第28話 もう一つのダンジョン攻略2

 


 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

   『リーベラティーオー』の纏め役。

   プロンシキの元英雄。

   死兵使い。

 ジャド:『マギ』のメンバー。

    『リーベラティーオー』の纏め役を引き継ぐ、予定。

    真理への到達者。

 アルコル:『復讐者』。

     『救世主』とも呼ばれている。

     黒巣壱白の分裂した姿。

     『能力』が使える。

 ネロ:『ディープフォレスト』のリーダー。

   氷上国家カハの国王。

   故人。

   キシが死兵として使っている。

 ローク:『トパーズ』のリーダー。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 サリーン:『トパーズ』のメンバー。

 ケイト:『トパーズ』のメンバー。

 ロメイン:『マギ』のメンバー。





(サリーン視点です。)


 左手の盾を前面に出し、水人の攻撃をガード。


 槍の攻撃を上に逸らした後、大きくバックステップ。


 水人は十メートル地点からもこちらに向かって前進してくる。


 十メートルを境に攻撃が止まる訳では無いらしい。


 私はそのまま転送装置に向かい、この場を後にする。


 簡単に倒せそうに無い。


 一旦戻る。


 情報を持ち帰る。


 敵が『能力』を持っている様に感じた。


 対処法は、同じく『能力』を持っているアルコルさんに尋ねた方が、効率が良い筈。


 アルコルさんは、コミュニケーションが不自由だ。


 頭が良すぎて、伝達が煩わしいらしい。


 いつもイライラしているし。


 相談すると怒られそうだ。


 やれやれ、仕方ない。


 怒られよう。



 サリーン:「ただいま」


 キシ:「おかえり」


 ロメイン:「で?」

 ロメイン:「どうだった?」


 サリーン:「変わってた」

 サリーン:「水人が出て来たけど、武器は固定じゃ無かった」

 サリーン:「自由に具現化してくる」

 サリーン:「それと、『能力』スライドをつかえるみたい」


 ケイト:「え!?」


 キシ:「倒せた?」


 サリーン:「『能力』だけじゃなくって総合的に強敵そうだったから一旦戻ったの」


 ベリー:「ふーん」


 アイアリ:「まー無難かな」


 ジュリット:「粘った?」


 サリーン:「いや、スライドの対処法を聞こうと思ってすぐに戻ったわ」


 キシ:「アルコル、聞いてる?」


 アルコル:「チッ、面倒な話を俺に振るな」


 キシ:「話したく無いらしい」


 サリーン:「ですね」


 ケイト:「あ、いつもの?」


 ロメイン:「ふふ、何か理由が有るんでしょうね」


 キシ:「はー、やれやれ、推理するか」


 サリーン:「怒られ無くてホッとした」


 キシ:「確かに」

 キシ:「いつもは激怒するからな」


 ロメイン:「聞こえてるから、火に油注がない」


 サリーン:「はーい」


 キシ:「そうだった」


 アルコル:「チッ」


 キシ:「うーん」

 キシ:「スライドの対処法、って有るの?」


 サリーン:「体感は、間合いの詰まり方が異常」

 サリーン:「瞬き厳禁」


 キシ:「そうだわな」


 ケイト:「普通に考えたら、間合い大目に取るよね?」


 キシ:「遠距離戦だね」


 サリーン:「で、遠距離戦って言う結論がダメ?」

 サリーン:「って事?」


 キシ:「どうなの?」


 アルコル:「チッ」


 キシ:「まだダメらしい」


 ケイト:「遠距離戦がダメとして、なんでかな?」


 キシ:「…………」


 ロメイン:「…………」


 サリーン:「…………」


 キシ:「ふー、タバコ吸って良い?」


 サリーン:「ダメです」


 キシ:「ですか?」


 ケイト:「です」


 アルコル:「もう少し頭を使え」


 ロメイン:「えー?!」


 アルコル:「六十から七十階層でスライドだ、たぶん」


 キシ:「なるほど」

 キシ:「七十から八十まで、八十から九十、九十から九十九まで、あと百があるな、いつもなら」


 サリーン:「別々の『能力』が次々に出て来る?」


 アルコル:「違うな」

 アルコル:「『能力』は追加されていく」

 アルコル:「そうなる筈だ」


 アルコル:「最初は水、スライド」

 アルコル:「次は砂、サテライト」

 アルコル:「その次は風、カットとリフレクトの飛ぶ斬撃」

 アルコル:「最後は炎、グレイ・フレイム」

 アルコル:「そうなる」


 キシ:「はー、なら百階層は?」


 アルコル:「さあな」

 アルコル:「その上が出て来る」


 キシ:「飛ぶ斬撃が追加されるから、離れた間合いに慣れたらダメって?」


 アルコル:「そうだ」

 アルコル:「お前達が理解する必要は無かった」

 アルコル:「どの道突破するしかない」


 キシ:「覚悟位させてよ」


 アルコル:「知るか、面倒だ」


 サリーン:「『能力』スライド、って聞いただけでそこまで推理したの?」

 サリーン:「確信は?」


 アルコル:「俺が間違う筈が無い」


 ケイト:「間違いなさそう」


 サリーン:「もう少し粘れば良かった」


 ロメイン:「気を落とさないで」


 キシ:「敵はどんどん強くなる」

 キシ:「通過点と思って覚悟決める必要はあったよ?」


 ケイト:「ですね」


 サリーン:「そっか、そうよね?」


 ケイト:「そうそう」


 ベリー:「話が纏まったみたいね」


 ジュリット:「私も納得できた」


 アイアリ:「次は誰から行く?」


 アルコル:「俺からだ」

 アルコル:「五分経ったら進め」


 キシ:「了解、戻って来るなよ?」


 アルコル:「それは無い」

 アルコル:「待ち時間は短く頼む」


 ロメイン:「解っています」

 ロメイン:「機嫌が悪いのは困る」


 キシ:「リーダー、アドバイスは?」


 アルコル:「誰がリーダーだ」

 アルコル:「余裕で超えて見せろ」


 キシ:「気合かよ」


 アルコル:「情報が揃っていない」

 アルコル:「恐らくだが、良い一撃が入れば倒せた筈だ」


 ベリー:「存在強度は低めって事?」


 アルコル:「そもそも、エレメント人はそういう風に出来ている」


 キシ:「なるほど」


 アルコル:「背後に注意しろ、数が増える可能性がある」


 サリーン:「戻って良かった」


 アルコル:「返事は?」


 サリーン:「はい、了解」


 アルコル:「行く、遅れるなよ?」

 アルコル:「待たされるとイライラする」


 ケイト:「はい、良く解ってます」


 アルコルさんは転送装置の光の中に消えた。


 キシ:「次は誰が行く?」


 ベリー:「私、行きたい」


 キシ:「了解」

 キシ:「他は?」


 サリーン:「私、その次」


 キシ:「はいよ」

 キシ:「どんどん決めよう」

 キシ:「待たせると怒られる」


 ケイト:「私」


 ロメイン:「ん、私」


 ジュリット:「私」


 アイアリ:「最後でも良いけど?」


 キシ:「怒られるのは僕の役目だ」

 キシ:「僕が最後」


 アイアリ:「じゃ、私」


 キシ:「最後が僕ね」


 ベリー、私、ケイト、ロメイン、ジュリット、アイアリ、キシさんの順に決まった。


 無言が続く。


 ……。


 ……。


 ……。


 …………。


 五分経った。


 やはり戻って来ない。


 流石、アルコルさん。


 死んだという可能性は無いだろう。


 ベリー:「じゃー、行く」


 キシ:「うん、気を付けて」


 ベリーは光の中に消えた。


 ……。


 ……。


 ……。


 …………。


 良し。


 五分経った。


 行く。


 サリーン:「行くわ」


 ケイト:「うん」

 ケイト:「余裕で超えて見せろ」


 ロメイン:「ふふ、気合ね」


 サリーン:「ふふ、じゃ」


 私は転送装置の光の中に入った。



 来た。


 水の壁が見える。


 青空だ。


 ふー。


 緊張している。


 ダンジョン攻略では久しぶりだ。


 余裕で超えて見せろ、か。


 鼓舞されてしまった。


 私、単純かも。


 さー、行くか。



 十メートル進んだ。


 水の塊が出現し、人型になる。


 水のエレメント人。


 人型になった瞬間を槍で突く。


 硬い。


 槍の先が触れた部分が盾に変わった。


 水人は左手に盾、右手に片手剣を装備している。


 水人は左の盾で防御しながら滑って移動。


 私から見て左側に来ようとする。


 水人の盾が邪魔だ。


 動きが素早い。


 私は武器を双剣に切り替える。


 槍だと間に合わない。


 私は左側に出た水人を左の剣で攻撃する。


 左から右に振るう。


 水人が片手剣で攻撃を防ぐ。


 水人は片手剣を右から左へ。


 剣がぶつかり合った瞬間、左側に体を向ける為に左足を後ろに一歩引く。


 水人は円の軌道を取って来る。


 盾を左に持って、私を中心に反時計回り。


 私は姿勢の向きを反時計回りに動かし、裏をかかれ無いようにしないといけない。


 瞬きはしていない。


 予想では、次は水人が右の剣で攻撃してくる。


 左の剣で攻撃を下からすくい上げる用意をする。


 やはり来た。


 かち上げる。


 水人の右側が開いた。


 私は私の左肩にもう一本腕を作りだした。


 もう一本の腕でハンマーを左から右へ。


 振り抜く。


 水人の右脇腹にハンマーが減り込む。


 畳み掛ける。


 左の双剣をバスタードソードに変え、上から下に振り下ろす。


 水人の正中線上を両断した。


 倒したか?


 水人がバシャッと地面に零れた。


 水たまりが出来た。


 違う。


 終わっていない。


 右手にバスタードソードを具現化し右から後ろにぐるっと二百七十度回転。


 水たまりに私の背後が映っていた。


 もう一体いた。


 バスタードソードがもう一体の水人の左脇腹に減り込む。


 剣を振り抜く。


 両手剣を上に振り上げていた水人を今度は横に両断した。


 もう一体の水人もバシャっと地面に零れる。


 倒しただろ?


 残心。


 気配が無い。


 余裕で乗り越えたわ。


 はーー。


 急がないと怒られる。


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