6話 真意


(レイセ視点です。)


 空中に待機していた『トパーズ』と『トウェルブ』に話かける。


 距離があるので大声で話さなきゃいけない。


 レイセ:「ケルスは撤退した!」

 レイセ:「追いかけるのはやめてくれ!」


 ローク:「…………」


 アスマ:「俺達はまだ働いていない!」

 アスマ:「良いのか!?」


 レイセ:「温存しておいてくれ!」


 ローク:「わかった、一旦戻る!」


 アスマ:「同じく!」


『トパーズ』と『トウェルブ』が戻って来る。


 俺の予想では、ケルスは戦闘に参加しない筈だった。


 撤退したのは予想通りだ。


 奴は、精神干渉系の魔法を使って来た。


 奴が武器に成った場合、どうなる?


 魔物の王の殺気に、ケルスの死のイメージが追加されるのか?


 大変だな。




 ケルスの攻撃で魔物が死に、広い空間が出来た。


 一気に進む。


 休まない。


 レイセ:「みんな、走るぞ!!」




 城が大きく見えてきた。


 近づき出すと、大きくなるのが加速する。


 ここまで来れば、あとはもう、すぐそこだ。


 ケルスが作った広い空間を走る。


 ケルスが撒き散らした死のイメージは広範囲だった。


 お陰で楽が出来た。


 違うな。


 ファガスのお陰だ。



 俺達が城に向かって走ると同時に、城の方から魔物が走って来ていた。


 地響きの様な足音が辺りに響く。



 魔物共の先頭に、突出している奴が一人。


 大男だ。


 前とは服装が違うがわかる。


 処刑人だ。


 やはり来やがった。


 処刑人の担当は、『トパーズ』と『トウェルブ』。


 二グループに、早々に出番が来た。


 レイセ:「ローク、アスマ、頼む!」


 アスマ:「ああ、わかっている」


 ローク:「…………、承知した」



(ローク視点です。)


 不味い事になった。


 処刑人を見て気付かされる。


 俺は奴に会った事がある?


 いや、無い。


 無い筈だ。


 なら、この感覚は何だ?


 何故か見覚えがある。


 奴は、恐らく、俺と同一存在だ。


 妙な懐かしさを感じる。


 だが、奴は敵だ。


 排除する。


 手心は加えない。


 役割に徹する。


(アスマ視点です。)


 ロークの様子がおかしい。


 違和感がある。


 でも、まー、仕方ない、か。


 処刑人は人間だ。


 殺すのには抵抗がある。


 客観的に見れば、俺にも違和感が出ているかもな。


 雑魚は、本陣に任せる。


 俺達の担当は、処刑人だ。


 処刑人が話し出す。


 処刑人:「聞け!」

 処刑人:「お前達の行動に、信念はあるのか?」

 処刑人:「魔物の王を討つ事が正しい行いか?」

 処刑人:「魔物を殺す事は、摂理に反していないと言い切れるか?」


 アスマ:「人を間引いて、管理する事の何処が節理なんだ?」


 ローク:「…………」


 処刑人:「この異世界のありようは間違っていない」

 処刑人:「現実世界は人が多過ぎる」

 処刑人:「人類は世界をコントロール出来なかった」

 処刑人:「同じ間違いを繰り返すな」

 処刑人:「魔物の王は、負の感情の神だ」

 処刑人:「神を討つなど、出過ぎた行いだ!」


 ローク:「俺には成すべき事がある」

 ローク:「負の感情の神を討つ事が試練なら、そうするまでだ」


 アスマ:「魔物の王を倒しても、すべての魔物が消滅するわけじゃ無い」

 アスマ:「人間を間引く神など、必要としていない」


 ローク:「レイセ!」

 ローク:「こいつは俺達が受け持つ」

 ローク:「お前たちは先に進め」


 レイセ:「そうさせて貰う!」


 レイセたちは処刑人を無視して前に進もうとする。


 処刑人:「力ずくでわからせるしかないか」


 ローク:「御託はいい」


 アスマ:「そうだな」


 本陣の先頭にいたファガスに、処刑人が斬りかかる。


 凄まじい速さだ。


 ファガスと処刑人の間に、ジークが入る。


 ジークが盾で防御した。


 ローク:「これは新たな神を選定する戦いだ」

 ローク:「お前の相手は俺達がする」


 俺の武器はソウタ。


 マサトの武器はソラ。


 リクの武器はゲン。


 メイの武器はミキ。


 オウジの武器はヒカル。


 ハルキは魔法。


 ロークの武器はニック。


 ガルドの武器はマリブ。


 サリーンの武器はケイト。


 フレアは魔法。


 ハルキとフレアが戦意高揚と身体能力向上の魔法を使う。


 ロークが注視を使った。


 処刑人はロークに攻撃する。


 処刑人が剣を振り上げた。


 ロークは防御態勢。


 ロークの盾に、処刑人の両手剣が触れた。


 瞬間、俺は片手剣で処刑人を攻撃。


 処刑人は剣を戻して俺の攻撃を払う。


 メイが攻撃。


 処刑人が俺の攻撃を払ったのとは逆方向から、槍での突き。


 処刑人は一歩後ろに下がって槍を上に払う。


 処刑人は、槍を上に払ったと同時にメイに体当たり。


 メイが吹き飛んだ。


 魔物の群れに突っ込んだメイを、サリーンとガルドが追う。


 リクが薙刀で払う。


 処刑人は両手剣で下から上に。


 リクの攻撃が弾かれる。


 処刑人はロークの間合いの内側に入り込む。


 ロークは片手剣の具現化を解いた。


 防御に徹する。


 処刑人は両手剣を双剣に変えて、連続攻撃。


 ロークは双剣での連続攻撃を大盾で防ぐ。


 オウジが処刑人へ攻撃。


 斧を振り下ろす。


 処刑人はナイフで斧の攻撃を防ぎ、オウジにハイキック。


 オウジは防御出来ずモロにハイキックを喰らう。


 肩にハイキックを受けたオウジは横に吹き飛んだ。


 オウジのヘルプにリクが向かう。


 俺達に回復役はいない。


 攻撃を喰らうと、そのまま戦線離脱だ。


 残ったのは、俺、マサト、ローク、ハルキ、フレア。


 ハルキとフレアは全力で魔法を使っている。


 動けるのは、俺、マサト、ローク。


 処刑人の動きが異常に速い。


 千五百パーセントだしている俺達の二倍の速さで動く。


 力も数段上だ。


 これ以上の長期戦になると負ける。


 俺は今以上の力を出さないといけない。


 根源の核から力を振り絞る。


 俺は武器を双剣に変え、連続攻撃。


 俺は右手の剣を左へ。


 奴は左の剣で弾く。


 俺は左の剣で右へ。


 奴は右の剣で弾く。


 奴は弾いたと同時に蹴りを入れて来る。


 それをロークが盾で防御。


 奴はロークに左の剣で攻撃。


 その攻撃をマサトが片手剣で弾く。


 俺は右の剣で攻撃。


 俺の右が処刑人の脇腹に入る。


 処刑人の脇腹から血が滴る。


 処刑人は後退。


 奴は勢いを付けて槍で突進。


 凄まじいスピード。


 ロークが盾と結界で防御する。


 突きは結界を破壊して盾を上に弾いた。


 ロークは盾を手放してしまった。


 ヤバい。


 処刑人は右足でロークを蹴り上げた。


 ロークは上空に吹き飛ばされた。


 俺は武器を槍にして連続攻撃。


 処刑人は双剣で全ての攻撃を弾く。


 ロークは手放した盾を触手で拾う。


 ロークは吹き飛ばされた放物線の頂点で結界を具現化。


 結界を足場に下に降りて来る。


 俺とマサトは双剣で連続攻撃。


 処刑人は双剣で全ての攻撃を弾く。


 ロークは槍を投げた。


 処刑人は結界を生成。


 槍は結界を粉砕し、処刑人を貫いた。


 処刑人は血を吐いた。


 ロークの武器だったニックは武器化を解いた。


 処刑人は致命傷だ。


 油断したニックは処刑人の右拳を腹に受けた。


 ニックが吹き飛び、マサトがヘルプに入る。


 ロークが着地。


 ローク:「俺にやらせてくれ」


 アスマ:「わかった」


 ロークは部分融合で大剣を作った。


 処刑人も大剣を作った。


 ロークは大剣を右から左へ。


 処刑人も大剣を右から左へ。


 剣は衝突し、砕けた。


 もう一度武器を生成し、今度は左から右へ。


 処刑人も左から右へ。


 武器が粉砕する。


 ロークは大剣を上に構えた。


 処刑人も上に構える。


 二人は同時に振り下ろした。


 ぶつかり合った剣が粉砕し、破片が周囲に飛び散る。


 処刑人は流血したままだ。


 ロークは五メートルバックステップ。


 ロークは剣を右に構えた。


 処刑人も武器を右に構える。


 二人は踏み込んで、右から左へ。


 ロークの武器は処刑人の武器を粉砕し、処刑人を切った。


 処刑人が片膝を付く。


 ロークが手を差し出す。


 処刑人はロークと握手した。


 処刑人は消滅した。


 処刑人のいた所に魔石が転がっている。


 勝ったのか?


 ローク:「終わった」

 ローク:「みんなを集めて、レイセ達と合流する」

 ローク:「もう少し踏ん張ってくれよ?」


 アスマ:「言われなくても」


 ロークは笑っていた。


 ハルキとフレアが駆け寄って来る。


 もうひと踏ん張りするか。


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