53話 限界



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

     カーミュ・セーグルと融合した。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

      ビレンティと融合した。

 ぺセシュ:『創聖』のヒーラー。

      ロミールの双子の妹。

      戦闘の指揮を行う。

 ジーク:聖国クリアの守護者。

     クレラメイと融合。

     真理への到達者。

 アリシア:『悠久の旅人』のエース。

      クリアの孫。

 リアンナ:リアンナ・ドバスカリ

      海洋国家ドバスカリ女王。

      黒沢香織。

      ファガスと結婚している。

      万能サポート。

 シロ:黒戸壱白の分裂した姿。

    ビレンティと融合した。

    『能力』未来予知が使える。


(レイセ視点です。)


 大迷宮の四百八十階層を攻略してから二年が経った。


 この言い方ではわかり難いかもしれないな。


 最後に四百八十階層に行ったのは、一か月前だからな。


 はじめて四百八十階層に来てからと言い直す。


 はじめて万象のクリムゲルに会ってから、二年経った。


 俺達は、それから何度も、奴に挑戦するために四百八十階層を訪れた。


 奴は強い。


 強さの底が見えない。


 そんな奴と同等な強さを持った奴がまだ複数いる。


 その複数を相手に戦う必要が有る。


 五百階層がそうだ。


 そして、魔物の王攻略時は、王とその王の配下がそうだ。


 大迷宮攻略に時間を掛ければ、魔物の王の守りも硬くなる。


 魔物共の共食いによる強化より、俺達の成長の方に効果がある、はずだ。


 そう信じる事にした。


 とにかくだ、万象のクリムゲルを乗り越えるのに二年掛かった。


 奴とはもう顔見知りだ。


 五百階層には、クリムゲルみたいな奴が他に二人来るらしい。


 大迷宮には、番人が二十三人いて、一人が欠番になっているらしい。


 大迷宮を二十四人で管理する仕組み、らしい。


 他に来る二人の名は、絶空のエルハンドラ、天城のサルバトス。


 大層な二つ名がついている。


 万象のクリムゲルが言うには、クリムゲルの方が強いらしい。


 信用できるか怪しい。


 クリムゲルが連れて来るんだ、弱い筈が無い。


 四百八十一階層から、五百階層の攻略は、光の旋律と連合国クロトの合同で行う。


 はじめの攻略は、だ。


 たぶん何回も往復する事になるからだ。


 四百八十階層で二年掛けた俺達は、その下の階層には進まなかった。


 下の階層へ進むのは久しぶりだ。


 やはり一回打ち合わせをする。


 光の旋律、レイ。


 連合国クロト、フレド。


 この二人だな。


 連合国は人数が多く、二パーティー扱いだったか。


 ならもう一人呼ぶか?


 呼ぶならボーデンだな。


 いや、コナルか?


 フレドに選ばせよう。


 ちなみに、光の旋律の人数は八人。


 連合国クロトは十一人だ。


 そう聞くと、人数に差が無いように感じるかもだが、八人で二パーティーは人数が足りないんだよな。


 十一人でも二パーティーには少し足りないんだが、一パーティーとしては人数が多過ぎるんだよ。


 人数合わせは、俺達引率役が入ってなんとかするつもりだ。


 今回は引率役が全員参加だ。


 アルコルも、シロさんも、全員参加だ。


 それにしても、二年か。


 この二年で状況が変化した。


 俺がトップを走っている状況は今も変わらない。


 しかし、確実に追いつかれている。


 抜かれそうだ。


 俺にはもう伸び代が無い。


 以前キシが武器化して死んだ時、アルコルには、役に立たなくなっていく辛さがわからないか?


 と言われたっけ。


 今ならわかるかもな。


 俺は自分を過信し過ぎていた。


 なんとかなると思っている。


 追い詰められた時のとっさの反応だけの話ならいいんだが。


 そうじゃない。


 普段訓練している時の実力は、そんな不安定な何かじゃ無いんだよ。


 俺は最近タバコを吸い出した。


 ルプリレには嫌味を言われている。


 俺も辞めたいんだが、辞められ無いんだよなー。


 常に自分がトップを走り続けるのよりも、トップを支える役の方が大変かもな。


 前を走る奴に、置いて行かれ無い様に走るって、大変だわ。


 前を走っているやつは、走りたいように走るだけだからな。


 はーあ。


 辛い。


 俺はアルコルとかに引き離された場合、その後のコイン集めで負けるんだよな。


 どうすっかなー?


 自信無いぞ。


 こういう場合、どうするんだっけ?


 もし仮に追い抜かれて、俺が追いかける立場になったら、どうする?


 その場合は、トップを譲るか。


 とにかく、腐らずに、徳を積み上げる。


 そうする。


 タバコはもうちょい待って。


 今日から禁煙だわ。


 今辞めたから。



 二時間後、また吸ってしまった。


 タバコが辞められない。


 原因は解っている。


 このまま敵の強さが増していった場合、俺には対処できない。


 そして、その日は必ず来る。


 俺にはどうしようもない。


 悪い予感しかしない。


 いよいよ追い詰められた時、俺は禁じ手を使うしか無くなる。


 そう、俺にはまだ禁じ手が残っている。


 ルプリレにも話していない。


 最後まで追い詰められたら、それを使うしかない。


 他に選択肢がない。


 そうなる。


 はーあ。


 希望を感じない。


 最近底力が出せないのもその所為だろう。


 俺の心は逃げてしまっている。


 仲間に勇気づけられているが、その事実さえも俺を追い込んでいる。


 プレッシャーだ。


 ふー。


 もう一本吸うわ。




 聖国クリアの俺の執務室に全員揃った。


 執務室は禁煙だ。


 ルプリレに、外で吸って、って怒られた。


 俺の部屋なのに。


 相変わらず逆らえない。


 フレド:「で?」

 フレド:「何を打ち合わせる?」


 コナル:「だよな」

 コナル:「今更だぞ」


 ボーデン:「万象のクリムゲル、絶空のエルハンドラ、天城のサルバトス」

 ボーデン:「この三人をどうするか決めておかないと」


 連合国クロトは三人で来やがった。


 いいけど。


 レイ:「そうだね」

 レイ:「道中の魔物はもう相手にならないでしょ」


 レイセ:「ルプリレ、何か考えがある?」


 ルプリレ:「もう、私に振らないでよ」

 ルプリレ:「貴方がリーダーでしょ」


 レイセ:「じゃ、もう一人のリーダーに聞くわ」

 レイセ:「アルコル、なんかある?」


 アルコル:「絶空のエルハンドラと天城のサルバトスの情報はあるか?」

 アルコル:「それによる」


 ジャド:「エルハンドラは短槍の二刀流」

 ジャド:「サルバトスは大盾と片手盾で戦うらしいですよ?」


 ジーク:「初耳です」


 ボーデン:「前回クリムゲルに会った時に聞き出しときました」


 ぺセシュ:「やるじゃねーか」


 アリシア:「そんなのどうやって聞き出すのよ」


 ボーデン:「内緒、です」


 リアンナ:「ボーデンは融合してから、なんか怪しいのよね」


 ボーデン:「大丈夫、味方ですって」


 コナル:「まー、大丈夫だろ」


 レイセ:「だな」


 ルプリレ:「根拠は?」


 レイセ:「勘」


 ルプリレ:「言うと思いました」


 シロ:「バランサーがボーデンに力を貸したのは、バランスがそれで保たれるからだ」

 シロ:「向こうも同じように力を付けている筈だ」

 シロ:「そのうえで、俺達が勝つように導いている」


 アルコル:「管理者は管理者を増やしたい」

 アルコル:「チッ、俺に言わせるな、俺も同意見だ」


 この二人は顔を合わせても言い合いにならなくなった。


 二人の関係は変化している。


 悪くない感じだ。


 レイセ:「クリムゲルの役を、アルコルが」

 レイセ:「エルハンドラの役を、俺が」

 レイセ:「サルバトスの役を、ジークが」

 レイセ:「番人には不足しているかもしれないが、それで一回模擬戦やるか?」


 レイ:「僕達はどうする?」


 ぺセシュ:「三人に教えないで、作戦組むか」


 ルプリレ:「そうね」


 リアンナ:「全員で三人と戦うなら、私は三人の回復に回るわ」


 アルコル:「なら、俺達も別室で打ち合わせるぞ」


 ジーク:「そうなりますね」


 レイセ:「良し、居酒屋に行こう」


 ルプリレ:「えー?」


 レイセ:「えー?」

 レイセ:「じゃない」

 レイセ:「真面目に打ち合わせる」


 ぺセシュ:「嘘付け」


 アルコル:「ラムタートのあの店はどうだ?」


 ジーク:「ジャドが教えてくれた店ですか?」


 ジャド:「キシさんに連れて行かれたんですけど」


 レイセ:「知っている」

 レイセ:「行くぞ、リアンナもな」


 居酒屋では、それぞれの動きについて打ち合わせた。


 アルコルはクリムゲルの様に長剣で中距離攻撃。


 俺は短槍で近距離の連続攻撃と投げ槍で遠距離攻撃。


 ジークは盾二枚でひたすら防御。


 ジークが引き付ける。


 俺達が狙うのは、回復役のぺセシュだが、誰かが盾役をやるだろう。


 そいつらを順番に切り伏せる。


 今回は模擬戦だ。


 刃は潰す。


 が、回復役がいるからな。


 光の攻撃も出す。


 はじめに軽く打ち合わせた後は、ひたすら飲んだ。


 希望はまだ感じない。


 それでもやるしかない。


 出来る事をやる。


 ドロドロになるまで飲んだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る