16話 同調
(レイセ視点です。)
ロレアムドからの斬撃がまた来た。
防ぐたびに左腕が折れる。
どうしようも無い。
存在感を焼く死のイメージに気が狂いそうだ。
何か。
何か思い付くまで。
ひたすら耐えるしかない。
領域展開時間の限界は疾うに過ぎている。
記録更新だ。
全然嬉しくない。
頭の痛みも限界に来ている。
実は、余力があるうちに領域を限界以上で展開し、奴の領域を押し返そうした。
粘っても先が思い付かない。
そうして、限界以上の出力でどれだけ頑張っても、領域は広がらない。
一瞬に賭けるつもりで展開して、それでやっと維持できている。
やはりどうにも出来ない。
余裕が無さすぎる。
どうする事も出来ない。
手が無い。
仲間が来ても、領域の中に入ってしまったら同じ事だ。
何人来ようと関係ない。
こいつは無敵だ。
こんな奴をどう倒す?
また攻撃が来た。
今度は二連撃。
剣と盾で防御した。
右腕の肩が外れた。
左手の手首が折れた。
相変わらず防ぐとダメージを受ける。
領域に掛かる圧の所為で、体を上手く動かせない。
体力がもう無い。
何日も寝ていないからな。
泣き言ばっかりだ。
気力も体力も残り少ない。
だが、諦めないんだったな。
そうだ。
諦めない。
このまま限界以上を維持して、この状況に慣れてやる。
攻撃が通じないと解れば、奴は領域を解くだろ。
それを狙う。
希望を持つ。
まだ諦める時じゃない。
(アスマ視点です。)
フレドがレヴィアタンの噛み付き攻撃を防御しようとした。
レヴィアタンの動きは、直前でわずかにズレる。
こっちの動きの逆を来る。
万全の態勢では防げない。
俺はフレドが防御している間に横から攻撃する筈だった。
レヴィアタンは読んでいる。
フレドは態勢が不十分で吹き飛ばされた。
そのままの流れで、俺の正面に来やがった。
フレドは気を失っていないが、すぐに起き上がれない。
リアンナは俺の影に移動した。
ニーナが人に戻り、アリアを装備した。
アリアは大盾だ。
ニーナ:「読まれてる」
アスマ:「そうなんだ」
アスマ:「攻め手が無い」
レヴィアタンは領域を展開した。
藍色の領域。
レヴィアタンの手と足にひれが出来る。
レヴィアタンは空間を泳いで俺に体当たりを仕掛けてきた。
俺は盾と結界で防いだ。
重い。
左腕がダメになりそうだ。
ギリギリ耐えた。
そのまま奴は右手の爪で攻撃。
ニーナが防御する。
ニーナも耐えた。
レヴィアタンは領域を泳いで大きく旋回している。
次の攻撃は、もっと勢いを付ける気だ。
これ以上は無理だ。
防御し切れない。
ニーナは領域を展開した。
朱色の領域。
領域は相殺されず、ニーナはレヴィアタンの領域を押し返す。
ニーナは俺を覆うように領域を展開した。
俺も領域を展開する。
ニーナの領域に触れた事で、そうしなければいけないと思いついた。
俺の領域はニーナの領域と反発した。
ニーナ:「同調して!」
アスマ:「そんなこと、やった事ないぞ!」
ニーナ:「して!」
無理言うな!
くそっ!
どうするんだ?
どうすればいい?
時間が無い。
同調。
同調か。
俺の領域と、ニーナの領域が溶け合うイメージをする。
きっと、橙色の領域になる。
それをイメージした。
領域が混ざり合う。
色がスーパーボールみたいに溶け合う。
やがて均一に混ざり合った。
出来た!
領域が同調した!
ニーナ:「このまま領域を広げる!」
アスマ:「ああ!」
同調した領域が、レヴィアタンの藍色の領域を押し返す。
レヴィアタンの領域を完全に押し返し、レヴィアタンの領域は無くなった。
レヴィアタンは領域を泳げなくなり、床に着地した。
レヴィアタンの姿が変わる。
レヴィアタンはワニと人の中間の様な姿になった。
俺達の完全融合状態に似ている。
ニーナは歌を歌い始めた。
ニーナ:「ラー~」
俺の洞察力が鋭くなる。
ニーナの”嫉妬”の先読みが伝わる。
リアンナのバフも効いている。
俺がやる。
俺は剣を振り上げた。
レヴィアタンは右腕を横へ。
レヴィアタンが先に仕掛けてきた。
レヴィアタンは右手の爪で攻撃。
俺は左の盾で受け止めて、右手の剣を振り下ろした。
奴の左肩に命中した。
が、硬い。
刃が通らない。
奴は一歩後退した。
奴は切られる瞬間に、刃の当たる部分を強化したみたいだ。
奴の意識の外側から攻撃を仕掛けないといけない。
ニーナの歌が心地いい。
ニーナの歌に同調する。
俺は剣で突きを放つ。
光る突きだ。
奴は避けた。
首を右に。
首が右に動いたのと同時に、左の盾で頭を殴った。
そのまま、剣を下から上へ。
奴の左腕を切り落とした。
俺の力じゃない。
ニーナのお陰だ。
ニーナの意識が俺を動かした。
ニーナはレヴィアタンに読み勝っている。
レヴィアタンは切られた部分から、黒い霧を放出している。
恐らく、力が外に漏れている。
レヴィアタンは腕を回復させない。
出来ないんだろう。
もう一度行く。
盾で体当たり。
レヴィアタンの顔を盾で塞ぐ。
そのまま右腕で突き。
光る突き。
突きはレヴィアタンの腹部を貫いた。
一歩離れて、ダメ押しの突き。
剣はレヴィアタンの胸を貫いた。
致命傷だ。
そうなる筈。
レヴィアタン:「私は消える」
レヴィアタン:「よくぞ打ち破った」
レヴィアタン:「その感覚を忘れるなよ?」
レヴィアタンは笑顔を見せた。
レヴィアタンは黒い霧に成って消えた。
倒した。
ふー。
どっと疲れが噴き出す。
俺はその場に座り込んだ。
疲れたー。
全員、意識を取り戻した。
マサト、リク、メイ、オウジは限界だ。
ここでしばらく休む。
武器に成っていた、ソウタ、ソラ、ゲン、ミキ、ハルキ、ヒカルも限界だ。
一旦人に戻ってここで待機。
俺の武器はアリア。
フレドの武器はニーナ。
リアンナは回復役だ。
俺は事情を説明した。
次は、入り口から見て左側の通路に向かう。
左はメロイリスだ。
急ごうとする俺をリアンナがいさめる。
リアンナ:「貴方もしばらく休憩して」
アスマ:「絶対か?」
ニーナ:「絶対よ」
アリア:「だわ」
フレド:「さっきは疲れで動けなかった」
フレド:「しばらく待ってくれ」
アスマ:「しかたねーな」
フレド:「うるせー」
フレド:「空元気だと使い物にならないんだよ」
フレド:「かっこつけてんじゃねーぜ」
ニーナ:「お前が言う?」
フレド:「言う」
俺達は増強剤を打った。
しかたない。
俺は再び胡坐をかいて休む。
足の筋肉が痙攣している。
ああ。
限界が近い。
まだ限界じゃないけど。
そう思おう。
アスマ:「そういえば、さっきのレヴィアタンの言葉覚えてるか?」
アリア:「その感覚を忘れるな、か」
リアンナ:「あれは、ニーナに言ったの? アスマ?」
ニーナ:「二人共じゃない?」
アスマ:「領域の同調の話かな?」
リアンナ:「たぶんそう」
リアンナ:「やってみた感想は?」
アスマ:「わからん」
ニーナ:「クソムズい」
フレド:「なんで出来るんだよ」
アスマ:「出来なきゃ死んでたぞ」
フレド:「そうなんだが」
アスマ:「ニーナが思いつかなきゃ無理だった」
ニーナ:「必死だったからねー」
フレド:「レイセとアルコルで同調出来ると思うか?」
リアンナ:「そんな発想出るかしら~」
アスマ:「無理っぽいよな」
ニーナ:「兄貴、生きてるかな?」
アスマ:「たぶんな」
アスマ:「でも苦戦してるだろ」
フレド:「だな」
アスマ:「悪魔強すぎ」
フレド:「だな」
アスマ:「死ぬかと思った」
アスマ:「ありがとな」
アスマ:「来てくれて」
ニーナ:「泣かないでよ?」
フレド:「だな」
アリア:「フレドは泣いてた」
アスマ:「いや、気持ちわかる」
アスマ:「助けは来ないって思ってたからなー」
フレド:「だな」
リアンナ:「フレド、他の事言っていいのよ?」
フレド:「だな」
キリッとした顔で言うな。
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