11話 ”強欲”と”憤怒”


(ダリドベ視点です。)


 左の通路の奥に進む。


 いた。


 長髪の男。


 髪はボサボサだ。


 丸メガネをかけている。


 痩せ型の男。


 男の前で立ち止まった。


 ダリドベ:「貴方が敵ですか?」


 ???:「七つの大罪、”強欲”、マモンです」


 マモン:「貴方は?」


 ダリドベ:「ダリドベです」


 ファニル:「ファニルだ」


 キニダゼ:「キニダゼです」


 レートル:「レートルです」


 マモン:「ふふ、ご丁寧に、どうも」


 ダリドベ:「倒す」


 マモン:「楽にして差し上げます」


 殺気が出ていない。


 ファニルが私の武器に。


 レートルがキニダゼの武器になった。


 私とキニダゼは片手剣を前に構えた。


 マモンは武器を出さない。


 構えていない相手を攻撃するのには抵抗がある。


 仕方ない。


 攻撃する。


 私は右の剣で右から左に払う。


 全力の払い。


 マモンは左手で、左から右に払う。


 瞬時に武器が具現化された。


 私はマモンの払いに押されて、一歩後退。


 鏡写しの様に私と同じ動きだった。


 但し、威力は向こうが上。


 私の左側に立っていたキニダゼが片手剣を振り上げた。


 マモンは右手に剣を具現化させた。


 マモンも剣を振り上げる。


 キニダゼが振り下ろすと同時に、マモンも振り下ろした。


 剣と剣がぶつかり合い、キニダゼの態勢が崩れる。


 キニダゼは一歩後退した。


 私の時と同じだ。


 ほとんど同じ動作を返して来る。


 但し、威力は向こうが上。


 向こうは追撃してこない。


 わかった。


 模倣だ。


 七つの大罪の”強欲”。


 模倣は模倣だが、劣化コピーじゃない。


 こちらの動きを上回る模倣だ。


 マモン:「わかった様ですね」


 マモンは笑っている。


 なんらかの『能力』か?


 どうする?


 どんな攻撃を繰り出しても、上回る手を返して来るのか?


 一体一では勝てない気がする。


 こちらは二人いる。


 人数差で押し切るか?


 マモン:「考えても、手は無いですよ?」

 マモン:「どうせ手数で上回ろうと考えているんでしょ?」

 マモン:「考えるだけ無駄です」

 マモン:「やってみれば解ります」


 そうかよ。


 でも試す。


 私は右の剣を右から左へ。


 マモンが左の剣を左から右へ。


 私は左の剣を上から下へ。


 マモンは右の剣を上から下へ。


 キニダゼが右の剣でマモンの腹へ攻撃。


 マモンは右肩に腕を追加。


 増えた右腕でキニダゼの攻撃を弾く。


 くっ。


 切りが無い。


 こちらの手数が増えても、腕を増やす事で無限に対処する気だ。


 私達は腕を増やす本数には限りがある。


 向こうは全てに対処して来る。


 手詰まりだ。


 綺麗に完勝するのは無理だな。


 そんな気がしていた。


 泥臭く行こう。


 私にはそれが似合っている。


 私がダメージを負いつつ、奴の攻撃を引き付け、キニダゼが攻撃を仕掛ける。


 キニダゼが唾を飲み込んだ。


 伝わっているらしい。


 よし。


 やるぞ。


 五千パーセント出す。


 私は右の剣で右から左へ。


 マモンは左の剣で左から右へ。


 マモンの攻撃で私の右が弾かれる。


 マモンは追撃して来た。


 態勢の崩れた私に右で突きを放つ。


 私は追撃の右を諸に受けた。


 受けた後、奴の右腕をナイフで払った。


 奴の右腕を切断した。


 奴の突きは私の右肩を貫いている。


 深く刺さって、右肩が上がらない。


 深く刺さったおかげで、隙が出来た。


 奴は右腕を無くした。


 私は右腕が上がらない。


 バカみたいに痛いが、痛み分けだ。


 キニダゼが瞬間移動で奴の右側に移動。


 キニダゼは、槍で突いた。


 マモンは部分融合で右腕をもう一本追加。


 キニダゼの槍の突きを、槍の突きで相殺する。


 マモンの方が、威力が上だ。


 キニダゼは槍から手を離してしまった。


 マモンの追撃が来る。


 マモンは私の右肩から剣を引き抜いた。


 引き抜いた剣で、キニダゼに攻撃。


 キニダゼは部分融合で盾を作った。


 それではダメだ!


 私はまた五千パーセントで動いて、二人の間に割り込む。


 マモンの左を左手のナイフで防御する。


 私は同時に奴の足に蹴りを入れる。


 キニダゼも奴の足に蹴りを入れる。


 キニダゼも五千パーセント出した。


 マモンは足にダメージを受けて、バックステップ。


 地味だが、動きに影響の出るダメージだ。


 そして、奴は右腕を回復しない。


 存在感にダメージを負って、回復出来ていない。


 私も右肩が上がらないが。


 一旦仕切り直しだな。




(ロ―ク視点です。)


 階段の上に向かう。


 踊り場に出た。


 男が待っている。


 体格の良い、大男。


 ???:「”憤怒”のサタンだ」

 サタン:「めんどくせーのは苦手だ」

 サタン:「こっちから行く」


 俺の武器はニック。


 俺の盾にフレア。


 ガドルの武器はマリブ。


 サリーンの武器はケイト。


 戦闘態勢を取った途端、サタンはガドルを攻撃。


 双剣で防御態勢を取ったガドルに、サタンは右ストレート。


 ガドルは吹き飛ばされ、壁に激突。


 サタンは壁に瞬間移動。


 壁に叩きつけられたガドルの腹に追撃。


 破壊不能物質で出来た壁は力を外に逃がさない。


 ガドルは気を失った。


 恐らく死んでいない。


 動けなかった。


 動きが速い。


 一瞬だ。


 時間稼ぎにもなっていない。


 仕掛けないと押し込まれる。


 役目を果たす。


 俺は大盾を前にして体当たりを仕掛ける。


 奴は左足で踏ん張った。


 サリーンがハンマーを左から右へ。


 奴は左拳でハンマーを殴り返した。


 奴の力が瞬間的に膨れ上がる。


 足で大盾を弾き返し、サリーンにボディーブロー。


 サリーンはその場に蹲った。


 気を失ったようだ。


 死んでは無い筈だ。


 間髪入れずに俺を拳で殴って来る。


 俺は大盾で防いでいる。


 拳の威力は高い。


 防ぎきれず、後退している。


 左右の拳で連続して殴って来る。


 右手に持ったハンマーを使う余裕が無い。


 とにかく防ぐ。


 それしか出来ない。


 サタン:「勝負はついただろ?」

 サタン:「諦めろ」


 ローク:「俺がまだ立っている」

 ローク:「見てわからないか?」


 防ぐ。


 とにかく防ぐ。


 防ぎ続ける。


 こいつの腕力は桁外れだ。


 七つの大罪、”憤怒”なら、力の増幅には限りがある。


 筈だ。


 力が落ちて来るのを待つ。


 俺はただひたすらに防ぎ続けた。




 奴の攻撃ペースが落ちてきた。


 思った通り。


 諦めなきゃ、なんとかなるんだよ。


 レイセの言う通りかもな。


 なんとかなる。


 俺はハンマーで殴り返している。


 奴は左拳でハンマーを捌いている。


 奴の右は、俺の大盾で完璧にガードしている。


 殴り合う音が周囲に響く。


 しばらくそうしていた。




 ガドルとサリーンが瞬間移動。


 サタンの左右に出た。


 二人は両手でハンマーを振る。


 サタンは左右の手でそれぞれのハンマーを防いだ。


 俺のハンマーが奴の顎をかちあげる。


 綺麗に入った。


 奴の瞬間火力に俺の防御力が勝った。


 これは必然だ。


 俺が耐えている間に、皆が気を取り戻した。


 ローク:「俺を抜けなきゃ、勝てないらしい」


 サタン:「ハハ、そうみたいだな」


 一撃入れたが、大して効いていない。


 笑っていやがる。


 そうかよ。


 長く掛かりそうだ。


 勝ってレイセを追いかける。


 絶対だ。


 追いつく。




(バルド視点です。)


 バルド:「しんどいのー」


 リアンナ:「回復いる?」


 バルド:「まだいい」


 ニーナ:「何か言いたいの?」


 バルド:「しんどいのは、レイセ達も一緒だろ」


 アリア:「何が言いたいの?」


 バルド:「もうちょっとレイセ達の加勢に行かないか?」


 リトアニ:「人選は?」


 ぺセシュ:「ニーナ、アリア、リアンナ」


 その通り。


 ワシと同じ意見じゃ。


 ワシ達はしんどいが、安定して来た。


 レイセ達が気がかりじゃ。


 ニーナ:「私達が居なくて持つ?」


 フィビニ:「持たせますよ」


 アリア:「行くわ」


 ぺセシュ:「さっさと行け、バルド、門開けろ」


 バルド:「了解」


 ツァーリク:「爺、余計な事言うなよなー」


 ノイトル:「同意する」




 もう一回開けるのか?


 あれを?


 自分で言い出したから開けるけど。


 ニーナ:「行ってくる」


 アリア:「耐えて」


 リアンナ:「さっさと行くわ~」


 バルド:「ぐぎぎぎっぎ」

 バルド:「さあ、はやく行けー!」

 バルド:「絶対帰って来いよー」


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