19話 ヒーラー



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 ロミール:『創聖』のリーダー。

 ぺセシュ:『創聖』のヒーラー。

      ロミールの双子の妹。

      戦闘の指揮を行う。




(ぺセシュ視点です)


 アルコルのイメージをレイセから譲り受けた。


 銃器の取り扱い方が解った。


 いままでの銃器へのイメージは塗り替わった。


 私はヒーラー。


 集団を前提とした戦いをする。


 銃器の取り扱いの習熟度は、遠距離攻撃の練度に直結する。


 遠距離攻撃の練度が上がるという事は、集団戦の方法そのものが変わるという事だ。


 特に照準の感覚が一新された。


 全ての魔法は、銃による攻撃に置き換わる。


 戦闘の速度は一段階上がるだろう。


 銃でもチャージ攻撃出来るらしいが、そこは問題じゃない。


 引き金一つで気軽に攻撃出来る事が利点だ。


 魔銃の中で起こす爆発も、魔法をそのまま発揮する時より難易度が低い。


 つまり、集団戦の方法が変わる。


 私は指揮者も兼ねている。


 イメージの流し込みに興味が有ったのはその為だ。


 早く感じて、戦法を練りたい。


 そう思ったのだ。


 今考えている戦法は二つ。


 従来通りのタンクと攻撃役の組み合わせ。


 そして、もう一つが両方を熟す者同士の連携。


 存在感の強い、魔物の王の配下などには銃は通じないかもしれない。


 通じない可能性が高い。


 だが、魔物の王の城に攻め込む際や、単なる牽制には使えるだろう。


 攻撃を銃に頼る場合、タンクの役目は隙を作る事。


 いや、タンクの役目はいつだって隙を作る事か。


 それはいい。


 とにかく、タンクは隙を作る事が役割だ。


 が、攻撃が銃によるものなら、タンクが作る隙は少なくて済む。


 一瞬、一呼吸の隙で、銃撃出来る。


 今までの様に、タンクが隙を作り、攻撃役が攻撃するという戦法も良い。


 だが、少ない隙で良いのなら、ペアを組んで、相互に隙作りと攻撃を入れ替わってもいい。


 作らなければならない隙が少なくて済むなら、盾で防いで耐える必要がないからだ。


 流し込まれたイメージから、どちらも可能なのでは無いかと予想される。


 アルコルの技術は戦術に影響を及ぼす程だった。


 今回の攻略に直結する話だ。


 意見を交換したい。


 今、このタイミングで戦法を決めておかないと戦いで苦労しそうだ。


 これは私の直観だが。


 ぺセシュ:「アルコル、戦法はこのままか?」


 アルコル:「このままだ」

 アルコル:「攻撃役と盾役を分けない方法を取るには練度が足らない」

 アルコル:「但し、練度を上げる為の期間を短縮する手はある」


 ぺセシュ:「へー」

 ぺセシュ:「聞かせてくれよ」


 アルコル:「レイセとルプリレを参考にすればいい」

 アルコル:「二人共、話は解ったか?」


 レイセ:「盾役無しで、相互に隙を作って、銃で撃たせる戦法だろ?」


 アルコル:「そうだ」


 レイセ:「なんとかなりそうだ」


 ルプリレ:「そうね」


 ロミール:「話について行けないんですけど?」


 ジャド:「僕が説明します」


 ジャドは戦法について全員に説明した。


 ロミール:「今回の合同訓練では、盾役を『創聖』が、攻撃役を『マギ』が担当するのが良いと思います」


 アルコル:「そうだな」

 アルコル:「無難だ」

 アルコル:「俺もそう思う」


 フレイズ:「私は、イマイチピンと来ていない」

 フレイズ:「そろそろ実際に試してみたい」


 レイセ:「そうだな」

 レイセ:「この階層の階層主はアルコルが倒したが、長く話しすぎると次が湧くかも」


 ルプリレ:「三百六十一階層に移動しましょう」


 ロメイン:「そうですね」


 ぺセシュ:「面白くなってきたなー」

 ぺセシュ:「オイ!!」


 ゲンシュ:「うるさいですよ」


 ぺセシュ:「致命傷でも私が直してやるから、張り切っていこーぜ」


 ドミー:「ゲンシュ、ぺセシュに意見しても無駄だって」


 ロイド:「なんだかんだ言って、二人共、ぺセシュの言う事聞くだろ」

 ロイド:「ま、俺もだけど」


 ロミール:「貴方達はぺセシュの言いなりだもんね」


 ぺセシュ:「うるせーのはお前らなんだよ」

 ぺセシュ:「手足が文句言うな」


 ロミール:「うへえ、感じ悪う」


 私の思い通りに動く他無い癖に、生意気な。


 しっかり働いて貰うぞ。




(レイセ視点です。)



 今は三百六十五階層の途中だ。


 集団戦になっている。


 さっきぺセシュが話していた内容がモロに当たった。


 相手はオーク。


 武装してやがる。


 有名な怪物どもは強い。


 豚の頭をしているこいつは、腹は出ているが筋力が凄い。


 以前聖国クリアを守るために戦った時の奴等より段違いに強い。


『創聖』と『マギ』には、盾役が必要だ。


 相互に隙を作りながら戦うのは、俺とルプリレだけだ。


 アルコルは反射板で飛び上がって空中で静止。


 上空から俺達の動きを分析する。


 そんなのサテライトでやれよな。


 つまり、戦闘に参加したくないらしい。


 俺は前方のオークに大剣を振り下ろす。


 オークも大剣で受けた。


 オークが大剣を受けたタイミングで、ルプリレが発砲。


 オークの頭を的確に撃ち抜く。


 左のオークが一歩踏み込む。


 狙われているのは、俺だ。


 左のオークの踏み込みに合わせて、ルプリレが片手剣を用意。


 左のオークが右のダガーを右から左へ。


 ルプリレがオークのダガーを片手剣で受ける。


 俺は銃弾をオークの左腕に打ち込む。


 ダメージを受けたオークの頭を、ルプリレが撃ち抜いた。


 俺の右側のオークが俺に体当たりしてきた。


 俺は踏ん張って耐えた。


 力の融合を使う。


 俺の隙に右側のオークの後ろにいたオークが矢を射ってくる。


 俺は矢を一本受けた。


 右腕に激痛が走る。


 矢を射ってきたオークをルプリレが銃で攻撃。


 オークの頭を打ち抜く。


 俺は刺さった矢を引き抜いた。


 離れた場所にいるぺセシュが、俺のダメージを感知し、回復魔法を投げて来る。


 光に包まれ、俺の右腕は回復した。


 俺とルプリレの位置は、俺が前で、ルプリレが左後ろだ。


 俺の左側と前方にまたオークが寄って来る。


 オークは次々と湧いて来る。


 俺は三体以上相手出来ない。


 間合いにそれ以上が入って来ないように立ち回る。


 前方のオークが大剣の振り下ろし。


 ズバッと踏み込んできた。


 俺はそれを盾で受ける。


 左のオークが中距離から槍で突いてきた。


 光る槍。


 槍が伸びて来る。


 俺は上体を逸らして躱した。


 俺が引き付けたのに合わせて、ルプリレが銃でカウンター。


 大剣のオークを銃で打ち貫き、槍のオークの胸を槍で貫いた。


 敵の数が多い。


 こういう場合、ゲームなんかでは範囲魔法で一気に勝負を決める。


 俺達もそうしたいが、そんな便利な魔法は無い。


 そもそも隙が無い。


 愚痴を言っても敵は片付かない。


 端から順番に倒していくしかない。


 銃を使った連携は出来そうだ。


 とにかく、素早く留目をさして、次の敵に移るのが良い。


 同じ敵に時間をかけていてはダメだ。


 俺は連携に納得した。


 アルコルの意見が欲しい。


 レイセ:「おい!!」

 レイセ:「アルコル!!」

 レイセ:「意見は?」


 アルコルは瞬間移動してきて、俺の隣へ。


 アルコルは雑に斬撃を繰り出す。


 アルコルの連続攻撃は、敵の数をみるみる減らす。


 俺は暇になった。


 他の皆は戦っている。


 アルコル:「雑魚相手の連携はそれで正解だろう」

 アルコル:「あくまでも雑魚相手の話だが」


 レイセ:「まあ、そうな」


 ルプリレ:「受けに回った時だけの話でしょう?」

 ルプリレ:「もっと攻めの起点にも使える筈です」


 アルコル:「それでも、存在感にダメージを与えるには不足している」


 ルプリレ:「それは、そうなんだけど」

 ルプリレ:「その分だと、アルコルもダメね」

 ルプリレ:「貴方達の言う雑魚の倒し方を私が教えてあげます」

 ルプリレ:「そろそろ戦闘が終了します」

 ルプリレ:「ぺセシュに助言をしますから、次の戦いで参考にしてください」

 ルプリレ:「貴方達の戦い方は鉄砲玉の戦い方なのよ」

 ルプリレ:「自分たちを温存する戦い方をしないと」


 戦闘が終わった。


 ルプリレはぺセシュに助言している。


 いや、思い当たることはあるぞ。


 今回は俺達引率だから、メインの戦力じゃ無いのに。


 必要がなかっただけだ。


 たぶん。


 次の戦闘ではぺセシュが手本を見せてくれるらしい。


 アルコルも嫌そうな顔をしている。


 俺もだ。


 はーあ。



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