第27話 もう一つのダンジョン攻略
キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。
『リーベラティーオー』の纏め役。
プロンシキの元英雄。
死兵使い。
ジャド:『マギ』のメンバー。
『リーベラティーオー』の纏め役を引き継ぐ、予定。
真理への到達者。
アルコル:『復讐者』。
『救世主』とも呼ばれている。
黒巣壱白の分裂した姿。
『能力』が使える。
ネロ:『ディープフォレスト』のリーダー。
氷上国家カハの国王。
故人。
キシが死兵として使っている。
ローク:『トパーズ』のリーダー。
フレイズ:『マギ』のリーダー。
サリーン:『トパーズ』のメンバー。
ケイト:『トパーズ』のメンバー。
ロメイン:『マギ』のメンバー。
(『トパーズ』サリーン視点です。)
私達の置かれている状況を整理する。
チームの代表同士の試合が目前に迫っている。
だけどまだ攻略できていないダンジョンが一つ。
一つだけ攻略できていない。
ダンジョンの途中まで進むと、融合者、契約者の人数が制限されている。
こういうダンジョンの場合、全員の人数は七人が普通だった。
でもこのダンジョンは違う。
指定人数は、融合者、契約者ともに四人ずつ。
合計八人指定。
数多くのダンジョンを数十年攻略してきたが、こんなダンジョンはこの一つだけだ。
絶対に何かある。
このダンジョンは連合都市ゼスストの首都テセオンにある。
昔から、育成のために『トパーズ』で使ってきたダンジョンだ。
私達『トパーズ』はこのダンジョンの五十階層までで育った。
罠の少ないタイプのダンジョンだ。
ネロ王とジャドさんが迷宮都市から帰って来ていない。
人員はベストで無くなる。
帰りを待っていては、攻略する時間が無い。
チーム代表同士の試合までに攻略するのか?
リスクを回避し、放置するのか?
判断の為の会議が行われようとしていた。
キシ:「で?」
キシ:「攻略するか、しないか、どうする?」
フレイズ:「『マギ』は攻略する方を支持する」
キシ:「…………」
ローク:「『トパーズ』も攻略する方を支持する」
キシ:「…………」
アルコル:「決まりだな」
『ディープフォレスト』や『静寂』への確認は無い。
キシさんが操っていると数十年前に聞いていた。
私達は『ロストエンド』のレポートを手に入れている。
アルコルさんが『救世主』で無い事も、わかっていた。
キシ:「僕は反対だ」
アルコル:「理由は?」
キシ:「ジャドが不在だ」
キシ:「攻略は試合の後でも可能だ」
アルコル:「…………」
ローク:「一応確認だ」
ローク:「アルコル、貴方の意見は?」
アルコル:「攻略する」
フレイズ:「揉めている時間は無い」
フレイズ:「攻略する事で折れてくれ」
キシ:「はーあ」
キシ;「仕方ない」
キシ:「やるしか無いか」
アルコル:「誰が行く?」
キシ:「僕が決める」
キシ:「僕、アルコル、サリーン、ケイト、ロメイン、ベリー、ジュリット、アイアリ」
ローク:「聞いてたか?」
サリーン:「やるわ」
ケイト:「うん」
ロメイン:「緊張する」
フレイズ:「頼んだ」
ローク:「キシ、相変わらずアンタの負担が大きいが……」
キシ:「ジャドとネロがいない状況のベストでしょ?」
ローク:「ああ、任せた」
キシ:「やると決めたからには役目を果たすさ」
サリーン:「アルコルさんとキシさんが揃うって何年ぶり?」
ケイト:「さあ?」
アルコル:「午後から潜る、準備しろ」
今は午前十時三十分。
私達の午後は十三時からだ。
二時間半後。
覚悟は決まっている。
アルコルさんを管理者に推したら、他の管理者を全員始末するつもりだという事。
そうなればアルコルさんは世界を支えられないかもしれない事。
全て知った上で、アルコルさんを推すと決めた時から。
二時間半後。
十三時。
ダンジョン前にメンバーが揃った。
いや、キシさんがまだだ。
キシ:「はー、はー、間に合った?」
アルコル:「今過ぎた」
キシ:「『メメント・モリ』と『アビス』に連絡しといた」
サリーン:「なんて伝えたんです?」
キシ:「最悪死ぬかも、って」
ケイト:「ええ?」
ケイト:「返事は?」
キシ:「了解、って」
ロメイン:「ノリが軽い」
『メメント・モリ』と『アビス』は迷宮都市を攻略中のチームだ。
この二チームはダンジョン攻略を手伝ってくれないが、後々『フィナリスラーウム』と戦いになった場合、戦争に参加してくれる同盟を結んでいる。
ヌルっと突入した。
六十階層までは時間が掛らない。
走り抜ける。
六十階層にある、手を置く台座を出現させるところまで漕ぎ着けた。
初めてこのダンジョンのこの台座を見つけてから数十年経っている。
ついに攻略を始める。
八人で台座に手を置いた。
契約者が手を置く部分に、キシさんが創り出した三人が手を置いても通用する。
何度も試してわかっていた。
大きな音と共に、地面が動き、階段が出現した。
みんなで降りて行く。
やはり深い。
真っ直ぐ降りて行く。
踊り場に出た。
先に一本通路が有る。
通路の先は円筒形の空間だ。
いつも通り。
転送装置がある。
サリーン:「私が様子を見て来る」
キシ:「ベリー達でも良いんだよ?」
サリーン:「キシさんは三人を使い走りにしたくないのが本音でしょ?」
キシ:「だね」
キシ:「じゃ、頼む」
サリーン:「任されたわ」
転送先は水の壁と水の壁に細い通路がある。
水のエレメント人が出て来る、いつものやつ。
相変わらず天井は無い。
空が見える。
人数が八人でも、今の所変わりは無い。
水の壁に触れる。
手は、凄い勢いで後ろに流される。
身体ごと後ろに弾き飛ばされる。
ダンジョン攻略に慣れた今でも、この水の流れはどうにもできない。
通路の先にはエレメント人が出て来る筈。
強さが通常通りか確かめる。
通路を十メートル進んだところで、目の前の空中に水の塊が出現した。
水の塊は人型になった。
大きさは二メートル程。
いつもと同じに感じる。
脅威を感じない。
武器を持っていない。
そこが違う。
水のエレメント人との距離は二メートル。
水人はこっちを向いたまま静かに佇んでいる。
私は瞬きをした。
パチリ。
目を開いた時、私の体の右側に水人の左足があった。
私はとっさに防御する。
水人の回し蹴りは威力が大きかった。
私は左側の水壁に触れてしまった。
身体ごと後ろに弾き飛ばされる。
転送装置の上の屋根に叩きつけられた。
痛い。
間合いを詰める速さが尋常じゃない。
蹴りの威力もある。
出てきた水人は異常な強さだ。
何かカラクリがあるかも。
もう少し粘るか?
まだ強い敵が出た事しか解っていない。
もう少し情報が欲しい。
あと二時間は粘る。
戻ってもどうせ五分しか経っていない。
なら攻略するつもりで情報を得た方が、時間効率が良い。
気合を入れ直そう。
フー。
頬をバシバシと叩いた。
私はキシさんに選ばれた。
今回のメンバー選定は実力順だ。
ジャドさんの替わりに一番に声が掛ったのが、私だ。
光栄だ。
期待に応えたい。
私は自分の勘を信じている。
この攻略が私の正念場だ。
ここで良いとこ見せて私はもっと皆の好感度を稼ぐのだ。
目指せ、人気者。
水人は倒せる筈だ。
倒してしまって、効率の良い倒し方を伝える。
情報はこれがベストだ。
やってやる。
よし。
再チャレンジ、する。
良いとこ見せたい。
頑張る。
通路をもう一度十メートル進んだ。
水の塊が形になる。
二メートルの人型。
相変わらず武器無し。
さっきは蹴りを入れてきたが、格闘タイプだとは限らない。
自由に武器を具現化してくる可能性もある。
刃物での攻撃は、存在感へのダメージが大きい場合がある。
私はこの敵が格上であると想定する。
刃物で一撃貰うと即死の可能性が出てきた。
慎重に行く。
バックステップ。
後ろに飛んだ瞬間、矢を撃つ。
全力を出した。
光の矢が水人に向かって飛ぶ。
水人は薙刀を出して、矢を払い落とす。
その場からは動かない。
威力の高い攻撃だった筈だ。
だが水人の姿勢は崩れない。
静かに佇んでいる。
向かって来ない。
十メートルが境界線なのだろう。
どうする?
矢でチクチク削って様子を見るか?
間合いを詰めて見るか?
倒すのはあくまでも理想の話だ。
やはり情報を得るのが最優先だろう。
長槍で中距離から攻めてみる事にする。
私は長めの槍を出した。
水平に回転すると両壁の水に触れてしまう。
突きにしか使えない。
私は槍で水人を突いた。
光る突き。
これも全力だ。
連続では無い。
単発で、貫くつもりで突いた。
自然と動作が大きくなった。
水人は左手に盾を出して、光る槍の突きを左に逸らした。
水人の両足は地面に着いている。
ベタ足だ。
だがそのままの姿勢で、右手に槍を構え突っ込んできた。
丁度私は槍を引く動作をしていた。
槍の部分融合を解除し、左手に盾を装備する。
何が起こったか?
水人は『能力』スライドで移動してきた。
このダンジョンの敵は、『能力』を使ってくる。
ヤバい。
強い。
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