第29話 もう一つのダンジョン攻略3
キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。
『リーベラティーオー』の纏め役。
プロンシキの元英雄。
死兵使い。
ジャド:『マギ』のメンバー。
『リーベラティーオー』の纏め役を引き継ぐ、予定。
真理への到達者。
アルコル:『復讐者』。
『救世主』とも呼ばれている。
黒巣壱白の分裂した姿。
『能力』が使える。
ネロ:『ディープフォレスト』のリーダー。
氷上国家カハの国王。
故人。
キシが死兵として使っている。
ローク:『トパーズ』のリーダー。
フレイズ:『マギ』のリーダー。
サリーン:『トパーズ』のメンバー。
ケイト:『トパーズ』のメンバー。
ロメイン:『マギ』のメンバー。
(サリーン視点です。)
青い光の中に入った。
円筒形の空間に出た。
先に通路が見え、その先にまた転送装置。
転送装置の光の傍に二人いる。
アルコルさんとベリー。
ベリーとハイタッチした。
ベリー:「どうだった?」
サリーン:「余裕」
ベリー:「ホントに?」
サリーン:「嘘」
サリーン:「最後はちょっと驚いた」
ベリー:「増えた?」
サリーン:「そう、それ」
ベリー:「私も驚いた」
ベリー:「アルコルさんの言った通りで」
サリーン:「アルコルさんはどうって?」
ベリー:「知らないわ」
ベリー:「壁に寄りかかって寝たふりよ」
サリーン:「いつものか」
ベリー:「ですね」
サリーン:「休憩しとこ」
私は理魔法で空間から携帯食を出した。
クッキーの様な携帯食。
メープル味。
ベリーが紅茶を出してくれた。
気が利く。
ありがとうと言って受け取った。
携帯食を二本食べた所で眠気がしてきた。
タオルケットを出して包まって眠った。
ん?
話し声?
なに?
目が覚めてきた。
キシ:「お待たせ、お待たせ」
ケイト:「たぶん時間通りです」
ロメイン:「あ、起きた?」
サリーン:「おはよ」
アイアリ:「こんな短い時間でも眠れるんだ」
サリーン:「疲れてるのかも」
ジュリット:「何か食べた?」
サリーン:「携帯食を」
ジュリット:「ふーん」
サリーン:「心配してくれた?」
ジュリット:「ふふ」
ジュリット:「食べるならスープが良いよ」
サリーン:「ベリーが紅茶出してくれた」
ベリー:「暖かいものを摂る」
ベリー:「考える事は同じね」
アイアリ:「そうだった」
キシ:「しばらく休憩する?」
アルコル:「三時間は休憩する」
ロメイン:「思ったより長い」
アルコル:「俺が少し寝足りない」
キシ:「そうかい」
キシ:「全員でお昼寝でもするか」
ケイト:「そうですね」
サリーン:「じゃ、みんなおやすみ」
私達は寝た。
ケイト:「サリーン」
ケイト:「サリーン、そろそろ起きて」
サリーン:「ん?」
サリーン:「時間?」
ロメイン:「四時間経ったわ」
サリーン:「え?」
サリーン:「過ぎてるの?」
キシ:「アルコルが起こさなかった」
アルコル:「最低でも三時間と言ったんだ」
アルコル:「俺がずっと起きてたみたいに言うな」
アルコル:「俺も寝てた」
キシ:「ホントかなー?」
アルコル:「大体、なんで俺が起こす役なんだ」
アルコル:「お前が起こせ」
キシ:「怒るじゃない」
ロメイン:「で?」
ロメイン:「みんな起きたよ?」
アルコル:「準備しろ」
アルコル:「進むぞ」
アイアリ:「了解」
三十分後、アルコルさんが次の光の中に入った。
キシ:「何が起こるかわからない」
キシ:「気を付けて」
ベリー:「追加される『能力』はトゥエルブ・サテライトで、予想の変更は無し?」
キシ:「ない」
キシ:「アルコルは確信してるね」
キシ:「試練の的がアルコルなら、アルコルが自分自身を超える様に試練が出るかも」
キシ:「ありそうな話だ」
進む順番はさっきと同じ。
ベリー、私、ケイト、ロメイン、ジュリット、アイアリ、キシさんの順。
ベリーはキシさんに声を掛けた後、光の中に消えた。
……。
……。
……。
…………。
良し。
五分経った。
行きますか。
向こう側に出た。
砂の壁が見える。
そこは予想通り。
だが、砂の壁と砂の壁に挟まれた通路の幅は広い。
通常の倍ほどある。
砂に引っかかる可能性が減った?
良い事だけの筈が無い。
デメリットは?
敵に囲まれそう。
そうか、複数出るんだな?
アルコルさんじゃ無いけど、確信がある。
複数出る気がする。
はー。
めんどくさ。
こういう時は、落ち着いて。
さっさと終わらせようと無理すると、ミスに繋がる。
落ち着いてじっくりやる。
まずは深呼吸だわ。
スー。
ハー。
スー。
ハー。
良い感じ。
進む。
十メートル進む。
砂の塊が通路の中央に出現。
人型になる。
二メートル。
サラサラと砂の流れる音がする。
水のステージでも、水の流れる音がしていた。
こいつらエレメント人は気配が薄い。
気配読みで感知し難い。
水の時は、なんで水たまりを見たんだっけ?
バシャッと音がした?
音。
第六感じゃない?
五感を使う?
このひらめきは第六感な気がする。
とにかく。
増えたら音が変わるんじゃない?
目の前の砂人が両手剣を右に構える。
ダメだ。
考える暇がない。
恐らく囲まれる。
出て来るつもりで対処する。
四方向から来る気がする。
目の前のがA。
右に出たらB。
左に出たらC。
後ろがD。
って事で。
Aの剣が私から見て左から右に振られる。
私は左に盾を出してガード。
気合でふんばってその場に留まる。
耐えている一瞬で左側に敵が出現。
砂人Cだ。
砂の塊が人型になるのが見えていた。
問題は死角だ。
ヤバい。
すでに二体出ている。
二体を視界に入れていると他が留守になる。
四体出た時に詰むわ。
死角にもう一体が出る前にAを片付ける。
それが唯一の活路じゃない?
囲まれる前提で考えてはダメだった。
Aは今やる。
今片付ける。
右手に槍を作る。
Aが両手剣を別の武器に変化させる前に突く。
行ける。
左手だけで攻撃を防げた。
落ち着いて槍をAの首に差し込んだ。
Aが形を失う。
Cを意識する。
Cは槍を具現化。
私は、どうする?
敵は複数出現する。
恐らく。
Aが消えて前方が開けた。
チャンスかもしれない。
前方にダッシュだ。
どんどん進む。
相手をしていては進めない。
Cが槍で攻撃してくる。
Cは左側をスライドで移動。
一定距離を維持してついてくる。
やっぱり『能力』は追加されていた?
ならトゥエルブ・サテライトを使うのも確定か?
敵の動きの予想を補正する。
私は左からの攻撃を左の双剣で弾いた。
右側にBが出現。
右の視界の端で砂の塊が滑ってくる。
私は構わずそのまま前方にダッシュ。
走ったまま、CとBを片付ける事にする。
Cの後にBが出現した。
ならそろそろ後ろにも敵が出て来るだろう。
BとCには手が届く。
後ろのDは?
通路は前後に伸びている。
後ろは並走する必要が無い。
射線が繋がっている。
なら、遠距離攻撃だわ。
Bが右から仕掛けて来る前に後ろから風切音。
今、前に出現されたら詰む。
止まれない。
後ろに結界を複数張る。
後ろからの攻撃は結界で逸らすしかない。
後ろの敵は好きなだけ踏み込みの動作を行える。
かなりの威力だろう。
矢が到達する前に矢の前方の空気が乱れ、変化している様だ。
到達すれば、鋭い回転で結界が貫かれる。
矢は三射。
結界の操作に気を配りながら走る。
全速力だ。
左右の敵はスライドでついて来る。
BとCは両手剣を構えた。
右側の肩に右腕を追加する。
今私の腕は四本。
左の二本と右の二本で盾を構える。
両手剣の攻撃が盾に触れると同時に、結界に矢が命中する。
矢に対して結界を斜めに配置して勢いを外側に逸らす。
矢は凌げそうだ。
両手剣の攻撃を左右の盾で防ぎ、タイミング良く押し返す。
BとCの体勢は崩れないが、二体ともの位置が一歩分左右に広がった。
構わず前方にダッシュする。
BとCが少し遅れてついて来る。
前方に砂の塊が見える。
ついに出やがった。
次はA2って所かな。
A2が人型になるのが見えている。
私はA2との距離を縮める。
A2との距離が二歩分まで縮んだ瞬間、瞬間移動。
A2を飛び越えて、後ろを向いた状態で移動。
この砂の空間でもニ、三メートルなら瞬間移動が可能だ。
A2の真後ろから両手斧で攻撃。
A2は解っていたかのような動きで振り返り、盾で防御。
だが私も解っていた。
『能力』サテライトだろ?
知ってた。
全力で、両手斧で攻撃した。
威力が大きい。
A2が後ろに後退する。
これで溜めが出来る。
私は両手斧の柄を太く伸ばす。
四本の腕で斧を持ち、右に引き絞る。
BとCが追い付く。
Dが真上にジャンプ。
Dから矢が三射放たれた。
A、B、Cが盾を構える。
私は全力で斧を右から左へ振るう。
サリーン:「ォラーーーーー!!!!!」
C、A、Bの順で、一振りで砂人を真っ二つにする。
そのまま斧を回転させ、矢を払う。
A、B、Cはその場で形が無くなった。
私は両手斧を槍に変化させる。
助走をつけて、Dに向かって投げた。
これも全力だ。
Dは大盾を出したが、槍はそれを貫いた。
まだ余裕があるぞ。
どんどん来い。
振り返り、私は前に進む。
…………。
敵の出現に警戒しながら進み、そのまま転送装置に辿り着いた。
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