22話 死神

 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 ロミール:『創聖』のリーダー。

 ぺセシュ:『創聖』のヒーラー。

      ロミールの双子の妹。

      戦闘の指揮を行う。




(レイセ視点です。)


 三百八十階層の攻略は終了した。


 今回はここで一旦引き返す。


 だがその前に休憩になった。


 食事を採って、仮眠してから帰還する。


 バーベキューの用意をしていた。


 なにか、おかしい。


 具体的に何とは言えないが、何かおかしい。


 どうなっている?


 俺は、俺の気持ちは、臨戦態勢のままだった。


 気が付くと、索敵範囲内に敵はいないかと探していた。


 おかしい。


 いつもなら、階層主を倒した後はリラックス出来ていた。


 ジャドは勘が良い。


 ジャドの様子を見る。


 おかしい。


 いつも通りに見える。


 俺の勘が狂ったか?


 気のせいなのか?


 三百六十一階層から戦闘に参加しなかった。


 その所為で鬱憤が溜まっているのか?


 俺は、何を信じたらいい?


 バーベキューの用意をしていた俺の手は、完全に止まっていた。


 俺の手が止まったのを見て、ルプリレが声を掛ける。


 ルプリレ:「レイセ、どうかした?」


 レイセ:「この階層、これで終わりか?」


 ルプリレ:「え?」


 レイセ:「まだ何か有りそうな気がしてならない」


 ルプリレ:「…………」


 レイセ:「なにかおかしい」


 ルプリレ:「みんな!」

 ルプリレ:「撤収よ!!」


 アルコル:「どうした!?」


 ルプリレ:「レイセが何か感じたらしいです」

 ルプリレ:「今からこの階層を引き上げます!」


 ジャド:「本当だ」

 ジャド:「精霊の反応がおかしい」


 ロメイン:「確かに」


 その気配は突然現れた。


 気が付くと、俺達の中央に出現していた。


 唾広の帽子を被り背中に大鎌を背負った、二丁拳銃の仮面の男。


 服装はロングコートだ。


 いきなり撃ってきやがった。


 パン、パン。


 乾いた音が周囲に鳴り響く。


 敵はルプリレを狙いやがった。


 ジャドが盾に武器化し、俺が装備して防いだ。


 銃の威力が高そうだ。


 部分融合では防げそうにない。


 強敵だ。


 魔物の王に匹敵する。


 気配で解る。


 馬鹿デカい気配。


 こんなに気配のデカい敵には出会った事が無い。


 魔物の王でも、気配はもっと控えめだったぞ。


 皆は余りの事態に硬直してしまっている。


 レイセ:「なにやってる!?」

 レイセ:「上の階層に逃げろ、瞬間移動で転送装置まで移動しろ!」

 レイセ:「俺達が時間を稼ぐ」

 レイセ:「急げ!!」


 ぺセシュ:「わかった」

 ぺセシュ:「死ぬなよ」


 残ったのは、俺、ルプリレ、アルコル、ジャド。


 ジャドは盾のままだ。


 他は瞬間移動して、三百八十階層と三百七十九階層の間の祠に向かった。


 ルプリレに向かって連続で発砲して来やがる。


 俺はジャドで出来た盾で防御。


 アルコルは銃弾を斬撃で相殺している。


 凄まじい連射。


 銃弾に弾切れはないのか?


 アルコルでも相殺し切れず、俺の所まで銃弾が飛んでくる。


 強すぎる。


 どうなっている?


 どうすればいい?


 ルプリレが狙われている?


 なぜだ?


 どういう事だ?


 ルプリレ:「勝てそうに無いわね」


 アルコル:「確かに強敵だ」

 アルコル:「俺には無理かもな」


 ルプリレ:「含みが有るわね」

 ルプリレ:「何ですか?」

 ルプリレ:「言ってみてください」


 アルコル:「レイセなら、なんとかしそうだ」


 え?


 なんて?


 耳がおかしくなったか?


 もしかして、今、俺の名前出たか?


 え?


 なんで?


 嘘だろ。


 勘弁してくれ。


 俺は完全に逃げる気だったぞ。


 ルプリレ:「レイセ、聞いてた?」


 レイセ:「ああ、まあな」


 ルプリレ:「たぶんこの敵は瞬間移動出来るわ」


 レイセ:「そうだな」


 ルプリレ:「階層を移動しても追ってきそう」


 レイセ:「そんな気もするな」


 ルプリレ:「貴方が倒さないと、私は死ぬかもね」


 なるほど。


 そうか、じゃー、やるしか無いな。


 命を捨てるつもりで本気出すか。


 なんせ、ルプリレの命が掛かっている。


 手加減は、無しだ。


 本気でぶん回すと、俺は壊れてしまうかもな。


 どうでもいいか。


 俺は神獣と融合し、力の融合も行った。


 アカシックレコードにも繋がった。


 見ていろ、本気でぶん回す。


 今まで本気でぶん回せなかった。


 と、今気付いた。


 今回は本気だ。


 逃げられない理由が出来てしまった。


 例え俺が壊れようとも、ルプリレは守る。


 ルプリレが剣になった。


 俺はそれを装備する。


 大丈夫、ルプリレは折れないだろ。


 俺の本気に、ルプリレが耐えられなければ、ルプリレが死ぬ。


 耐えてくれ。


 レイセ:「ルプリレ、本気出すぞ」


 返事は返って来ない。


 言ってみただけだ。


 武器に成ったルプリレから情報が流れて来る。


 敵は、魔物の王から差し向けられた。


 大迷宮の一定階層に長く居続けると出るらしい。


 名前は、死神。


 ルプリレはこの情報を何処から仕入れたんだ?


 まあ、いい。


 死神は連射して来た。


 俺はそれをカタナで撃ち返した。


 全部だ。


 自然と体が動いた。


 アカシックレコードからの力を全部出し惜しみなく使えば、追いつく。


 俺はルプリレで出来た片手剣を振り下ろす。


 死神は大鎌で受けた。


 死神は衝撃で数メートル吹き飛ぶ。


 俺は一歩踏み込む。


 死神に追いついた。


 死神は連続で発砲。


 全てをジャドで出来た盾で防ぐ。


 盾で防ぐのは余裕だ。


 俺はルプリレで出来た片手剣を右下から、斜め上に振り上げた。


 死神は大鎌で防御した。


 死神は吹き飛ぶ。


 アルコルは動かない。


 介入してこない。


 関係ない。


 俺は本気を出した。


 こうなるとは思わなかった。


 何にも遠慮していない。


 この感覚は初めてだ。


 こいつ、弱いな。


 心の端で、そう思った。


 俺に足りなかったのは、いつだって本気でぶん回す覚悟だ。


 今の時点でそれがわかった。


 次の攻撃で終わる。


 『ルック ビヨンド ビクトリー(戦いは終わった)』


 俺は右から左に剣を振った。


 アカシックレコードから引き出した力を全て注ぎ込んだ。


 外に噴き出す事は無い。


 凝縮された振り。


 死神の防御を切り裂いて、致命傷に到達した。


 死神は消滅した。


 勝った。


 文句ないだろう?


 ルプリレがアカシックレコードからの出力に耐えた。


 それが重要だ。


 俺は遠慮しなかった。


 加減できなかった。


 本当に無事なんだろうな?


 レイセ:「ルプリレ、無事か?」


 ルプリレ:「無事よ」


 レイセ:「それなら良かった」


 ルプリレ:「貴方、私が折れたらどうするつもりな訳?」


 レイセ:「え?」


 ルプリレ:「え?」

 ルプリレ:「じゃない」


 レイセ:「お前は大丈夫な気がしたんだ」


 ルプリレ:「勘?」


 レイセ:「まあ、な」


 ルプリレ:「不確かな勘で死にそうになったんですけど?」


 レイセ:「ごめん、どうすれば良かった?」


 ルプリレ:「自分で考えてください」


 全てはお前の為だ、許容しろ。


 これから、ルプリレを本気でぶん回せる。


 俺の体も持つらしい。


 チームにとってはそれが有益な情報だろう。


 他の事はどうでも良い。


 勝ったんだから良いだろ。


 ジャド:「勝った?」

 ジャド:「ホントに?」


 アルコル:「ああ、そうらしい」

 アルコル:「ふざけた奴だ」

 アルコル:「俺にも訳が解らん」

 アルコル:「どう考えても勝てる相手じゃ無かった」

 アルコル:「流れを無視している」

 アルコル:「レイセ、解説しろ」


 レイセ:「?」


 アルコル:「なんでお前が不思議そうなんだよ」


 ジャド:「そうです、おかしいのはレイセさんです」


 レイセ:「お前らな、アカシックレコードから力を引き出しているんだぞ」

 レイセ:「勝ったことよりも、俺の心配をしろよ」


 アルコル:「なるほど」

 アルコル:「確かに」

 アルコル:「体のどこかに不調は感じられるか」


 レイセ:「感じられない」


 アルコル:「だと思った」

 アルコル:「不毛な会話させるな」


 レイセ:「理不尽だ」


 ジャド:「理不尽なのは貴方の存在です」


 レイセ:「ええ?!」


 ジャド:「俺の方が怒られる流れ?」


 ルプリレ:「当り前でしょ」


 レイセ:「なんで?」


 ジャド:「今回は、命からがら逃げる流れでしたよ?」


 ルプリレ:「そうね」


 アルコル:「まあ、そうだな」


 レイセ:「嘘付け、あいつ、実は弱かったぞ」


 ルプリレ:「もう!」

 ルプリレ:「ほんと!」

 ルプリレ:「もう!!」

 ルプリレ:「私は詰んだと思ったわ」


 アルコル:「ああ、俺も半信半疑でレイセに振ったぞ」

 アルコル:「それしか手が無いからな」


 ジャド:「弱かった、ってのが感想なんですか?」


 レイセ:「え?」

 レイセ:「まあ」


 ジャド:「あの気配で弱い訳無いでしょ」

 ジャド:「なに言ってるんです」


 はーあ。


 頑張っても怒られるのかよ。


 辛いなー。


 まー。


 ルプリレが無事で良かったな。


 次の攻略も頑張ろう。


 後は知らん、知らん。



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