25話 無自覚



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

     カーミュ・セーグルと融合した。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 ぺセシュ:『創聖』のヒーラー。

      ロミールの双子の妹。

      戦闘の指揮を行う。

 アスマ:神木遊間。

     『トウェルブ』のサブリーダー。

     カーミュとは兄弟。

     チームの纏め役。

 ローク:『トパーズ』のリーダー。

     『リーベラティーオー』のメンバー。

 ジーク:聖国クリアの守護者。

     クレラメイと融合。

     真理への到達者。

 アリシア:『悠久の旅人』のエース。

      クリアの孫。


(ジャド視点です。)



 ジークさんとアリシアさんが引率に加わった。


 七人でこれからの相談をする。


 するんだろう。


 んー?


 黙っていたけど、理解が追い付かない。


 ジークさんとアリシアさんが必要なんだろう。


 そういう流れだ。


 それは解った。


 僕も合わせた。


 ルプリレさんが何か僕らを操ろうとしている。


 そう感じていた。


 それはレイセさんと同意見だった。


 その後の展開の意味がしっかり理解できない。


 アルコルさんは、レイセさんと同意見なのか?


 さっきはそう言っていたが、本当か?


 解っていないのは僕だけ?


 レイセさんがジークさんとアリシアさんに説明していた内容も、意味不明だ。


 レイセさんは、敵が大技を使ってくるという前提で、その後の説明をした。


 肝心な、何故大技を使ってくると判断したのか、説明が無い。


 認識が違い過ぎて、指摘出来なかった。


 ルプリレさんとアルコルさんはあれで意味がわかったのか?


 ジークさんとアリシアさんはたぶん解っていない。


 僕も解らない。


 どうする?


 どうしたらいい?


 正直に言うか?


 普通はそうする。


 でも、なんだか言いだし難い。


 なんなんだ。


 なんだこの雰囲気。


 レイセさんは普段通りのリラックス加減。


 ルプリレさんと、アルコルさんの様子がおかしいのか?


 緊張している?


 たぶんそうだ。


 僕は、アルコルさんを見た。


 アルコルさんはルプリレさんを見た。


 ルプリレさんは頷く。


 レイセさんは良く解っていない。


 ルプリレさんが話す。


 ルプリレ:「そろそろ良い時間ね」

 ルプリレ:「レイセ、私、今日は貴方の手料理が食べたい」


 レイセ:「今日はこれで解散か?」

 レイセ:「なら帰るか」


 ルプリレ:「私はちょっと話す事があるから、先に帰って料理をお願いします」


 レイセ:「希望は?」


 ルプリレ:「串カツ」


 レイセ:「了解」

 レイセ:「準備して待っている」

 レイセ:「揚げながら食べるぞ」


 ルプリレ:「楽しみだわー」


 レイセ:「今日はビール飲むか」


 レイセさんは瞬間移動した。




 …………。


 …………。


 静かになってしまった。


 聞きたい事聞いていいのか?


 聞くぞ?


 ジャド:「説明をお願いできます?」

 ジャド:「僕には理解できなかったです」


 ルプリレ:「ふふ、私も」


 アルコル:「俺だってそうだ」


 ジーク:「?」


 アリシア:「レイセが暴走したの?」


 ルプリレ:「違うわ」


 アルコル:「アイツは危機察知の勘が鋭い」

 アルコル:「始めはルプリレが危機に気付いていた」

 アルコル:「アイツに意見を言わせるように一芝居した」


 ルプリレ:「大迷宮の様子が、前に潜った時と変わってきている」

 ルプリレ:「難易度がおかしいの」

 ルプリレ:「相談しないでも、レイセは死神に気付いた」


 アルコル:「ルプリレが案をレイセに振ったのに、アイツが俺に振るから、同意見と言った」

 アルコル:「俺には案なんて無かった」


 ルプリレ:「なんで私に話を合わせたの?」


 ぺセシュ:「レイセの勘は鋭い、からか?」


 アルコル:「そうだ、時々推理に理解が追い付かない」


 ぺセシュ:「プロミが六百階層より攻略しているって、気付いていたからな」


 ルプリレ:「私は引率役が不足していると明確に思っていた訳じゃ無いのよ」

 ルプリレ:「でもレイセはそう感じたみたい」


 ジーク:「なんとなく読めてきました」


 アリシア:「私も」


 ルプリレ:「レイセは確信があって、敵の大技が来ると読んでいるのかしら?」


 アルコル:「盾役がアカシックレコードに繋がれなきゃ防げないという予想だからな」


 ジャド:「城門までに、ですよね?」


 ジーク:「そういう説明でした」


 アルコル:「アイツ頭どうかしているぞ」


 ルプリレ:「貴方が言わないでくれます?」


 ぺセシュ:「引率に加わって正解だな」

 ぺセシュ:「面白い」


 ジーク:「僕は嬉しいですが」


 ジャド:「さっきは怒っていませんでした?」


 ジーク:「それは……」


 アリシア:「私はもう大丈夫」


 ジーク:「うん」


 アルコル:「わかったか?」

 アルコル:「帰るぞ」

 アルコル:「レイセのイメージの流し込みがキツイ」


 ジャド:「確かに」


 ジーク:「同感です」


 ルプリレ:「明日は、アスマとロークを呼ぶわ」

 ルプリレ:「遅れないでくださいね」


 ぺセシュ:「了解」


 全員解散しました。




 昨日の一件で、レイセさんへの見方が変わった。


 レイセさんの目線は普通じゃない。


 同じところを見ているようで、そうじゃ無い。


 レイセさんには別の物が見えている。


 僕が言う事じゃ無いが。


 それがわかった。


 僕よりも多くの選択肢を持っているのか?


 たぶんそうだろう。


 そしてその事に本人は無自覚だ。


 他人も同じように感じると思っている。


 話を合わせるしか無さそうだ。


 ジークさんはどうするつもりだろうか?


 二人は仲が良い。


 もしかしたら、その指摘をするかも。


 でも、指摘されたところで、本人にもどうしようもないだろ。


 それよりも、レイセさんのひらめきを伸ばした方がいいのでは?


 ルプリレさんはどう判断するだろう?


 執務室に着いてしまった。


 執務室に九人か。


 少し狭いかも。


 まー、席はある。


 広いからね。


 僕が一番に着いたらしい。


 ガラに無く、緊張している。


 みんなが会話している所に、後から入るのは避けたい。


 そんな気分だった。


 ソファーに座る。


 僕の次に来たのはぺセシュさん。


 彼女は機嫌が良さそうだ。


 緊張してなさそう。


 楽しみで早く来た感じがする。


 彼女は僕の隣に座った。


 会話してみるか。


 ジャド:「おはようございます」


 ぺセシュ:「おう、おはよう」


 ジャド:「機嫌良さそうですね」


 ぺセシュ:「まーな」

 ぺセシュ:「お前は、陰気臭いぞ」


 ジャド:「失礼な」


 ぺセシュ:「理由は?」

 ぺセシュ:「なんかあんのか?」


 ジャド:「しいて言うなら、少し緊張しています」


 ぺセシュ:「レイセにか?」

 ぺセシュ:「確かに昨日のあれは異常だったかもな」


 ぺセシュはじっとこっちを見た。

 目が合う。


 ジャド:「何です?」

 ジャド:「その目は?」


 ぺセシュ:「異常なのは、レイセだけじゃない、だろ?」


 お前もだろ?


 って?


 そうかもね。


 ぺセシュ:「アルコルもおかしいしなー」

 ぺセシュ:「ルプリレもあんな感じだし」

 ぺセシュ:「ジークも真理への到達者だろー」

 ぺセシュ:「まともなのは、私とアリシアか」


 貴方もおかしいでしょ。


 全属性の魔法を使えても即時回復魔法は使えない。


 特別な神獣じゃないと無理だ。


 彼女は特殊な神獣に選ばれている。


 普通か?


 ぺセシュ:「あ、そうだ、聞いてくれ」

 ぺセシュ:「昨日、あのあとレイセ達の豪邸でルプリレがな……」


 ルプリレ:「貴方、何を話す気?」


 ぺセシュ:「お、来たのか」


 レイセ:「おはよう」


 ジャド:「おはようございます」


 ルプリレ:「余計な事言わないでくださいね」


 ぺセシュ:「普段、ルプリレは何を目で追ってると思う?」


 ルプリレ:「ぺセシュ!」


 ぺセシュ:「うへー」


 レイセ:「なんの話だ?」


 ルプリレ:「何でも無いの」


 レイセ:「?」


 はー。


 今のでわかった。


 ルプリレさんがレイセさんを目で追ってるって話でしょ?


 今更だなー。


 何が言いたかったんだろ?


 レイセさんがソファーに座る。


 ルプリレさんがその隣に座る。


 レイセさんは目の前に座っているぺセシュさんに話し掛けた。


 レイセ:「昨日は泊まらなくて良かったのか?」


 ぺセシュ:「一人で寝たい気分だった」


 レイセ:「はー?」

 レイセ:「そんな誘いじゃ無いわ」

 レイセ:「言い方が悪かったか?」

 レイセ:「俺達の家でって事だ」


 ぺセシュ:「なんだ違うのか」


 絶対わかっていて言ってるな。


 この会話中、ルプリレさんは横に座るレイセさんを見ていた。


 レイセさんの横顔を見てニヤけていた。


 レイセさんがルプリレさんに話かけそうだ。


 ルプリレさんは先に前を向く。


 真面目な顔だ。


 レイセさんがルプリレさんの方を向いた。


 レイセさんはルプリレさんの横顔を見ている。


 ああ、さっきの目で追っているって話はこれか。


 レイセさんは見られている事に気付いて無いのか。


 今までずっと?


 はは。


 緊張が和らいだ。


 今日の打ち合わせも長くなりそうだ。



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