第33話 死闘



 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

    『リーベラティーオー』の纏め役。

    プロンシキの元英雄。

    死兵使い。

 ジャド:『マギ』のメンバー。

     『リーベラティーオー』の纏め役を引き継ぐ、予定。

     真理への到達者。

 アルコル:『復讐者』。

     『救世主』とも呼ばれている。

     黒巣壱白の分裂した姿。

     『能力』が使える。

 ネロ:『ディープフォレスト』のリーダー。

     氷上国家カハの国王。

     故人。

     キシが死兵として使っている。

 ローク:『トパーズ』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 サリーン:『トパーズ』のメンバー。

 ケイト:『トパーズ』のメンバー。

 ロメイン:『マギ』のメンバー。






(キシ視点です)



 瞬く間に、魔物の王の隣に二メートルほどの鬼が出現した。


 黒い鬼の身長は二メートル程だが、筋肉の発達が凄い。


 エレメント人の様な、自然から発生した様な存在とは根本的に違う。


 こいつは生物だ。


 黒鬼:「GYAAAAAAAAWEYYYYAAAAAA!!!!!!」


 デカい口に、牙が二本見えている。


 長い角が一本。


 右腕に金棒を持っている。


 魔物の王みたいに知能があるように見えない。


 ただただ獰猛さが目立つ。


 鬼は、筋肉を強張らせ、フー、フーと息を吐いている。


 どう出る?


 どう動く?


 魔物の王:『ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ』

 魔物の王:『さあ、行け』


 魔物の王はアルコルに向かって手を傾けた。


 黒鬼はアルコルに金棒を振り下ろした。


 アルコルはカタナで受けた。


 何が起こったかわからない。


 黒鬼に予備動作が全くなかった。


 アルコルと黒鬼は、五メートルは離れていた。


 僕の目には捉えられなかった。


 アルコルは振り下ろされた金棒を押し返せずにいる。


 黒鬼:「GAAAAAAAAAAAAAADWUUUUUU!!!!!!」


 声が大きい。


 クソッ。


 黒鬼に気を取られた。


 魔物の王を見失った。


 七つの大罪は既に使っている。


 魔物の王の動きには癖が無い。


 予測できない。


 恐らく、狙うのはアルコルだろう。


 ひとまず、アルコルから黒鬼を退ける。


 瞬間移動して、黒鬼の右側に出る。


 黒鬼の、金棒を握った右腕に斧を振り下ろした。


 七つの大罪を使った全力だ。


 黒鬼の右腕を切り離した。


 黒鬼の右腕が蒸発する。


 魔物の王の右足が、僕の腹に突き刺さる。


 キシ:「グハッ!!」


 肋骨が何本かやられた。


 そのまま十メートルほど吹き飛ばされた。


 意識を保つのがやっとだ。


 飛ばされたまま、瞬間移動を連続で使い、十メートル戻る。


 急がないとアルコルが持たない。


 アルコルは、魔物の王の攻撃と、黒鬼の攻撃を、ギリギリで捌いていた。


 黒鬼の右腕は再生されているようだ。


 また右腕に金棒を持っている。


 アルコルは、金棒をブンブンと振り回す黒鬼の攻撃を、後ろに後退しながら躱している。


 その合間に魔物の王の攻撃が追加されていた。


 魔物の王には余裕がある。


 遊んでいやがる。


 アルコルが躱し切れなくなるのは、時間の問題だ。


 アルコル:「分断だ!」

 アルコル:「俺が魔物の王を引き付ける!」

 アルコル:「お前は黒いのだ!!」


 キシ:「サリーン!」

 キシ:「アルコルの補助を!」

 キシ:「ケイトとロメインは僕の補助だ!」

 キシ:「黒いのから片付けるぞ!!」


 黒鬼がアルコルに金棒を振り下ろす。


 そこをアイアリが大盾で遮る。


 ベリー、アイアリ、ジュリットの三人は、目視出来る場所ならどこでも実体化させられる。


 アイアリが持っている大盾はジュリットで出来ている。


 アルコルは黒鬼から離れる。


 魔物の王はアルコルについて行くらしい。


 ふざけた奴だ。


 だが助かった。


 実質詰んでいた。


 脅威はまだ済んでいないが。


 ベリーをアルコルの隣に実体化。


 アルコルとサリーンの補助をすると共に、魔物の王の動向を監視する。


 アルコルの右側に魔物の王が出現。


 魔物の王は斧を右から左に振るう。


 ドゴン!!


 黒鬼の攻撃でアイアリは大盾ごと吹き飛ばされる。


 吹き飛ばされた先でアイアリ達の実体化を解いた。


 アイアリ一人であの攻撃を耐えるのは無理か。


 黒鬼を相手にしてのタンクは僕にしか勤まらなそうだ。


 黒鬼は異様な瞬発力で僕に接近してきた。


 アルコルは魔物の王の斧の攻撃をカタナで上に弾き返す。


 魔物の王は弾かれたまま上に武器を上げ、大剣にして振り下ろす。


 アルコルは上からの攻撃を左から右に弾く。


 サリーンは攻撃の間に入れないでいる。


 アルコルと魔物の王のスピードに付いて行けていない。


 目で追うのがやっとだ。


 ベリーが魔物の王に向かって矢を射る。


 魔物の王は矢を三本つかみ取った。


 魔物の王の手が一瞬止まる。


 そうだ、効かなくても牽制が必要だ。


 黒鬼は金棒を右から左へ。


 危ない。


 意識が魔物の王に向いていた。


 僕はとっさにジュリットの盾を左側に構える。


 最適動作と瞬発力をフルに作動させる。


 ドゴン!!


 アルコルは魔物の王の攻撃をカタナで受けた。


 魔物の王はメイスを右から左に払った。


 アルコルは左手で刃の先を持ち、両手で攻撃を防いだ。


 瞬間、魔物の王が右足でハイキック。


 これをベリーが盾で防御。


 ベリーをサリーンが支える。


 魔物の王の攻撃でアルコルのカタナに罅が入った。


 不味い。


 アルコルの武器は具現化していない。


 現実世界から業物のカタナを持ってきていて、替えが効かない。


 アルコルは罅の入ったカタナを捨てた。


 アルコルは理魔法で空間から槍を取り出した。


 ドゴン!!


 僕は吹き飛ばされない。


 同時にロメインが放った魔法が黒鬼に命中する。


 風と炎の複合魔法。


 激しく燃えている鋭く切り裂く風。


 黒鬼の表面を切り裂き、焼く。


 黒鬼はダメージを気にしない。


 傷は全て再生されていく。


 手ごたえが無い。



 ケイトが矢を射る。


 黒鬼が煩わしそうに矢を払う。


 数本刺さっているが気にしていない。


 この敵も再生力が高い。


 存在感にダメージを与えるには、人が武器化するしかない。


 ロメインとケイトに耐えれるのか?


 考えが決まらない。


 思考が纏まらないまま、黒鬼が攻撃を仕掛けて来る。


 鬼は金棒を右から左へ。


 僕は完全融合する。


 時間制限があるが、力の融合を使う。


 出し惜しみをしていては負ける。


 左から来た金棒を左の双剣で上へ払う。


 黒鬼の動きは速い。


 金棒が上から下に振り下ろされる。


 右で防ぎ、左で突きを入れる。


 鬼は金棒を戻して防御。


 そのまま押し合いになる。


 僕は金棒に左右の双剣を合わせている。


 この膠着状態の隙に、ロメインとケイトが攻撃。


 矢と魔法が鬼に命中する。


 が、効いていない。


 僕は一旦バックステップ。


 黒鬼は追って来ない。


 黒鬼:「GWAAAAAAAA!!!!!!」


 鬼は全身に力を込めて叫び声をあげている。


 僕は力の融合を一旦解いた。


 アルコル:「ケイト、ロメイン!!」

 アルコル:「武器化だ!!」

 アルコル:「今やれ!!!!」


 ケイト:「ハイ!!」


 ロメイン:「わかったわ!!!!」


 ケイトとロメインは武器化して飛んでくる。


 ケイトの剣を僕が、ロメインの剣をアイアリが受け取る。


 アルコルは槍で魔物の王を突く。


 魔物の王は片手剣で右から左に払う。


 槍の先が片手剣で切り落とされる。


 アルコルは槍を捨て、空間から鞘に入ったカタナを取り出す。


 カタナを腰に構えて待つ。


 魔物の王は左手で短剣を投げる。


 次々と生み出しては、連続で投げる。


 アルコルは鞘からカタナを抜き放ち、連続で短剣を落とした。


 カタナはボロボロになった。


 アルコルも武器が使い物にならない。


 僕はもう一度力の融合を使う。


 黒鬼は右から左に金棒を振るう。


 ロメインで出来た剣が盾に変化。


 アイアリがロメインで出来た盾で金棒を防御する。


 僕は瞬間移動して、鬼の真後ろに移動。


 鬼は首を真後ろに捻り、金棒でアイアリを弾き飛ばした。


 首をこちらに向けたまま、下半身をこちらに向けようとする。


 僕はケイトで出来た剣を右から左に振り抜いた。


 身体全体をこちらに向けた鬼が金棒で攻撃を防御しようとする。


 同時に鬼の首が伸び、僕の首に噛み付いた。


 僕の剣は金棒毎、鬼の体を切り裂いた。


 鬼の上半身は、下に滑り落ちた。


 伸びた首が僕に噛み付いたままだ。


 サリーン:「私も武器化します!!」


 アルコル:「お前は俺の腕力に耐えられない!!」

 アルコル:「覚悟は有るのか?!!」


 サリーン:「それしか手が無い!!」

 サリーン:「やります!!!!」


 サリーンは武器化してアルコルに向かって飛ぶ。


 アルコルは武器化したサリーンを受け取る。


 魔物の王は、笑って見ていた。


 アルコルはサリーンで出来たカタナを魔物の王に振り下ろす。


 魔物の王は防御しない。


 魔物の王は切り裂かれ、紫の体液が飛び散る。


 だが傷はすぐに再生される。


 サリーンは武器化を解いてしまった。


 魔物の王:『ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ』


 サリーンは目と鼻、耳から血が垂れていた。


 サリーン:「もう一回です!!」


 アルコル:「早くしろ!!」

 アルコル:「一気に行く!!!!」


 サリーンで出来たカタナで魔物の王を再び連続攻撃。


 身体を数回切り裂いた後、首を切り落とした。


 魔物の王はそのまま喋る。


 魔物の王:『今回の戦いで解ったか?』

 魔物の王:『ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ』


 魔物の王は蒸発した。


 黒鬼の上半身と下半身は蒸発した。


 勝った、と言えるのか?


 やれやれだ。


 首が痛い。


 僕は気を失った。


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