21話 ヒーラー3



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 ロミール:『創聖』のリーダー。

 ぺセシュ:『創聖』のヒーラー。

      ロミールの双子の妹。

      戦闘の指揮を行う。






(ぺセシュ視点です。)


 三百六十一階層から全体指揮をとっている。


 ずっと集団戦だ。


 現在三百八十階層。


 今回の攻略の最終階層だ。


 この階層には階層主がいる筈だが、まだその気配は無い。


 レイセとアルコルは話し掛けて来ない。


 ビビりやがったか?


 嘘だ。


 そんな器じゃない。


 見ただけで解るんだろう。


 そんな気がする。


 今日であっさり超えられそうだ。


 ふ。


 良く見とけよ。


 集団戦はこうやるんだよ。


 敵は相変わらずオークばかりだ。


 オークは強い。


 大迷宮のやつは特にだ。


 しかも今回の攻略では全員統率がなされている。


 今回のフィールドは進むべき道筋がわからなかった。


 なのでアルコルに聞いた。


 この階層に入ってからすぐに戦闘が始まり、目的地がわからなかった。


 アルコルが上方から観察して祠を見つけてくれた。


 目指す方向はわかった。


 敵を押しのけて進むだけだ。




 前にも言ったが、ゲンシュ、ロイド、ドミーの三人に盾役をさせる。


 フレイズとヘッズがゲンシュを盾役にして攻撃。


 ロミルカとモーリンがロイドを盾役にして攻撃。


 ロメインとジャドがドミーを盾役にして攻撃。


 そういう布陣だ。


 ゲンシュが目の前の敵に攻撃。


 オークをメイスで右から左に払う。


 オークはメイスで受けた。


 受けたオークの動作が止まる。


 動作が止まると同時にフレイズが銃で攻撃。


 オークの頭を狙う。


 オークは結界で頭を防御。


 弾丸の速度は減衰し、射線も把握される。


 オークは頭を捻ってかすり傷で済ませやがった。


 右前のオークがゲンシュに攻撃。


 右前のオークが持っていた片手剣を上から下に振り下ろした。


 同じタイミングでゲンシュの左前のオークが短槍で突いてきた。


 ゲンシュは片手剣の攻撃を盾で受けた。


 メイスを戻すのが間に合わない。


 短槍の攻撃は結界で防ぐ。


 結界を五つ展開するが、威力が減衰しただけだ。


 短槍はゲンシュの右脇腹に刺さった。


 ゲンシュが左によろめく。


 フレイズとヘッズが銃で応戦。


 連続発砲。


 右前と左前のオークが死ぬ。


 だが前に一体いる所為で進めない。


 ヤバいな。


 戦線が崩れる。


 ぺセシュ:「ダメだ、ゲンシュ!」

 ぺセシュ:「あと一秒で回復を飛ばす」

 ぺセシュ:「右に三歩だ」

 ぺセシュ:「踏みとどまれ!」


 ゲンシュ:「やってやるよ、ちくしょう!」


 ぺセシュ:「でかい声出してんじゃねえ!」

 ぺセシュ:「黙ってやれ、バカ」


 ゲンシュ:「バカは余計だろ、バカ!」


 ロイド:「バカ、バカうるせえ!」

 ロイド:「ゲンシュは余裕無いだろ、俺は?」


 ぺセシュ:「ゲンシュは戻る、お前はその位置をキープしろ」


 ロイド:「ゲンシュしっかりやれ、バカ!」


 ゲンシュ:「だからうるせえんだよ!」

 ゲンシュ:「生意気に気なんか使ってんじゃねえ」


 ドミー:「うるせえ!」

 ドミー:「お前ら俺を助けろ」


 ぺセシュ:「まて、ドミー、お前はもっと耐えろ」



 ゲンシュは目の前のオークに大剣で上から下へ。


 オークの結界を突き破り、致命傷を与える。


 ゲンシュは左足でオークの死体を蹴って前へ。


 回復魔法が準備出来た。


 ゲンシュに飛ばす。


 ゲンシュの右脇腹が回復する。


 回復魔法を準備するには溜めがいる。


 即時に魔法を飛ばせない。


 今回も前もって用意していたが、間に合わなかった。


 一秒はデカかった筈だ。


 良くやってくれた。


 恐らく、次はドミーがダメージを負う。


 間に合うか?


 急いで準備する。


 間に合え!


 ロメインとジャドが発砲。


 ドミーの前の敵を牽制する。


 あくまでも牽制にしかならない。


 オークは銃弾を防御できる。


 しかし、その間手が止まる。


 その隙に盾役が押し込んで、更なる隙を作るのだ。


 ドミーが目の前の敵に片手剣を上から下へ。


 目の前のオークが盾で防御。


 銃での狙撃で体制が崩れている。


 オークはしっかりと防げず、一歩後退する。


 ドミーは右前のオークに攻撃。


 片手剣を振り下ろす。


 右前のオークは盾で片手剣を防いだ。


 右前のオークの動作が止まる。


 その隙に、ジャドが銃で右前のオークを狙撃。


 ジャドの反応が速い。


 オークの結界は間に合わない。


 オークは頭にダメージを受けた。


 かに見えた。


 右前のオークは回復した。


 オークに回復魔法が飛んで来た。


 敵の中央に重圧を感じる。


 出た。


 階層主だ。


 恐らく階層主はヒーラー。


 しかも私より回復の溜めが少ない?


 こうなった場合、どうする?


 どんな手がある?


 落ち着け。


 冷静に。


 事実だけを考える。


 敵にヒーラーがいて、私より手練れなら、どうなる?


 恐らく、前線が移動しない。


 こっちが押し負けて下がる事になる。


 進めない。


 敵の前線が回復するからだ。


 敵の前線を抜けない。


 取るべき手段は?


 敵の回復が追い付かない程の攻撃を繰り出す事。


 敵のヒーラーを直接仕留める事。


 この二つだ。


 どうする?


 攻め手は二つある。


 どちらが有効だ?


 敵ヒーラーの回復能力は、私より上だ。


 ダメージに対する反応が速い。


 それは解った。


 なら、防御力は?


 その考えに行きついた瞬間、発砲。


 ジャドだ。


 ジャドが、敵ヒーラーに発砲。


 敵ヒーラーは、結界で防御した。


 結界五枚を展開し、二枚が砕けた。


 むう?


 どう判断する?


 私はヒーラーだ。


 手ごたえがイマイチわからない。


 冷静に考えろ、私。


 敵は私を狙って来なかった。


 三百六十一階層からそうだ。


 よほどの事が無ければ、私は死なない。


 敵にはそう思われている。


 ロミールがいるしな。


 敵にロミールの様な防御に専念している要員はいない。


 迂闊だろ。


 狙う。


 そう思った。



 ルプリレ:「その答えに辿り着けば十分でしょ」


 ルプリレは敵ヒーラーの目の前に跳躍。


 敵は誰一人として反応出来なかった。


 敵にも味方にも、跳躍でヒーラーに近づくという可能性が欠落していた。


 気付いていたのは、ルプリレだけだ。


 ルプリレは武器を生成しなかった。


 ヒーラーにボディーブロー。


 オークヒーラーは結界を展開したが意味を成さなかった。


 オークヒーラーの上半身が吹き飛んだ。


 拳に魔法を付与していたらしい。


 凄まじい威力だ。


 勝負は決した。


 味方の攻撃役たちが速やかに敵を殺していく。


 私は指揮役として良い所を見せようと頑張ったが、どうやら引き立て役だったらしい。


 全てはルプリレの手のひらの上。


 なるほど。


 そう言う事か。


 私は自分が頂点だと思っているからな。


 更に上がいると思う事は、稀だ。


 思い知らされた。


 彼女が上だ。


 ぺセシュ:「満足したかい?」


 ルプリレ:「ええ」

 ルプリレ:「貴方はどうなの?」


 ぺセシュ:「私も満足した」


 ルプリレ:「しっかりやってね」


 ぺセシュ:「そうだな」


 アルコルとレイセが上空から降りて来た。


 レイセ:「魔物の王の城に攻める時の指揮役はどうするんだ?」


 私はルプリレを見た。


 彼女が決めるべきだ。


 ルプリレ:「基本的に全体の指揮はぺセシュね」

 ルプリレ:「私は前線で、レイセとアルコルの護衛かな」


 なるほど。


 あくまでも二人を温存する、か。


 路線変更?


 アルコルとレイセに指揮をさせないのか。


 わかった。


 完全に私の試験だったか。


 どうやら、お眼鏡に適った様だ。


 ぺセシュ:「そりゃ、光栄だな」


 ルプリレ:「話が早くて助かるわ」

 ルプリレ:「当日は、ジャドも『マギ』を離れてついて来てね?」


 ジャド:「了解です」


 なるほど。


 確かに。


 ジャドの行動は的確だった。


 柔軟な対応が期待できる。


 論理的だ。


 私の様にね。


 ルプリレ:「全体の指揮をぺセシュに任せるのは、城の前までよ」

 ルプリレ:「中に入ってからは、私がなるべく指示を出す」

 ルプリレ:「それでいいですか?」


 アルコル:「承知した」


 レイセ:「わかった」


 ジャド:「わかりました」


 ぺセシュ:「了解だぜ」


 そうか。


 私を上回るか。


 楽しくなってきた。


 仲良くしたい。


 ぺセシュ:「今回の攻略で帰る前にいったんここ食事でしないか?」


 ルプリレ:「いいけど、長いのはダメよ?」


 ぺセシュ:「なにかあるのか?」


 ルプリレ:「嫌な予感がするだけよ」


 私はグイグイ押していくぞ。


 仲良くなるのだ。


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