13話 ”暴食”と”傲慢”


(コナル視点です。)


 俺はベルゼブブに蹴りを入れる。


 ベルゼブブは攻撃を避け、バックステップ。


 レイセ達は走ってその場を離れた。


 ベルゼブブの殺意は俺に向いている。


 コナル:「俺達を分断させて、何を考えている?」


 ベルゼブブ:「ロレアムドは私達を七人同時に召喚した」

 ベルゼブブ:「同時召喚は難易度が高い」

 ベルゼブブ:「召喚する場所を同一にすることが出来なかったんだろう」

 ベルゼブブ:「分散させる意図はない」

 ベルゼブブ:「私達には、単なる足止めの役割しか与えられていない」


 コナル:「不服そうだな」


 ベルゼブブ:「私達は一人でお前達を全滅させる事が出来る」

 ベルゼブブ:「だが、足止めが望みなら従うさ」

 ベルゼブブ:「うっかり殺してしまうかもしれないが」


 コナル:「ボーデン、武器化してくれ」


 ボーデン:「それはいいですが、貴方は戦える状態なんですか?」

 ボーデン:「目は?」


 コナル:「なんとかなる」

 コナル:「心配するな」


 ボーデン:「承知しました」

 ボーデン:「信用しましたからね?」


 コナル:「大丈夫」


 ボーデンは大剣に武器化した。


 俺は大剣を構える。


 ベルゼブブも大剣を構えた。


 俺達の距離は五メートル程か?


 うすぼんやりとしか見えないが、多分そんな感じだ。


 ベルゼブブが踏み込んで来る。


 速く、鋭い踏み込み。


 そのまま突いてきた。


 俺は突きを下から上に払いあげた。


 ベルゼブブは下からの払い上げに抵抗せず、力を抜いて受け流す。


 ベルゼブブは更に踏み込んで右足でハイキック。


 俺は左手を剣から離し、ハイキックを防御。


 衝撃で左手が痺れた。


 速さだけじゃない。


 力もある。


 俺は大剣を右手だけで右から左に振った。


 ベルゼブブは足を戻し、一歩後退。


 ベルゼブブは大剣を右から左へ。


 俺の払いは弾かれて、大剣を押し込まれた。


 俺も一歩後退して避けようとしたが、間に合わない。


 避けられない。


 俺は腹を切られた。


 部分融合で補強して、内臓が外に出るのを防いでいる。


 が、重症だ。


 奴の方が強い。


 だが諦めない。


 もう一回全力を出さないとな。


 根源に繋がり、核を握りしめる。


 限界まで力を引き出す。


 いや、こいつにはもっと必要だ。


 限界以上を引き出す。


 五千パーセント以上だ。


 ギルバド達の時より、さらにもっと多くを引き出す。


 俺はここで死んでも良い。


 こいつだけは、レイセ達に近づけない。


 一瞬、ニーナを思い出した。


 まあ、いいさ。


 ここで全力を出さなきゃ、もう会えない。


 ぶっ壊れてもいい。


 全て出し切る。


 俺は右に大剣を構えた。


 大剣が光り、剣が長く伸びる。


 ベルゼブブも剣を構えた様だ。


 良く見えないが、どうもそうみたいだ。


 腹から血が滴る。


 部分融合での止血が不完全らしい。


 仕方ない。


 傷は深い。


 俺は剣を振った。


 右下から左上に向かって。


 ベルゼブブも少し遅れて同じ動作で剣を振った。


 俺の剣は上に弾かれた。


 だが、ベルゼブブの剣が折れた。


 俺は剣をそのまま上に構え、振り下ろした。


 ベルゼブブを切った。


 奴の肩から腹にかけて。


 完全に致命傷だ。


 勝った。


 ベルゼブブ:「してやられました」

 ベルゼブブ:「”暴食”の最適動作が通用しない」


 ベルゼブブの存在強度は小さく見えていた。


 俺が切った事で、エネルギーは消えかかっていた。


 そう見えていた。


 俺が肩から腹に向けて切り裂いた傷口が塞がっていく。


 同時に存在強度も強まっている。


 はー。


 復活しやがった。


 全力を出したことによって、反動が来ている。


 意識が遠のく。


 まだだ。


 まだ終わっていない。


 もう一回だ。


 もう一回捻り出す。


 やつがくたばるまで。


 何度でも繰り返す。


 とりあえずもう一回やる。


 もう一回だ。


 ふー。


 ニーナ。


 くそう。


 俺は根源の核を握りしめる。


 俺の視界は完全に塞がった。


 真っ暗になった。


 構わない。


 奴を止める。




(ベル視点です。)


 ダズの武器がタロスト。


 アルの武器がカー。


 僕の武器がラン。


 カインとシェルミは手を前にかざして攻撃態勢。


 ルシファーの肩から左右二本ずつ腕が生える。


 盾と片手剣を持っている。


 下半身がライオンの様に変形した。


 僕に向かって突進してきた。


 武器を盾に変更して防御する。


 カインとシェルミが掌からレーザーを出すが、奴は六本ある内の二本の手で盾を操り、攻撃を防御している。


 前足と腕の連続攻撃が凄まじい。


 僕はたまらず、バックステップ。


 距離を取る。


 ルシファーは腕四本に大剣を具現化。


 光り輝く剣が伸びている。


 大技が来る。


 ルシファーは大剣を振り回した。


 周囲に凄まじい威力の斬撃がばら撒かれる。


 ダズ、アル、カイン、シェルミは盾で防いだが、威力が高すぎた。


 衝撃で吹き飛んだ。


 僕は受けてはダメだと判断して、ギリギリで躱した。


 立っているのは僕だけだ。


 四人は気を失った。


 間髪入れずにルシファーは僕の所まで突進して来た。


 前足の爪の攻撃を盾で受け止める。


 六本の腕に持った片手剣がそれぞれ振るわれる。


 僕は腕を四本増やして、それぞれに片手剣を創った。


 六本それぞれから繰り出される斬撃を、同じく六本の剣で弾き返す。


 腕、一本一本の威力が高い。


 同じ威力を再現するのに、根源の核を握りしめている。


 全力を出す。


 ファガスもコナルも無茶やっていた。


 僕も同じだ。


 死ぬつもりで出力する。


 それしか手が無い。


 腕を創り出すと、制御が途端に難しくなる。


 僕は器用な方だが、腕を四本追加するのは骨が折れる。


 頭が沸騰しそうだ。


 しかし止まれない。


 止まると死ぬ。


 ギリギリだ。


 ギリギリの防御。


 そう。


 防御しか出来ない。


 敵は四本脚。


 攻撃を防いでも、態勢が崩れない。


 しかも、グイグイ前に出て来る。


 隙が全く無い。


 このまま耐えて、四人が復活するのを待ちたいんだけど。


 そうならないだろうなー。


 腕六本を動かすのに夢中で、意識が飛びそうだ。


 ルシファーの右片手剣の振り下ろしを、僕の左片手剣で弾く。


 ルシファーの右片手剣の払いを、僕の左片手剣で弾く。


 ルシファーの左片手剣の突きを、僕の右片手剣で弾く。


 ルシファーの右片手剣の振り下ろしを、僕の左片手剣で受け止める。


 こんなやり取りばっかりだ。


 偶に前足でも攻撃して来る。


 前足の攻撃まで、手で防げない。


 立ち位置を調整して躱している。


 ギリギリだ。


 ギリギリの防御が続く。




 ルシファーがバックステップして距離を取った。


 ルシファー:「焦って攻撃に転ずるかと思ったのですが、無駄でしたね」

 ルシファー:「隣で戦っている仲間が気にならないらしい」

 ルシファー:「私達に与えられた役目は時間稼ぎですが、面倒になってきました」

 ルシファー:「ここらで振り落とします」


 どうやら、大技が来るらしい。


 ランは武器化した体を六つに分裂している。


 相当無理をしている筈だ。


 本音では一息入れたい。


 今でも全力出している。


 この上が来るんだろ?


 ふざけやがって。


 来い!


 防ぎきってやる。


 ルシファーは六刀を構えて、力を引き絞る。


 剣から長い光が伸びている。


 禍々しい光だ。


 ルシファーの斬撃が順番に振われる。


 強力な連撃が来る。


 僕は、無我夢中で連撃を相殺する。


 僕も同じ様に光る剣で対抗した。


 凄まじい威力の攻撃が、順番に、迫って来ていた。


 一発。


 二発。


 三発。


 四発。


 五発。


 六発。


 速度のある連撃。


 一撃耐える毎に、少しずつ前に移動した。


 六発目には、奴の目の前まで来ていた。


 僕は武器を槍に替え、七発目を奴に叩きこんだ。


 ルシファーの胸を、槍が深々と抉った。


 意識が。


 意識が飛びそうになる。


 恐らく倒した。


 胸に与えた攻撃は、致命傷だろう。


 これで無傷なら、対抗する手が無い。


 勝った。


 勝った筈だ。


 もう、意識が。


 意識が無くなる。


 もう良いだろ。


 もう、意識を手放しても、構わないだろ?


 だが、ルシファーは倒れずそこに立ったまま存在していた。


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