18話 魔銃3



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 ロミール:『創聖』のリーダー。




(アルコルが見聞きした情報をレイセが読み取っています。視点はレイセ。)


 アルコルは階段を下っている。


 アルコル:「どういう敵が出て来るか予想する」


 目的地までまだまだかかりそうだ。


 そういう工夫も必要だろう。


 訳のわからない攻撃で不意を突かれたら、死ぬ。


 アルコル:「遠距離特化型の敵は考えにくい」

 アルコル:「お前は知らないかもしれないが、以前にそれをやられた」

 アルコル:「俺には有効だが、今回は無い」

 アルコル:「洞窟の中だしな」

 アルコル:「『能力』で嵌めてくるか、中距離近距離の手数で俺を上回るか、どっちかだ」

 アルコル:「両方って可能性もある」

 アルコル:「『能力』で一番厄介なのはどういう『能力』だ?」

 アルコル:「『能力』で嵌められるなら、そこが問題になるだろう」

 アルコル:「扉が見えた」

 アルコル:「時間切れだ」


 クッ。


 予想する前に時間が来てしまった。


 きっとアルコルは何かの結論に達している。


 思考勝負で負けている。


 まあいい。


 俺はこいつの思考を読み取り、成長する。


 何も問題ない。


 俺はここからだ。


 管理者を殺したい思考も同時に読み取っている。


 俺はいらない感情を排除できている。


 なんども言うが、何も問題ない。


 扉が開く。


 広間だ。


 何も無い空間が、広がっている。


 中央に人影が見えた。


 アルコルはスライドを辞めた。


 ヤギの頭に上半身が裸、下半身は蓑。


 胡坐をかいて宙に浮いている。


 右手にはランタン。


 左手に大剣。


 目を閉じて、瞑想状態。


 静かだ。


 アルコルは瞬間移動で、悪魔の真後ろに出た。


 出たと認識した瞬間、悪魔は瞬間移動。


 アルコルと悪魔の位置が入れ替わる。


 どうやら、悪魔は距離を取りたいらしい。


 悪魔は右手に持ったランタンを上に。


 手に持ったランタンの周囲に四つのランタンが浮かぶ。


 増えたランタンからレーザービームの様な筋が発射される。


 攻撃だ。


 レーザーはアルコルを追いかけて来る。


 アルコルはスライドで後退。


 反射板で反射しようとするが、完全には無理だった。


 反射板が粉砕される。


 角度を変えて弾くのが精一杯だ。


 悪魔はまた右腕のランタンを掲げる。


 宙に浮くランタンが増える。


 アルコルは銃でランタンを攻撃した。


 ランタンは割れて、地面に落ちた。


 斬撃で撃ち落とそうとする。


 斬撃はランタンを透過。


 ランタンは落ちない。


 ランタンのガラスの部分を一撃で貫かなければ、落ちないらしい。


 ランランの数が増えると、反射板での防御に限界が来る。


 銃でランタンを撃ち落とすしかない。


 今の所、後手後手だ。


 アルコルは舌打ちした。


 アルコルの行動に迷いは無い。


 ただ、いつもより精彩さが無い。


 サテライトが使えないのが効いている筈だ。


 視点が両目しかない。


 気配読みも封じられている。


 敵とランタンの全てを視界に入れないと捌く事が出来ない。


 自然と後退する事になる。


 中距離攻撃しかしてこないが、警戒を解けない。


 あいつは左手に大剣を持っている。


 瞬間移動出来る。


 ランタンで気を逸らして、近距離攻撃が考えられる。


 来るならそろそろ来る筈だ。


 アルコルは銃の狙いを外さない。


 ランタンは増えない。


 悪魔は諦めて次の行動に出て来る。


 気が付くと目の前に悪魔が。


 悪魔が瞬間移動したんじゃない。


 アルコルが焦れて瞬間移動したらしい。


 アルコルは右手のカタナで上から下に振り下ろす。


 悪魔は左の大剣で受ける。


 カタナの攻撃は、大剣を切り裂かない。


『能力』が通用しないらしい。


 しっかりと防がれている。


 その間もランタンからレーザーが照射され、反射板で逸らしている。


 アルコルは空いた左手の銃を地面に向けて発射。


 反射板で反射して、悪魔の頭に。


 銃弾は悪魔の頭を打ち貫いた。


 悪魔の反応は無い。


 効いていない。


 反応がおかしい。


 ただ単に攻撃が通じないだけか?


 銃では存在感にダメージを与えられない可能性もある。


 アルコルも気付いている様だ。


 悪魔が大剣で斬りかかって来た。


 カタナで受ける。


 大剣はカタナを透過して来る。


 普通なら躱せない。


 だが予想出来ていた。


 アルコルは攻撃が当たる直前に後ろに瞬間移動。


 悪魔はこちらが気付いた事に気付いたらしい。


 どんどん後退する。


 ランタンを次々と生みだす。


 銃で攻撃すると、結界で防いで来る様になった。


 悪魔が左手の大剣を振るうと、斬撃が飛んでくる。


 アルコルの斬撃とそっくりだ。


 アルコルもカタナを振るって相殺する。


 後は手数の勝負だ。


 数時間続いた。


 そろそろ約束の三時間になる。


 アルコルの手数が勝り、悪魔は劣勢だ。


 全てのランタンを粉砕し、残るは悪魔が右手に持った一つだけ。


 アルコルは銃の威力を限界まで高める気らしい。


 銃で弾を撃ち出すときの爆発を、理魔法で操作して前に逃がす。


 一瞬堰き止めてから前に逃がすと、爆発力が増す。


 銃身の耐久度以上の弾が銃から発射される。


 悪魔は結界を数十展開。


 銃弾は結界を貫き、悪魔の右手のランタンが割れる。


 銃は銃身が潰れてしまった。


 ランタンが割れたと同時に、悪魔が消える。


 そう、ランタンが本体だ。


 全てはランタンが映し出していた。


 アルコルの戦闘は終わった。


 今のが階層主だ。


 後はアルコルがスライドで戻る映像だけだ。



 アルコル:「参考になったか?」



 レイセ:「まあまあかな」

 レイセ:「参考にならない部分も多いぞ」


 今回は話に関係しなかったが、ランプで終焉がずっと見えていた。


 俺に情報の取捨選択をさせるんなら、ランプの情報はいらないか?


 ルプリレ:「最初は私です」


 情報の流し込みか?


 あれ?


 休憩は?


 もうその話?


 良いけどさ。


 ルプリレ:「取捨選択はきっと無意識だわ」

 ルプリレ:「貴方の感じた全てを送って」


 レイセ:「そうか、助かる」


 俺はルプリレを信用している。


 言われたまま、全てを送った。


 ルプリレ:「なるほど」


 ルプリレは掌にコインを二枚創り出した。


 ルプリレ:「アルコル、今からコインを投げる、撃って見て」


 返事を待たずに、ルプリレはコインを投げた。


 アルコルは銃でコインを撃ち抜いた。


 ルプリレ:「レイセ、やって」


 ルプリレはコインを投げた。


 え?


 俺もやるの?


 銃は理魔法で空間の中だぞ。


 俺は空間から銃を取り出して、コインを撃った。


 銃弾はコインを貫いた。


 ルプリレ:「まあまあね」


 嘘付け。


 上出来だろ。


 アルコルはサイトに合わせて数回撃つと、後は照準しなくても自分の腕の位置で狙いがわかるらしい。


 俺も出来る様になった。


 試してやるか。


 俺は何も言わず、コインを空中に投げた。


 ルプリレは、コインを撃ち抜いた。


 ぺセシュ:「私も情報の流し込みを頼む」


 ぺセシュは『創聖』の作戦立案者だ。


 チームをまとめるのは、リーダーのロミール。


 戦闘を指揮するのは、ぺセシュ。


 ロミールとぺセシュは双子の姉妹だ。


 二人が仕切るから、双生。


 今回の合同訓練では、『マギ』と『創聖』の二つをぺセシュが指揮する。


 魔銃の運用が根本的に変わる一大事だ。


 ルプリレが最初に声を掛けた時も我慢していたのだろう。


 そういう性格だ。


 俺はぺセシュに情報を流し込んだ。


 ぺセシュは目を見開いている。


 ぺセシュ:「マジでか?」

 ぺセシュ:「『マギ』なら、理魔法の練度が違う」

 ぺセシュ:「銃の威力を上げても問題ないだろ」

 ぺセシュ:「おもしれーな」

 ぺセシュ:「私も攻撃に参加出来るかもな」


 ぺセシュは、口は一見攻撃的だが、ヒーラーだ。


 ルプリレは万能型で同じ事が出来るが、彼女は特化型だった。


 ぺセシュが戦闘に参加出来る、自衛出来るとなると、状況は大きく変わる。


 その後、俺は今回の合同訓練に参加している全員にイメージを流し込んだ。


 気分が悪く成った奴はいない。


 取捨選択は出来た様だ。


 ここからの階層の攻略が楽になりそうだ。


 俺も成長できた。


 アルコルは気前が良い。


 将来的にこいつを超える事が出来るのか?


 俺の胸中は複雑だ。


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