6話 正解は無い
レイセ:黒戸零維世。
レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。
連合国クロトと聖国クリアの王。
ルプリレ:プロミとリビアと女性の元管理者が融合した存在。
リビア:リビア・クロト。
聖国クリアの元代表。
レイセと結婚している。
プロミ:プロミネンス。
ルビー・アグノス。
黒崎鏡華。
月と太陽の国アウグストラの女王。
現人神。
レイセと結婚している。
ジャド:『マギ』のエース。
キシに次期纏め役に推されている。
三番目の真理への到達者。
アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。
『能力』が使える。
『リーベラティーオー』のリーダー。
(レイセ視点です。)
試合までまだ時間が有る。
どうやって時間を潰そう。
どうすっかなー。
アルコル:「試合までまだ時間があるな」
アルコル:「その間、町の中を見て回りたい」
レイセ:「ジャド、お前はどうする?」
ジャド:「残ります」
ルプリレ:「そう?」
アルコル:「外のどの辺りかはさっき聞いたのでだいたい解った」
アルコル:「じゃーな」
レイセ:「遅れるなよ?」
アルコル:「わかってる」
アルコルは部屋を出て行った。
レイセ:「お前、残ってどうするつもりだ?」
ジャド:「出て行って欲しそうですね」
レイセ:「そうは言わないが」
レイセ:「何か考えがあるのか?」
ジャド:「特には無いですね」
レイセ:「無いのかよ」
ジャド:「無いです」
レイセ:「二時間くらいあるぞ」
ジャド:「ですね」
レイセ:「しょうがない」
レイセ:「共通の話題、なにかあるか?」
ジャド:「そうだ」
ジャド:「『最初の冒険者』読みました」
レイセ:「ああ」
レイセ:「どうだった?」
ジャド:「自分の妹を放っておいて、恋人と過ごすって、主人公としてどうなんです?」
レイセ:「ダメだな」
レイセ:「でも選択を迫られた時、妹と別れて十年位経っていた」
レイセ:「もっとか?」
レイセ:「その場合、自分が死んで恋人ともう会えないと思っていても、妹を選ぶか?」
レイセ:「魔物がいる世界で行商を仕事にしている恋人と、現代の妹だぞ」
レイセ:「解っていても離れられなかったんだよ」
レイセ:「物語では悩まなかったように書いてるが、選べないままズルズル幸せに浸ってたんだ」
レイセ:「答えが出せないままだと二人共わかっていた」
ルプリレ:「発言できないわね」
レイセ:「正解は無い」
レイセ:「そんな状況になったこと自体、どこかで選択を間違えてたんだ」
ジャド:「参考になりました」
ジャド:「作者本人に聞けるとは」
レイセ:「本にした内容の後の話を、作者に聞くなよ」
レイセ:「答える俺も俺だけど」
ルプリレ:「貴方、実は時間が止まっているってわかってたんじゃない?」
レイセ:「それは無い」
レイセ:「何故か自分に絶望しなかったけど」
ルプリレ:「そこがおかしいのよ」
レイセ:「その話題は何か不味い」
レイセ:「話題を変えよう」
ルプリレ:「ジャドと食堂で食事すると目立つから、ここに運んで貰いましょう」
ルプリレ:「早めに頼まないとだから、今なに食べるか選んで」
レイセ:「酒飲みたい」
ルプリレ:「おい」
ジャド:「はは」
ジャド:「試合の前なんで、軽くで良いです」
ジャド:「サンドイッチあります?」
ルプリレ:「そうよね」
ルプリレ:「軽くね」
ルプリレ:「貴方もそれで良いわね?」
レイセ:「ああ」
レイセ:「ちょっとふざけただけだ」
レイセ:「軽くでいい」
ジャド:「食堂で食事して目立つのは、僕の所為ってだけなんですか?」
レイセ:「普段から食堂を自由に使ってるから、今さらだな」
ルプリレ:「王はただ権限が強いだけの役割、らしいわ」
レイセ:「役割の問題」
レイセ:「偉い訳じゃない」
ジャド:「その割には偉そうですよね」
レイセ:「わるいな」
ルプリレ:「なんか上からなのよ」
レイセ:「そんなつもり無いけどな」
俺達はそのまま会話した後、サンドイッチを食べ、外に場所を移した。
指定した場所にアルコルが待っていた。
レイセ:「ジャドってお前と比べてどの位の強さなんだ?」
アルコル:「新しいカタナの性能がずば抜けている」
アルコル:「俺の方が頭一つ抜けている」
レイセ:「じゃー」
レイセ:「今の俺と同等位か?」
アルコル:「お前の身体能力の高さは何処から来ている?」
アルコル:「それによる」
ジャド:「融合数が多い訳じゃ無いのに、身体能力が高いんですよね?」
ジャド:「興味あります」
レイセ:「今説明して、簡単に出来る様に成る類いの話じゃ無いが、聞いとくか?」
ジャド:「試合前でも良いんですか?」
ルプリレ:「実力を見る為だから、実力が簡単に変わるなら、変わってからの把握が必要よ」
レイセ:「だな」
ルプリレ:「ちなみに、私は一応理解出来たわ」
ルプリレ:「使いこなせないけど」
ジャド:「考え方の話ですか?」
ジャド:「話が見えない」
レイセ:「人は精神の世界で繋がっている」
レイセ:「神獣も同じところに繋がっている」
レイセ:「神獣が何度も生まれ直すのは、根源から力を引き出しているからだ」
レイセ:「真理に到達出来たなら、そこから力を引っ張り出せる」
レイセ:「理屈はわかるか?」
ジャド:「理屈は」
ジャド:「僕は一瞬繋がりましたが、力が大きすぎて本能的に委縮してしまってそれからは繋がれません」
ジャド:「あれに繋がり続けるのは無理です」
ジャド:「規模がデカすぎる」
ジャド:「正気を失います」
ルプリレ:「こいつ、戦闘中根源から力を引き出しているらしい」
ルプリレ:「バカです」
ジャド:「そんな事が可能とは」
アルコル:「俺と差が開いたと思ったが、そうでも無いな」
アルコル:「しばらく期間を置いて、もう一度試合するか?」
レイセ:「カタナ無しでならOKだ」
レイセ:「そうじゃ無いなら立会人が必要だ」
ルプリレ:「そうでした」
ルプリレ:「私との試合は、得物なしでお願いするわ」
アルコル:「仕方ない」
レイセ:「めんどくさいって感想が漏れてきそうだ」
ジャド:「参考にならなかったです」
レイセ:「本能の拒絶にイメージの流し込みは効果無いからな」
レイセ:「こればっかりは簡単に矯正できない」
ジャド:「そろそろ始めますか?」
レイセ:「そうだな」
ルプリレ:「私達は観察している」
ルプリレ:「それで良いわね?」
アルコル:「そうだな、必要だろう」
この前試合をした時と別の場所だが、似たような荒野だ。
違いが有るなら、岩場もある事か。
(ジャド視点です。)
前に会った時に、レイセさんには違和感があった。
今相対しても感じる。
気の所為じゃない。
確実にどこかおかしい。
言語化出来ないが、レイセさんはどこかおかしい。
根源と繋がり続ける?
根源を本能的に拒否してしまった自分には、イマイチ理解できない。
違和感の正体は、そこにあるのか?
まあいい。
今は関係ない。
つつがなく試合を終わらせて、粛々と訓練する。
僕には時間が無い。
レイセ:「良し、行くぞ?」
ジャド:「どうぞ」
レイセさんの左拳が、僕の右顎を狙って突き出された。
腰の入っていない、上半身の動きだけの突き。
ボクシングのジャブに似ている。
二連続で繰り出された突きを僕は右腕でガード。
重さは無いが、硬く鋭い痛み。
腕に穴が開きそうだ。
動きが特別速い訳じゃ無かったから気付かなかった。
最初から全力らしい。
全力の割に、雰囲気はリラックスしている。
気負いがまるで無い。
そのままレイセさんは右拳でストレート。
顎を狙ってくる。
僕は左腕でガード。
今度は腰が入っている。
重い。
腕が吹き飛ばされそうだ。
僕も力の融合を全力で使っている。
最初からそのつもりで助かった。
そうじゃ無きゃ、勝負が着いていたかも。
攻撃に転じないとこのまま押し込まれそうだ。
何より、防御する腕が持たない。
レイセさんの右ストレートが戻るタイミングで僕は左フックを出す。
僕の左フックをレイセさんは右腕を使って払った。
払われた左フックに腰は入っていなかった。
払われる寸前に下半身を回転させ、右ストレートの体勢を取る。
僕の右拳がレイセさんの顔面に突き刺さる。
体重が乗っている。
綺麗に入った。
レイセさんは実は格闘下手なんじゃ無いか?
僕は勝ちを確信した。
身体能力に差を感じない。
一発綺麗に入れた方の勝ちだ。
レイセさんの頭は上に跳ね上がる。
二歩、後退し、また拳を構えた。
何事も無かったかのように。
うめき声一つあげなかった。
ん?
今、少し笑ったのか?
イラっとした。
笑えなくしてやる。
僕は左拳でジャブ。
三連続。
全て綺麗に入った。
レイセさんは脳にダメージを負ったみたいだ。
反応が遅い。
防御できていない。
レイセさんの頭が上下する。
どう考えても勝負はついている。
だが、誰も止めない。
レイセさんは左手で血を拭い、前を向いた。
平然としている。
アルコルさんとルプリレさんの目を見る。
真剣だ。
目を逸らさない。
まだやるのか?
正直もうやめたい。
僕はもうやめたいんだ。
気付いてしまった。
何か巨大な力で、形勢が逆転する想像をしてしまう。
もうやめたい。
僕は右拳でストレートを繰り出す。
出した筈だ。
右拳に合わせて左が飛んで来たように感じた。
凄まじい威力の左。
カウンターだ。
躱せない。
拳がデカく感じる。
そう感じた。
僕は膝を付いてしまった。
足が震えて立てない。
なんだ?
どうなった?
アルコル:「そこまでだ」
ルプリレ:「そうね」
ジャド「解説を」
アルコル:「お前はレイセのヤバさに気付いて自分で勝負を降りたんだ」
アルコル:「ホントはわかってるだろ?」
レイセ:「効いたー」
僕は負けた。
根源に繋がる、か。
ヤバい。
膝の震えが止まらない。
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