2話 最後に見る光景


 レイセ:黒戸零維世。

     レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:リビア・クロト。

     聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンス。

     ルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     現人神。

     レイセと結婚している。

 シロ:黒巣壱白の分裂した姿。

    『ロストエンド』の元マスター。

    『能力』が使える。

 ガリム:『狂奔』のリーダー。

     老人の管理者。

 スーリー:『狂奔』のサブリーダー。

      チームの纏め役

 ラドセス:『狂奔』のサブリーダー。

      広報担当。

 ストルム:『狂奔』のサブリーダー。

 ダットル:『狂奔』のサブリーダー。

 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

    死兵国プロンシキの元英雄。

    『リーベラティーオー』の纏め役。

 ジャド:『マギ』のエース。

     キシに次期纏め役に推されている。

     三番目の真理への到達者。

 アルコル:黒巣壱白の分裂した姿。

      『能力』が使える。

      『リーベラティーオー』のリーダー。





(レイセ視点です。)


 シロさんがカイトシールドになった。


 俺はシロさんで出来た盾を左手で持つ。


 アルコルは空間から片手剣とラウンドシールドを出した。


 いつものカタナじゃない。


 ふむ。


 アルコルは契約者じゃない。


 融合もしていない。


 部分融合で武器を具現化出来ない。


 現実世界から業物のカタナを持ってきて、何らかの強化を施して使用していた筈だ。


 業物のカタナは貴重だ。


 今回はカタナを使わないのか?


 どういうことだ?


 刀術にこだわりがあったのでは?


 普段使用していたカタナと同等の剣か?


 耐久力は?


 攻撃の仕方、剣の振り方はどうなる?


 飛んでくる斬撃の軌道は?


 アルコルには、『能力』スライドがある。


 動きをあらかじめ想定していないと対応できない。


 フー。


 落ち着け。


 理魔法が自由に使えるなら、様々な武器を状況に合わせて出すのが有効だ。


 カタナ以外を使うと言うなら、他にも出すかもな。


 但し、武器の強度が問題になる筈。


 アルコルとの距離は十メートル。


 ガリムさんは中間地点付近に立っている。


 アルコル:「いいか?」


 レイセ:「ああ」


 アルコルは大きくバックステップ。


 俺も大きくバックステップ。


 それぞれが五メートル後ろに跳躍。


 アルコルは片手剣を振るい、斬撃を飛ばした。


 まずは一撃、盾で防ぐ。


 斬撃は盾を透過しない。


 大丈夫だ。


 防げる。


 戦いが成立しそうだ。


 斬撃は連続で飛んでくる。


 シロさんで出来た盾を装備するとシロさんの未来予知が働く。


 連続攻撃は手数が多い。


 円の軌道を取らないなら、考えながら防いでいては、間に合わない。


 盾から最適な防ぐ順番を感じ取り、次々と防いでいく。


 距離が二十メートルなら、防げそうだ。


 想定の範囲内。


 アルコルの武器は片手直剣のままだ。


 カタナより、振りが速く、動作がダイナミックになっている。


 盾は今のとこ飾り。


 俺はまだ攻撃を返せていない。


 アルコルは距離を詰めて来ない。


 奴にしては慎重だ。


 この距離のままでは勝てない。


 距離を詰める。


 プロミと話して出た解決策を行う。


 手数が足りなければ、増やせばいい。


 腕を増やす?


 それでもいい。


 が、今回は別の手を使う。


 盾で斬撃を防ぐ俺の背中から、カーミュの上半身が生える。


 そのままカーミュがスルリと出現。


 俺達は分離した。


 そう、分離できる。


 カーミュの人格にはクリアがプラスされている。


 俺の人格にもクリアがプラスされている。


 そして、カーミュには、俺の人格もプラスされている。


 俺にはカーミュもプラスされている。


 表層意識がカーミュか、俺かの違いだけだ。


 分離というか、分裂か。


 増える事のメリットは手数が増える事。


 デメリットは存在強度が下がる事だ。


 存在強度が下がるかどうかは試したことが無いが、感覚でわかる。


 アルコルの攻撃は大抵、受けると致命傷になる。


 裏を返せば、存在強度がどうであれ関係無いという事だ。


 手数を優先する。


 俺は注視を使った。


 俺の気配が強くなり、俺を標的にするしかなくなる。


 魔法じゃない。


 そういう特技だ。


 アルコルも引っかかる。


 アルコル:「チッ」

 アルコル:「あの時魔物の王が黒鬼を出したのはそういう意味か」


 レイセ:「なんの話だ?」


 アルコル:「お前には関係ない」

 アルコル:「良い手を思いつく」

 アルコル:「受け切ってやる」


 俺はレムリアスを呼び出す。


 レイセ:『どうする?』

 レイセ:『手数を優先させて、お前を出すか?』


 レムリアス:『力の融合が不十分になる』

 レムリアス:『剣魔は特別だ』


 レイセ:『他にアドバイスは?』


 レムリアス:『神獣に寿命が無いのは何故だと思う?』


 レイセ:『長話の余裕は無いぞ』


 レムリアス:『真理に到達した感覚は共有しているか?』


 レイセ:『言いたい事が解った』

 レイセ:『今言うなよ』

 レイセ:『なんで今なんだ?』


 レムリアス:『発言に制限が掛けられている』

 レムリアス:『その質問を待っていた』


 レイセ:『もしかして、俺が聞かないと答えられ無いのか?』


 レムリアス:『まあ、正解だな』

 レムリアス:『やっと気づいたか、馬鹿者』


 レイセ:『完全融合を使う』

 レイセ:『力の融合はまだだ』

 レイセ:『力の融合を含んで無いのに完全融合って名付けてしまった』

 レイセ:『ネーミングをミスったな』


 レムリアス:『力の融合は奴との距離が詰まってからだな』


 レイセ:『そうだ、頼む』


 レムリアスが肯定したのが、感覚で解った。


 アルコルの斬撃は俺に集中して飛んでくる。


 目にも留まらない連続攻撃。


 リスクを感じながら、五メートル前進する。


 体感ではギリギリ防いでいるって感じだ。


 防いでいる間に、カーミュが回り込む。


 数秒でアルコルに接近した。


 カーミュは力の融合を使う。


 カーミュはバスタードソードを右から左へ振るう。


 強力な一撃。


 アルコルはラウンドシールドで防いだ。


 シールドに亀裂が入る。


 アルコルは盾と片手剣を投げ捨て、空間から双剣を出す。


 一瞬、連続攻撃の手数が減る。


 俺は更に五メートル前進する。


 斬撃が飛んでくる数が一瞬増える。


 が、長くは続かない。


 カーミュがバスタードソードで攻撃する度に、斬撃が途切れる。


 十一本の飛ぶ剣もアルコルの周りを飛びながら、隙が無いかずっと監視している。


 更に五メートル距離を詰めた時点で、アルコルがスライドで前進してきた。


 俺は受けに徹する。


 数秒後、アルコルとの距離が無くなった。


 俺は力の融合を使う。


 アルコルが右の双剣を右から左へ。


 俺は左の盾で防御。


 俺は盾で押し返しつつ、右に槍を具現化。


 盾を前に、半身になって槍を突き出す。


 アルコルは左の双剣で槍の突きを上に逸らす。


 アルコルは槍を上に逸らした流れで、右の双剣で攻撃しようとする。


 が、カーミュがバスタードソードの薙ぎ払いを仕掛けた。


 アルコルは両手の武器で受け止める。


 アルコルの双剣はボロボロだ。


 アルコルは双剣を捨て、空間から盾と片手斧を取り出す。


 俺は力の融合を強めた。


 神獣の力は、真理の渦から来ている。


 力の融合を行うと、神獣が繋がっている真理の渦から力を引き出し易くなる。


 真理の渦の力は膨大だ。


 少しずつ引き出さないと、身を亡ぼす。


 俺はシロさんを大剣にする。


 大剣を上から下に振り下ろす。


 アルコルは盾で防御した。


 盾に亀裂が入る。


 カーミュがバスタードソードを右から左に振るう。


 アルコルは左の盾で再び防御。


 盾がボロボロになる。


 俺はシロさんで出来た大剣を盾に変化させる。


 同時に俺は再び注視を使う。


 アルコルは俺を向いた。


 アルコルは片手斧をシロさんで出来た盾に振り下ろした。


 アルコルの片手斧が粉々に砕けた。


 どの武器も強度が足りていない。


 形勢は俺にある。


(キシ視点です。)


 ストルム:「もう一度言っとく」

 ストルム:「刃物は使うなよ?」


 キシ:「了解」


 ラドセス:「私とダッドルはルプリレさんを」


 スーリー:「なら、ストルムと私はキシさんね」


 キシ:「少し距離を開けるかい?」


 ルプリレ:「任せるわ」


 僕はルプリレから十メートル離れた。


 フー。


 緊張して来た。


 ダメだ。


 一本吸おう。


 キシ:「ごめん」

 キシ:「五分待って」


 ルプリレ:「ダメって言っても無駄でしょ?」


 キシ:「そうなんだ」

 キシ:「緊張してしまって」

 キシ:「一本吸いたい」


 ルプリレ:「どうぞ」


 口に咥えて、火を付ける。


 スー。


 ハー。


 十メートル離れている。


 遠くから眺めるとベリーと似ている様に感じる。


 距離が離れている、か。


 好みの女性には近づけない人生だったな。


 最後に見る光景としては、悪くない。


 しばらく彼女の横顔を眺めた。


 吸い終わった。


 ルプリレ:「もういい?」

 ルプリレ:「貴方の覚悟を見届けてやるわ」


 キシ:「はは、そうかい?」

 キシ:「じゃーお願いするよ」


 僕は瞬きしなかった。


 レイセとの戦闘で学んだ。


 一切の癖を無くす。


 ルプリレが十メートル先で左足に力を入れるのを確認した。


 右足の踏み込み。


 速すぎる。


 僕は腹を防御しようと、両手を前に組もうとする。


 僕の手が僕の腹の前で組まれた時、ルプリレの左足は僕の右足のすぐ横に並んでいた。


 七つの大罪”憤怒”を意識する。


 ルプリレの右拳が、僕の両手に吸い込まれる。


 パァーン!!


 右拳を防いだが、衝撃が身体を貫通する。


 後から響く音も銃声のようだ。


 クソ。


 強すぎる。


 戦闘になるのか?




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