8話 底力
(レイセ視点です。)
みんな揃った。
城の中に入らないチームが城門を背にして敵を食い止めている。
俺は城門の前に立っている。
城門を通って中に入る。
その前に城門の大扉を破壊する。
バカみたいに大きくて、どう見ても頑丈そうな大扉だ。
だが、破壊するのは俺だ。
俺が本気出して破れない扉とか無いだろ。
俺だし。
レイセ:「武器化してくれ」
ルプリレ:「門を壊すのね?」
レイセ:「ああ、中に入る方法はそれしか無いだろ?」
ルプリレ:「…………」
ルプリレ:「武器化して扉を切ったら、私折れない?」
ルプリレ:「嫌な予感がします」
ルプリレ:「アルコル、以前城の中に入った時はどうだったの?」
アルコル:「大扉は開いていた」
アルコル:「だが、…………」
レイセ:「だが、なんだ?」
アルコル:「閂のようなものは無かった、かもしれない」
ジャド:「本当ですか?」
アルコル:「自信は無い、ちらっと見ただけだ」
アルコル:「とにかく、時間が惜しい」
アルコル:「俺が斬撃を飛ばす」
アルコル:「それで壊せるか、確認する」
レイセ:「そうだな、頼む」
アルコルは大扉からバックステップして十メートル距離を取った。
それ以上は下がれない。
『創聖』、『マギ』、ドバスカリ、クレイモア、ネストロス、アウグストラが敵を食い止めている。
『光の旋律』、連合国クロトの役目も敵を食い止める事に変更した。
ギルバド達三人を倒したからだ。
とにかく、大人数で時間を作ってくれている。
十メートルは扉の前の防衛ラインギリギリだ。
それより下がると邪魔になる。
アルコルも流石に空気を読んだ。
アルコルは大扉に向かって斬撃を飛ばした。
斬撃は大扉にぶつかって、金属音を発した。
つまり、攻撃が弾かれている。
アルコルの斬撃は、『能力』で物体を透過する。
透過しないのは、今の所、魔物の武器と人が武器化した場合だけだ。
アルコルは連続で斬撃を飛ばした。
『能力』が有効なら、大扉はバラバラになっている筈だ。
アルコル:「壊せそうにない」
アルコル:「攻撃を中止する」
俺達の中央に、少女の管理者が立っていた。
突然の登場だ。
だが俺達全員は驚かない。
最近慣れてきた。
少女:「その扉は鍵がかかっていない」
少女:「押せば開く」
少女:「こんな所で手間取らないでください」
少女:「バランサーに気付かれた」
少女:「また後で」
少女は消えた。
レイセ:「押せば、開く、か」
俺は扉に掌で触れた。
神獣の鑑定能力が働く。
破壊不能物質で出来ているらしい。
大迷宮の中にも時々出て来ていた。
絶対に破壊できない物質。
そのままのネーミングだ。
どうやら大扉だけじゃ無く、城そのものが破壊不能物質らしい。
城の中で袋小路に追い詰められたら、壁を壊して逃げるとか、無理らしい。
まあ、そうか。
大扉は両開きだ。
右側の扉に右手で触れて力を入れる。
ビクともしない。
右側に両手で触れる。
全力で踏ん張った。
やはり動かない。
少女の話の通りなら、開く筈だ。
どうなっている?
本当に鍵がかかっていないのか?
押し方の問題か?
バルド:「その程度の力で開くのか?」
レイセ:「ん?」
レイセ:「バルド、休憩か?」
バルド:「そうじゃ」
バルド:「力には自信がある」
バルド:「ワシにやらせろ」
レイセ:「そうかよ」
レイセ:「じゃー、やってみてくれ」
バルドは、右手を右の扉に、左手を左の扉に添えた。
バルドは腰を落として、力を入れる。
バルド:「フゥーーーー」
扉が数ミリ動いた。
バルド:「ハァーーーー!!」
更に数ミリ開く。
正確には、開いた、と言えるほど動いていない。
が、動いた。
力を入れたら動く。
力の加減の問題だった。
俺が押した時も結構力が入っていたぞ。
バルドはどんだけ力を込めたんだ?
そしてバルドは若返っていた。
二十代後半の見た目だ。
本人は気付いているのか?
無意識じゃないか?
余裕がない証拠だ。
バルドは、一旦力を入れるのを止めた。
レイセ:「降参か?」
バルド:「いや、本気を出す」
バルド:「中に入る役目のものは準備していてくれ」
バルド:「そう何度も開けられない」
バルド:「一回でクリアしたい」
レイセ:「わかった」
レイセ:「みんな、用意は良いか?」
レイセ:「バルドが大扉を開いたら、バルドの上を飛び越えて中に入る」
アルコル:「俺がやってもいいぞ」
バルド:「いや、お前らは中に入る」
バルド:「扉を開くのは、外で待つ者の役目じゃ」
バルド:「まー、見て置け」
俺達はメガネの様な構造の魔道具を装着する。
恐らく中では気配察知が使えない。
魔道具で熱反応を拾って、敵を感知する。
建物の構造も、大体が判明している。
レイセ:「バルド、用意出来た」
中に入るのは、俺、ルプリレ、シロさん、アルコル、ジャド、ジーク、アリシア、ファガス、コナル、ボーデン、フレド、聖国クリア、メロイリス、『トウェルブ』、『トパーズ』、だ。
他は外に残る。
ニーナとアリアも外に残る。
かなりの大人数が中に入る。
その間、バルドは扉を開き続けなきゃいけない。
バルド:「準備できたみたいじゃな」
バルド:「やるか」
(バルド視点です。)
はー。
扉が重い。
重すぎるだろ。
本当に人が通れるほど開くのか?
俺がやれるのか?
しかし、タイミング的には俺の役目だな。
ここまで、活躍らしい活躍もしていないし。
良いとこ見せてやるとするか。
良し。
やるぞ。
力を入れるぞ。
せー、の!
ずあああああああ!
ああああああああ!
ぬぅりゃああああーーーーーーーーーー!!!!!
ああああああああああああ!!!!!!!
はは、開いたな。
やってみるもんだ。
このまま維持する。
ぐぎぎぎぎぎぎ。
さっさと入れーーーーーーー!!!!!!
レイセ:「爺、ありがとう」
レイセ:「みんな、中に入れ!」
レイセ:「急げ!」
レイセ:「中に入れ!」
バルド:「レイセ、お前も行け!」
レイセ:「ああ、爺行ってくる!」
バルド:「ちゃんと帰って来いよ」
レイセ:「お前が言うなよなー」
行きよった。
ふーーーーーー。
疲れたーーー。
限界じゃ。
死ぬかと思った。
五千パーセントは出したぞ。
腕と腰が痛い。
全力出したぞ。
もう良いだろ。
眠たい。
ビール飲みたい。
ぺセシュ:「バルド、そろそろ休憩終わりにしてくれ」
バルド:「休んで無いけどな」
リアンナ:「貴方が自分でやるって言ったように聞こえたけど~?」
バルド:「ビール飲んで良い?」
アリア:「良いわけ無いじゃない」
ニーナ:「バルド、しっかりして」
フィビニ:「後ろの方に四体、ヤバいのがいます」
バルド:「ああ、わかっとる」
バルド:「デカい顔に手足が生えたやつだろ?」
バルド:「こっからも見えとるわ」
バルド:「デカい顔が」
ツァーリク:「上を飛んでいるやつらもヤバいだろ」
ニーナ:「そっちは歌って撃ち落とす」
ブレイズ:「魔銃の弾が尽きて来た」
ブレイズ:「分けて貰えないか?」
アリア:「銃弾は扉の前に出しますね」
バルド:「混沌として来たな」
リアンナ:「やるしかない、でしょ?」
ぺセシュ:「だぜ」
ぺセシュ:「ここでくたばったら、中で頑張ってるやつらに申し訳が立たねぇ」
ぺセシュ:「魔物どもを絶対に中に入れねぇぞ」
ぺセシュ:「お前ら、気合入れろよ!」
混沌として来た。
先が読めない。
終わりが無い。
だが、中に入ったレイセ達に比べたら、どうか?
外の方が楽だろ。
中には魔物の王がいる。
楽には勝てないだろ。
どう考えても苦労する。
だが、迷わず行きよった。
始める前はあんなに嫌そうだったのに。
やり始めると迷いが消えるか?
レイセ。
帰って来いよ。
ワシが待っていてやる。
このワシが。
『悠久の旅人』で王に推されていた、このワシが。
ワシがお前を認めているんだぞ。
お前が王だ。
お前に仕えてやる。
だから帰って来い。
待っているぞ。
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