13話 アルコル



 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 ロミール:『創聖』のリーダー。






(アルコル視点です。)


 目が覚めた。


 青子の顔を思い出す。


 記憶はおぼろげだ。


 只々美しかった。


 内面までも。


 この世界に写真は持ち込めない。


 朝から打ち合わせだ。


 現実世界には帰れない。


 気持ちを飲み込むしかない。


 青子。


 管理者は殺さないといけない。


 絶対だ。


 殺す。


 次元の壁を越えて管理者を殺せたのは、あの管理者が弱っていたからだ。


 アイツ以外の居場所は感知できない。


 加えて、俺の感知能力は衰えている。


 青子と入れ替わったあの時が一番『能力』を引き出せた。


 殺意を実行できない。


 こんな状態が延々と続いている。


 力の無さに腹が立つ。


 俺は弱い。


 負けないが、弱い。


 力が足りていない。


 腹が立つ。


 はー。


 はー。


 はー。


 鍛えるしかない。


 ああああああああ。


 鍛えるしかない。


 まずは、シャワーだ。


 シャワーを浴びて、打ち合わせに行く。


 午後からは一人で大迷宮に潜る。


 聖国クリアとメロイリスのチームが潜ったばっかりだ。


 次の訓練まで時間が有る。


 一人で潜れるところまで潜る。


 死ぬかもな。


 そうなったらそうなった時の話だ。


 俺には関係ない。


 …………。


 違う。


 俺は死なない。


 管理者を殺すまでは。




 レイセの執務室に着いた。


 ここで打ち合わせだ。


 メンバーは、俺、レイセ、ルプリレ、ジャド、ブレイズ、ロミールだ。


 次の訓練は、マギ、創聖チームだ。


 二チームで三百八十階層まで攻略する。


 大迷宮の情報に追加は無い。


『狂奔』は情報提供を申し出ているが、受けてしまうと訓練にならない。


 力関係も確定してしまう。


 どうでもいい。


 理性的に論理的に思考を巡らす不快さ。


 今すぐに管理者を殺せない無力さ。


 全てに腹が立つ。


 あーーー。


 イライラする。


 こいつらを全部殺して、終わりにするか?


 あーーーー。


 あーーーーー。



 はー。


 はーーー。


 落ち着け。


 ここでキレてしまうと、管理者を殺せない。


 はー。


 はーーー。


 全員揃った。


 レイセから話し出す。


 レイセ:「一週間後に、三百八十階層まで潜る」

 レイセ:「異論は無いな?」


 ブレイズ:「無いですね」


 ロミール:「同じく」


 ルプリレ:「三百六十階層までは、各チームで時間をズラして攻略して貰う」

 ルプリレ:「その点はいい?」


 ロミール:「承知しています」


 ブレイス:「大丈夫です」


 その他、注意点を一つ一つ確認した。


 レイセ:「他に何か言う事あったっけ?」


 アルコル:「一週間後という日程は、体を休める期間だ」

 アルコル:「確実に休め」


 レイセ:「お前が言うな」


 ルプリレ:「ホントそう」


 ジャド:「全くです」


 アルコル:「うるさい」

 アルコル:「俺の行動は俺の自由だ」


 管理者を殺さないと!


 ああああ。


 こいつらうるさい。


 青子が死んだんだぞ?


 この世界はどうなっている?


 何故普通に日常が送れる?


 青子がいないのに?


 俺はなぜ正気なんだ?


 目的の為か?


 管理者を殺す為?


 青子が死んでもか?


 青子以上に優先する事か?


 管理者を殺す事が?


 どうでも良く無いか?


 恨みを晴らす事が重要か?


 腹が立つ。


 腹が立つが、だが、無意味じゃないか?


 俺は何のために生きている?


 何の為だ?


 何だ?


 何だ?


 あああああああ。


 あああああああ。


 あああああああ。


 腹が立つ。


 腹が立つ。


 青子が死んでしまった。


 出来る事をやる。


 俺が死ぬのは、その後だ。


 管理者を殺す。


 まだ。


 まだだ。


 正気を保て。


 まだやることがある。


 まだだ。


 アルコル:「俺が自由時間に何をしようと俺の勝手だ」


 レイセ:「体を休めろよ」


 ルプリレ:「自分の発言に矛盾を感じないの?」


 アルコル:「俺は特別なんだ」

 アルコル:「俺は大丈夫だ」


 ジャド:「午後から、大迷宮に潜りますか?」


 アルコル:「うるさい」


 ジャド:「僕もついて行きます」


 アルコル:「余計なお世話だ」


 ジャド:「そうですね」


 アルコル:「チッ、俺は知らん」

 アルコル:「勝手にしろ」


 ロミール:「この後大迷宮に潜るんですか?」

 ロミール:「ご一緒しても?」


 レイセ:「良い訳無いだろ!」

 レイセ:「話聞いてたか?」

 レイセ:「お前そう言う所!」


 ルプリレ:「ふふ」

 ルプリレ:「仲良くなりたいのよね?」

 ルプリレ:「そのほかの感情は、無いのよね?」


 ブレイズ:「はは」


 ジャド:「ブレイズさん、笑わないで」

 ジャド:「笑い事じゃないです」


 ブレイズ:「そうだった」


 ジャド:「ロミールさん、付いてきて良いですが、僕とですよ?」


 ロミール:「あれ?」

 ロミール:「アルコルさんは?」


 ルプリレ:「はー」

 ルプリレ:「重症だったわ」

 ルプリレ:「アルコルは余裕無いから」

 ルプリレ:「だからジャドがついて行くのよ?」


 ロミール:「?」


 ジャド:「説明しときます」


 レイセ:「頼む」


 ルプリレ:「解散、で良いのかしら?」


 アルコル:「いいぞ」


 レイセ:「お前に発言権なんかないぞ」


 アルコル:「うるさい」


 レイセ。


 こいつについての言及は避ける。


 言及すると事実が確定する。


 心の中で考えてもダメだ。


 ルプリレ。


 リビア。


 プロミ。


 女性の管理者。


 元管理者。


 そう、管理者だ。


 青子が死んだ時、こいつも管理者だった。


 殺害対象だ。


 俺が殺した管理者とも、何らかの繋がりがあった筈。


 今、残りの管理者は四人。


 バランサー、シングライト・クルフェミュア、黒戸和馬。


 青年の管理者。


 少女の管理者。


 老人の管理者、『狂奔』のガリム。


 今解っているのはこの四人。


 青年の管理者と少女の管理者は、存在を知っているだけだ。


 面識は無い。


 有るのは和馬とガリム。


 どうも管理者には特殊能力が備わっている。


 戦闘に関わる能力かは不明だが、油断できない。


 ガリムの能力は戦闘に関係する。


 俺の推測では、全ての攻撃を無力化する、というのは条件が必要だ。


 魔物なんかの言葉が通じない相手には通用しない筈だ。


 何故か?


 無力化を発動するには、事前に能力の説明と、その受諾が必要だ。


 ガリムは事前に自分の能力を相手に伝え、納得させないといけない。


 俺は前回会った時には、今回だけだ、と伝えた。


 次に会った時は奴を殺す。


 黒戸和馬の能力は、戦闘系なのか?


 そうとは限らない。


 登場の仕方が、都合良すぎる。


 不自然だ。


 では、どういった能力なら、そんなことが可能なのか?


 未来予知か?


 違う気がする。


 和馬にも未来が見えてそうだが、能力とは別だ。


 こういう場合、深く考えなくて良い。


 和馬の能力は、都合よく事を進める事の出来る能力だ。


 そう定義する。


 能力の発現には、条件が必要だ。


 恐らく、和馬はその強力な能力の発現に、限定的な条件、若しくは莫大な対価を支払っている。


 その仕組みを解き明かさない限り、殺害には至らない。


 俺は用心深く振る舞っていた。


 すでに何らかの条件を満たしてしまっている可能性は少ない。


 今後も、慎重な行動を心がけないといけない。


 ああああああ。


 イライラする。


 アルコル:「ブレイズ、ロミール」

 アルコル:「今回の引率には俺も加わる」

 アルコル:「最初、俺は創聖の引率だ」

 アルコル:「ジャドはマギに加わる」

 アルコル:「マギの引率はレイセとルプリレな」

 アルコル:「改めて、よろしく頼む」


 ロミール:「はい、頑張ります」


 ブレイズ:「承知」


 レイセ:「ふー、よく正気が保てるな」

 レイセ:「見ていてハラハラするぞ」


 アルコル:「俺を舐めるな」


 レイセ:「そうだな」


 青年の管理者と少女の管理者の情報が少ない。


 必要なのは、能力に関する情報だ。


 全く無い。


 クソッ!


 腹が立つ。


 奴等に届かない。


 クソッ!


 奴等は青子を見捨てる選択をした。


 許せるか?


 俺は。


 俺は。


 青子を大事にしたかった。


 やり方を間違えた。


 せめて、奴らをどうにかしたい。


 後に残される人間がどうなろうと知った事か。


 こんな事、許されて良い訳が無い。


 ルプリレから情報を引き出せないか?


 ダメか。


 管理者をやめる時に情報を封印されているだろう。


 レイセ。


 やはり、お前を殺す事になる。


 物語の中心はお前だ。


 さっき言及を避けると言ったが、守れない。


 俺がお前を見て、どう感じているか、お前には想像できていないだろう?


 俺が初めてお前を見て感じた事を、想像できていないだろう?


 ノスヘルでお前を殺害しなかったのは、僥倖だった。


 殺していては、魔物の王に至れなかった。


 あの判断は正しかった。


 怒りに任せ、お前を殺していたら、こうは成らなかった。


 出来る事は、大迷宮で鍛える事。


 アルコル:「じゃーな」


 俺は瞬間移動した。


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