第31話 もう一つのダンジョン攻略5



 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

   『リーベラティーオー』の纏め役。

    プロンシキの元英雄。

    死兵使い。

 ジャド:『マギ』のメンバー。

    『リーベラティーオー』の纏め役を引き継ぐ、予定。

    真理への到達者。

 アルコル:『復讐者』。

     『救世主』とも呼ばれている。

     黒巣壱白の分裂した姿。

     『能力』が使える。

 ネロ:『ディープフォレスト』のリーダー。

    氷上国家カハの国王。

    故人。

    キシが死兵として使っている。

 ローク:『トパーズ』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 サリーン:『トパーズ』のメンバー。

 ケイト:『トパーズ』のメンバー。

 ロメイン:『マギ』のメンバー。





(サリーン視点です。)


 食べたー。


 おかわりしたった。


 美味しかったー。


 また作って欲しいな。


 私が食べている間に全員起きて、それぞれが好きな物を作って貰った。


 私は食べ終わったけど、みんなはまだ食べている。


 キシ:「みんな聞いてくれ、食べながらでいい」


 ロメイン:「わかりました」


 ケイト:「なんですか?」


 キシ:「次のステージの話だよ」


 ジュリット:「ベリーと話してた奴?」


 キシ:「一部はそうかな」


 アイアリ:「意識が共有されてるから、ベリーが聞いてたら問題無いのよね」


 キシ:「それを言えば僕が知ってればいい話だけど」


 ロメイン:「なら、サリーンは聞いてるんですか?」


 アルコル:「サリーンは先に起きていたからな」

 アルコル:「二人が寝ている間に少し話をした」


 ケイト:「私とロメインの為、か」


 キシ:「サリーンだけ特別扱いって思ったのかい?」


 ロメイン:「仲間だけど、ライバルだし」


 キシ:「安心して」

 キシ:「サリーンにも伝えていない事があるよ」

 キシ:「サリーンは一度聞いた事でも何度も聞いて、情報を整理する癖をつけてね」

 キシ:「情報の整理は大事だよ?」


 サリーン:「別に一回聞いた事はもう聞きたくないとか、言いませんって」


 ベリー:「チーズうま」


 キシ:「全部食べないでよ?」

 キシ:「マルゲリータは僕にも残しといて」


 ベリー:「え?」

 ベリー:「嫌だけど?」


 アルコル:「ん、話すぞ」

 アルコル:「次のステージは更に難易度が跳ね上がりそうだ」

 アルコル:「今までの敵より、積極的に殺しに来ると予想する」

 アルコル:「次のステージも転送装置で戻って来れるかわからないが、戻って来れると仮定して、俺とキシが偵察に行く」

 アルコル:「行って様子を見て戻って来る」


 キシ:「一旦様子を見て確定情報を伝えるよ」


 なるほど。


 慎重だ。


 戻って来れる事が前提だけど。


 九十から九十九階層で転送装置が無くなった事は無い。


 恐らく戻って来れる。


 実は少し自信が無くなってきていた。


 事前に情報がある方が安心だ。


 アルコル:「但し行くのはもう少し休憩してからだ」

 アルコル:「そうだな、十二時間後に俺とキシが行く」


 キシ:「了解」


 皆は頷いて、食事に戻った。


 今回の食事はアルコールを飲んでいる。


 アルコルさんから許可が出た。


 私も飲もう。


 ウイスキー飲みたい。


 おつまみは、燻製とか、どう?


 アルコルさん用意あるかな?


 聞いてみよ。


 サリーン:「ウイスキー飲むんですけど、燻製持ってたりしません?」


 アルコル:「燻製か」

 アルコル:「サラミと、チーズと、サーモンがあるな」


 サリーン:「流石です」


 アルコル:「チッ、煽てるな」

 アルコル:「そういうのでいちいち喜ばないぞ、イライラするからやめろ」


 キシ:「相変わらず理不尽だねー」


 アルコル:「うるさい」


 キシ:「さっさと出す」


 アルコル:「チッ」


 アルコルさんはテーブルに燻製を出してくれた。


 アルコル:「俺は眠る」

 アルコル:「起こすなよ?」


 寝たふりしてるだけなんだろうなー。


 アルコルさんはタオルケットに包まって目をつぶった。


 そっとしておくか。


 燻製には、ゆで卵とかある。


 ハムとか、肉も多い。


 どうみても美味しそうだ。


 ケイト:「凄いねー」


 サリーン:「ねー」


 ケイト:「私も飲んで良い」


 サリーン:「うん」


 ケイトのグラスに酒を注いだ。


 そのまま私達はリラックスして過ごし、やがて眠った。



 十二時間後。


 アルコルさんとキシさんが偵察に行って帰って来たみたい。


 行く時に声が掛からなかった。


 寝てた。


 キシ:「説明するから聞いて」

 キシ:「次のステージに行けるのは一人ずつ」

 キシ:「転送装置で行き来できる」

 キシ:「次のステージの大きさは、野球場くらいある」

 キシ:「広い」

 キシ:「ステージの端は炎だ」

 キシ:「円形」

 キシ:「敵の数は一体」

 キシ:「今までの『能力』に加えて、グレイ・フレイムを使ってくる」

 キシ:「試しにネロを具現化して戦わせたら、喉を掴まれて灰にされた」

 キシ:「やはり一瞬だ」


 アルコル:「わかったか?」

 アルコル:「攻略方法を思いついたか?」


 ロメイン:「今までのエレメント人と比べて、地力はどうでした?」


 アルコル:「上がっているな、たぶん」


 ケイト:「処理能力はどうでしょう?」


 サリーン:「たぶんその辺じゃない?」


 キシ:「もう少し戦ってみないとわからないけど、処理能力か」

 キシ:「良い判断かも」


 ケイト:「褒められた」


 ロメイン:「手数の勝負かー」

 ロメイン:「また倒れるね」


 サリーン:「貴方も倒れてたの?」


 ロメイン:「ケイトもよ」

 ロメイン:「言ってなかったっけ?」


 アルコル:「今度の敵は向かってくる」

 アルコル:「時間が掛らないから脳への負担は少な目だろう」


 キシ:「偵察した甲斐があった」


 アルコル:「俺はもう行くぞ」


 キシ:「ああ、その次は僕が行く」


 今回の攻略順は、アルコルさん、キシさん、私、ロメイン、ケイト、ジュリット、アイアリ、ベリーだ。


 手数の話になったが、キシさんは攻略中に具現化した像を増やせる。


 キシさんが今までどうやって攻略して来たか、私にもわからない。


 ジュリット、アイアリ、ベリーは具現化した像だけど、真面目に攻略しているらしい。


 すくなくとも今までのダンジョンはそうだった、らしい。



 アルコルさんと、キシさんが進んだ。


 二人は戻って来ない。


 次は私の番だ。


 行く。


 光の中に入った。



 出た。


 遠くに炎の壁が見える。


 なるほど、ステージは円形だ。


 転送装置は円の中心にある。


 光から出る。


 転送装置はそのままだ。


 敵は?


 どうやって出て来る?


 聞いてなかった。


 中心の転送装置から、炎まで歩く。


 半分くらいまで進んだ時、気配がした。


 今度の敵は気配が大きい。


 転送装置を挟んだ逆側に出現したらしい。


 敵はいきなり出現した。


 斬撃を放ちながら、スライドで滑って近づいて来る。


 斬撃を躱しながら近づく。


 突進してくる敵に対して、円の軌道を取る。


 敵を中心に時計まわり。


 飛ぶ斬撃の軌道は直線、しかしリフレクトがある。


 反射させて斬撃がこちら迄届く。


 走りながら、密度の高い槍を生成。


 槍で斬撃の軌道をズラす。


 連続でズラす。


 連続で生成する。


 敵は目前だ。


 斬撃の軌道をズラす合間に光る突きを繰り出す。


 射程の長い光の突きが、敵まで届く。


 敵は避けている。


 スレスレで躱しているが、あの避け方はまだ余裕がある。


 もっと近づく。


 敵も斬撃の手を緩めず、スライドでこっちに向かって高速移動してくる。


 敵との距離が三メートルになった時点で瞬間移動した。


 敵の真後ろから大剣を振り下ろす。


 敵は解っていたかのようにスライドで回転し、こっちに向き直ってカタナを振り上げる。


 敵が回転して向き直るのを見て、大剣の攻撃を敵のカタナに当てる様に軌道修正。


 敵のカタナの攻撃は防御できない。


 相変わらず、軌道をズラすことしかできない。


 でも連続で攻撃する。


 攻略の糸口はやはり処理速度だ。


 感覚的に解る。


 敵はアルコルさん程の速度を出せない。


 逆に手数で押し込む。


 間合いを狭める。


 ダガー二刀流だ。


 敵の武器は、カタナで固定の様だ。


 間合いは短い方が取り回しで有利。


 右のダガーで右から左に攻撃。


 敵はカタナで防御。


 カタナに触れた瞬間、上に軌道をズラす。


 同時に左のダガーで左から右に攻撃。


 敵はスライドで向きを修正し躱す。


 躱しやがった。


 カタナで処理出来なかった時点でこいつの負けだ。


 ここから一気に行く。


 腕を左右に一本ずつ追加。


 追加した腕にダガーを追加。


 追加した右で振り下ろし。


 敵はカタナから片手を放し、左手で、私の追加した右を掴んだ。


 私はグレイ・フレイムで灰にされる前に追加した左で、追加した右を切りはなす。


 追加した右は灰になる。


 敵の左側に私の左が突き刺さっていた。


 敵の右腕を、私の右ダガーで切断。


 追加した左のダガーを敵の頭に振り下ろした。


 敵は消滅した。


 敵が消滅したと同時に、ゴゴゴゴと音が鳴り始めた。


 ステージの一回り内側がせり上がったようだ。


 今いる場所と円の中心を挟んで反対側に敵の気配が出現。


 斬撃が飛んでくる。


 どうやら、一体倒すと一階層攻略らしい。


 休ませて貰えない。


 頭が痛くなってきた。


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