ!」


 キニダゼはバックステップした。


 危ない所だった。


 敵は切られると解っていて、待っていた。


 殺気が出ていない。


 余裕がある。


 あのまま攻撃していたら、反撃を受けていただろう。


 フレド:「キニダゼ!」

 フレド:「敵の情報をくれ!」


 キニダゼ:「マモン」

 キニダゼ:「”強欲”の悪魔だ」

 キニダゼ:「模倣を使う」

 キニダゼ:「こっちを上回る攻撃でカウンターを仕掛けて来る」

 キニダゼ:「ダリドベさんが相打ちでダメージを与えた」


 アスマ:「”強欲”か」

 アスマ:「アリア!」


 アリアは武器化を解いた。


 キニダゼが武器の一本を俺に投げる。


 アリア:「領域を展開して、”強欲”の感覚を流すわ」


 アリアは領域を展開した。


 水色の領域が、俺、アスマ、キニダゼに届く。


 アモンは腕を二本追加した。


 俺、アスマ、キニダゼが一斉に攻撃する。


 三人とも、剣を振り上げ、振り下ろす。


 アモンは同じ動作で返した。


 押し負けない。

 

 模倣の感覚を深く知れば、模倣されにくい動作を出せる。


 アモンは残りの腕で反撃してきたが、バックステップして避けた。


 アリアのイメージが効いている。


 アリアの”強欲”はマモンと同等だ。


 畳み掛ける。


 アリアは領域を維持している。


 アリア:「一点突破よ!」

 アリア:「絶対に躱せない!」


 キニダゼ:「ああ!」


 フレド:「了解!」


 アスマ:「わかった!」


 キニダゼが槍でマモンの左脇を突く。


 マモンは下がって、槍で相殺する。


 同じ場所に、アスマが光る突き。


 マモンはもう一本の左腕で槍を突き出した。


 マモンの光る突きが、アスマの突きを相殺する。


 俺も続いて光る突きを出す。


 二人が攻撃している間に力を練った。


 威力が大きい。


 マモンは向き直って、俺の光る突きを右腕二本で防いだ。


 ダリドベがリアンナで出来た剣を投げた。


 マモンは防御が間に合わず、攻撃を額で受けた。


 致命傷だ。


 凄まじい投擲だった。


 リアンナは武器化を解いて、後ろに下がる。


 マモン:「私の役目はこれでお終いです」

 マモン:「それではごきげんよう」


 マモンは黒い霧に成って消えた。




 キニダゼが座り込む。


 アリアもしんどそうだ。


 ニーナが武器化を解いた。


 レートル、ファニルも武器化を解いた。


 ニーナ:「ダリドベ、大丈夫?」


 ダリドベ:「死んだと思いましたが、大丈夫なようです」


 キニダゼ:「来てくれて助かったよ」


 フレド:「泣くなよ?」


 アスマ:「お前が言うな」


 レートルが体操している。


 リアンナ:「ギリギリだったわ~」

 リアンナ:「どうする?」

 リアンナ:「少し休む?」


 アリア:「休む」

 アリア:「領域の維持が大変」

 アリア:「疲れたー」


 ダリドベ:「私達メロイリスはここに残ります」

 ダリドベ:「アリアさんの休憩が終わったら、先に行ってください」

 ダリドベ:「仲間が待っています」


 リアンナ:「次はどっちに進む?」


 ニーナ:「ファガスが心配でしょ?」


 リアンナ:「まーねー」


 アリア:「フレド、リアンナ、ニーナが階段の下」

 アリア:「私とアスマが階段の上」

 アリア:「それでどう?」


 フレド:「OKだ」


 アスマ:「いいぞ」


 ニーナ:「まあ、そうなるか」


 リアンナ:「アリア、まだ休憩する?」


 アリア:「三人は先に行って」


 リアンナ:「いいの?」


 アリア:「ファガスが済んだら、一旦『トパーズ』に合流してね?」


 ニーナ:「回復役がいるのか」


 アスマ:「だなー」


 フレド:「無茶してるかもな」

 フレド:「だれかみたいに」


 ダリドベ:「私の事ですか?」


 キニダゼ:「他にいませんよ」


 ファニル:「しっかりしてくださいよ」


 キニダゼ:「ホントだよ」


 リアンナ:「ファニルとキニダゼの意見が一緒」


 ニーナ:「珍しい」


 キニダゼ:「クラウシア様はどうするつもりなのか」


 ダリドベ:「そんな事言われても、進展なしですよ?」


 ニーナ:「気が変わる事もあるから」


 アリア:「誰の話なんだか」


 ニーナ:「コナルは奥か」


 アリア:「ふふ、そろそろ先に行って」


 フレド:「ああ」


 ニーナ:「うん」


 リアンナ:「またねー」


 俺達は全速力で走る。


 一旦戻って、階段の下へ。


 急がないとな。


 手遅れになる。


 ファガス。


 無事でいてくれよ?



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