17話 魔銃2



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 ロミール:『創聖』のリーダー。




(アルコルが見聞きした情報をレイセが読み取っています。視点はレイセ。)




 中に入った途端、アルコルの視界が全部真っ黒になる。


 一拍後、視界が復活した。


 両目に使っているサテライトの分だけだ。


 上空からの俯瞰は無い。


 視界には通路が映っている。


 洞窟の中だ。


 上空からの俯瞰は不可能なのか?


 同時に、気配読みの感覚が無い。


 アルコル:「サテライトが二つしか使えない」

 アルコル:「気配読みも妨害されている」

 アルコル:「見えるか?」

 アルコル:「通路に隠れる場所が無い」

 アルコル:「一方通行だ」

 アルコル:「通路の向こう側にはおそらく敵がいる」

 アルコル:「進むと遠距離攻撃を受ける」

 アルコル:「一気に突破する」


 アルコルは通路の向こう側に向かって斬撃を繰り出す。


 複数の斬撃を盾に、一気に高速移動するつもりらしい。


 スライドによる高速移動で、視界がブレる。


 コボルト二体が左右から顔を出した。


 通路の向こう側には、通路より広い空間があるのだろう。


 そこから顔を出した。


 土魔法で石の塊を飛ばして来た。


 斬撃を避けて、連続で石の塊が飛んでくる。


 アルコルはカタナで切り捨てる。


 通路の出口までまだ距離がある。


 だがアルコルは複数発砲。


 銃弾は明後日の方向に。


 違う。


 リフレクトを使うらしい。


 コボルトの顔の横にリフレクトが出現。


 アルコルが撃った弾丸が反射。


 コボルトの頭を吹き飛ばした。


 二体共だ。


 お前。


 横着かますな。


 その『能力』は参考にならないぞ。


 アルコルは移動しながら、マガジンを交換。


 弾を使い切る前に交換したいらしい。


 使用後のマガジンは、理魔法を使って空間に収納した。


 魔銃のマガジンは十五発だ。


 装填されている分と合わせると、弾は十六発だ。


 魔銃を製作するのにシロさんの協力があった。


 弾数には注意しろと言われている。


 まだ通路の向こう側に出ていない。


 また二体顔を出した。


 さっきより大きな石が飛んでくる。


 石というより岩だ。


 岩で視界が塞がる。


 アルコルが飛んで来た岩を切り捨てると、コボルトが接近して来ていた。


 二体来ている。


 中々に素早い。


 アルコルは舌打ち。


 左側のコボルトが斧を左から右へ。


 右側のコボルトが双剣で左右から同時攻撃。


 手数が足りない。


 どうする?


 アルコルはスライドで進行方向と逆に、真後ろに移動。


 攻撃を回避。


 姿勢を変えずに移動出来る。


 便利すぎるだろ。


 左手の魔銃で左側のコボルトを二発。


 右手のカタナで右側のコボルトの両腕を切断。


 通路の向こう側から矢が飛んでくる。


 アルコルはスライドで半円に移動して躱す。


 左手の銃で狙撃。


 今度は相手を見ていない。


 サイトで狙わずに射撃。


 通路の影のコボルトの頭が撃ち抜かれる。


 どうやって狙った?


 だから参考にならないんだよ。


 アルコルは右側のコボルトの頭をカタナで切り離した。


 死体を避けて移動。


 通路の向こう側に出た。


 広場になっている?


 階段が見える。


 登り階段と、下り階段。


 通路を抜けた瞬間、上から扉が降りて来る。


 閉じ込められた。


 アルコルが前を向くと、階段からぞろぞろとコボルトが出てきた。


 アルコルは、登り階段の先頭一体と下り階段の先頭一体に発砲。


 コボルトは銃弾を盾で防御。


 コボルトたちは階段から広場の中に入って来る。


 十二体だ。


 十二体入って来た。


 アルコルは盾に向かって斬撃を飛ばす。


 キシで出来たカタナだ。


 威力が高い。


 コボルトを盾ごと切り捨てる。


 二体倒した。


 今、左右に三体ずつ。


 前に二体、その後ろに二体いる。


 背中に回りこまれたら一気に形勢が決まる。


 後ろを取らせないように警戒する。


 左右の敵から倒したい筈だ。


 後ろの二体が矢を放つ。


 前方後列の装備は弓だ。


 アルコルは矢を、わかっていた様に躱す。


 いつものサテライトを使った回避じゃない。


 コボルトの動きが読めているらしい。


 以前のアルコルより読みの鋭さが増している。


 カタナの特性、”嫉妬”だ。


 キシが武器化して出来たカタナを装備すると、七つの大罪とキシの具現化能力が引き継がれる。


 アルコルは前二体に向かって連続で斬撃を放つ。


 防御不可の斬撃は前二体の盾を透過して致命傷を与える。


 前方後列の二体は、なんとか斬撃を躱した。


 躱されて飛んで行った斬撃をリフレクトで反射。


 倍速になって、左右三体ずつのコボルトに命中。


 一瞬で八体倒しやがった。


 その間に魔銃の威力をチャージ。


 威力とスピードが増した銃弾が、前方後列だった一体に命中。


 頭が吹き飛ぶ。


 残った一体が逃げようとするが、後ろから斬撃を浴びせて、殺した。



 下へ降りる階段へ。


 アルコルは迷わない。


 スライドは使っていない。


 歩きだ。


 歩きながらマガジンを交換した。


 どういう思考で下を選んだんだ?


 アルコル:「この感じだと、階層主がいる」

 アルコル:「雑魚などいくら出て来ても意味が無い」

 アルコル:「そろそろ歯ごたえのあるやつが出て来る」

 アルコル:「広い場所が必要だ」

 アルコル:「上だと、洞窟から出る事になる」

 アルコル:「『能力』の妨害を続けたい筈だ」

 アルコル:「ならば進路は下だ」

 アルコル:「おそらく下に進んだ先で広い空間に出る」


 解説する為に歩いて移動している様だ。


 スライドを使ってしまうと、移動に時間が掛らない為、解説する隙間が無くなる。


 それにしても、ずいぶんメタな視点で物を考えてやがるな。


 まあ。


 違和感は無い。


 そうなんだよ。


 何故か、俺達の為にこの迷宮は作られている感じがする。


 シチュエーションは、これから未来に起こる出来事の予行演習だ。


 たぶん。


 つまり、状況には意図がある。


 メタな視点で物を考えたら、答えに近づく。


 そう言う事だろう。


 アルコル:「まだ、挟撃が無い」

 アルコル:「階層主が出てくる前に、一回は裏を抜かれる筈だ」

 アルコル:「そのための『能力』制限だ」

 アルコル:「俺がこの場に立っているのも、意図したものの可能性がある」

 アルコル:「階層主との戦闘はその後だ、解説してやる余裕は無くなる」

 アルコル:「解説できるのは今しかない」

 アルコル:「この思考方法は正解だろう」

 アルコル:「このまま思考する必要を感じる」

 アルコル:「…………」

 アルコル:「俺の裏を確実に取るにはどうする?」


 アルコルは振り返った。


 左手で大剣を受け止める。


 攻撃を仕掛けられていた。


 コボルトは今までのやつより二回り大きい。


 後ろの扉が開いている。


 さっき閉まった扉だ。


 ある筈の無い方向からの攻撃。


 なるほど、確実に裏を取られていた。


 気配読みは使えなかった。


 アルコルは、振り返なければ致命傷だった可能性がある。


 状況に対する読みで危機を察知しやがる。


 こいつ。


 そういう読みは俺の専門だろ。


 こいつより上回っている所が思いつかない。


 味方だと心強いが。


 いずれは俺と一対一で戦うだろう。


 再戦がある。


 どうするんだよ。


 素直に応援できない。


 アルコルに武器を掴まれたら終わりだ。


 アルコルは右手でコボルトの腕を掴む。


 二回り大きかろうが関係ない。


 一瞬で灰になる。



 アルコルはスライドで、下に降りる階段を高速移動している。


 アルコル:「予想通りだ」


 なんか腹立ってきたぞ。


 アルコル:「しばらくは移動が続くだろう」


 だろうな。


 広い場所に出ないといけない。


 地下に広い場所なら、相当潜らないとな。


 そんな事俺にも解るわ。


 アルコル:「解っているとは思うが」


 なら言うな。


 こいつ。


 俺の反応と思考タイミングを読んでいるのか?


 アルコル:「魔銃は便利だ」

 アルコル:「俺の『能力』と相性も良い」

 アルコル:「斬撃だけでも良い気もするが」

 アルコル:「斬撃より隙が少ない」

 アルコル:「斬撃より威力が出るか試したいと前から思っていた」

 アルコル:「魔銃を一つ潰してもいいか?」

 アルコル:「威力を飛躍的に上げるアイデアがある」


 お前?


 何言っている?


 リアルタイムの会話じゃ無いだろ。


 俺が返事できないのわかっているだろ。


 返事の意味無いだろ。


 その銃がいくらすると思っているんだ?


 使い捨てにするなら、量産が済んでから試せよ。


 今実戦に持ってきているのは試作品だぞ。


 はー。


 仕方ないな。


 アルコル:「許可は貰えたみたいだな」


 断れないからそうなる。


 ああ。


 許可する。


 存分にやってくれ。



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