第13話 残弾ある?



 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

   『リーベラティーオー』の纏め役。

    プロンシキの元英雄。

    死兵使い。

 ジャド:『マギ』のメンバー。

 仮面の男:『復讐者』。

     『救世主』とも呼ばれている。

     黒巣壱白の分裂した姿。

     『能力』が使える。

 ベリー:『ウォーターフォックス』のサブリーダー。

    キシが具現化した像。

    元になった人物にキシが惚れていた。

 アイアリ:『ウォーターフォックス』のサブリーダー。

    キシが具現化した像。

 ジュリット:『ウォーターフォックス』のサブリーダー。

    キシが具現化した像。

 フレイズ:『マギ』のリーダー。

 フェオ:『マギ』の主要メンバー。

    男性。

    ジャドとは双子の兄弟。

 ロメイン:『マギ』の主要メンバー。

     女性。

 クイン:『マギ』の主要メンバー。

     女性。

     ジャドが惚れている。

     キシいわく、ベリーと雰囲気が似ている、との事。





(キシ視点です)


 やった。


 思惑通り。


 時間稼ぎ成功。


 カインの攻撃を遅らせた。


 仮面の男が間に合った。


 ジャド、ありがとう。


 僕も頑張ったでしょ?


 ジャドは仮面の男を届けるとすぐに瞬間移動して消えた。


 流石後輩、やることに卒がない。


 そうだ、この戦闘にはジャドはまだ早い。


 融合で能力が高まったって調子に乗らず、引くところは引く。


 無理しないところが良い。


 今後に期待だ。



 これで二対二。


 いや、三対二か。


 この場合人数をどう数えればいいんだっけ?


 いいぞ。


 余裕が出てきた。


 ポジティブに行こう。


 カインが狙撃で倒そうとした仮面の男が来た。


 真っ向勝負に分が無いと証明している様なものだ。


 これは勝機あるでしょ?


 無い訳無いでしょ。


 仮面:「俺の相手は?」


 キシ:「女性の方を頼む」


 仮面:「女か、苦手だ」


 キシ:「差別反対!」


 仮面:「はー、手は抜かないがな」


 シェルミ:「相手してあげる」


 カイン:「俺の相手はお前か」

 カイン:「舐められたもんだな」


 キシ:「こっちのセリフだ」


 カイン:「呼吸が整った」

 カイン:「シェルミ、俺の事は構うな」

 カイン:「俺も好きにやる」

 カイン:「お前もそうしろ」


 シェルミ:「わかったわ」


 ふー。


 呼吸が整った、だと?


 間に合ってなくない?


 マジかー。


 仮面:「死ぬなよ?」


 キシ:「弱音吐いていい?」


 仮面:「面倒事を増やすなよ?」


 キシ:「厳しい発言に言い直すなよ」

 キシ:「優しくしてー」


 カインは瞬間移動した。


 ふー。


 そう来ると思った。


 落ち着け。


 今は『ディープフォレスト』と『静寂』の具現化を解いて索敵範囲を広げている。


 僕の索敵範囲は奴の攻撃射程より広い。


 落ち着いて追いかける。


 二呼吸程の間が開くと見失う。


 見失うと死ぬ。


 一呼吸でやつの近くに瞬間移動し続ければ、負けない。


 裏をかかれて見失った上で近距離から中距離の間に来られたら防げない。


 カインの一撃は威力が大きすぎる。


 そうなると僕は死ぬ。


 しかも、相性的に僕がこいつの相手をしなきゃ、仮面の男も負ける。


 仮面の男は気配を読むのが苦手だ。


 索敵範囲が狭い。


 と、言うかピンポイントだ。


 精度は高いけどね。


 サテライトの範囲はマスターに話を聞いた時より広がっているみたいだが。


 青子さんと入れ替わった後の能力は未知だ。


 今回の攻撃で不意を打たれるまで弱点がある可能性を考えなかった。


 シェルミの相手は彼に任せて僕はカインをどうにかする。


 それしか手が無い。


 んー。


 違うか?


 嫌な事思いついてしまった。


 あーーー。


 勝てないかも。


 仮面の男も気付くはず。


 察してくれよ。


 弾切れを狙う。


 そうすればカインはシェルミの所に戻るだろ。


 それを狙う。


 残弾は後何発だ?


 瞬間移動させないで畳み掛けて倒す事も出来なくなった。


 何を危惧しているか?


 シェルミに仮面の男の攻撃が通るのか?


 そこを確認していなかった。


 もし通らなければ?


 なら、組み合わせが間違っている。


 僕がシェルミ担当の方が良かった。


 まずったか?


 いや。


 向こうが今の組み合わせを選んだら一緒か。


 仮面の男へ攻撃を当てられるのはカインだけ。


 カインを秒で仕留められるのは仮面の男だけ。


 この予感当たってそう。


 仮面の男、怒るなよ?


 選択権無いんだよ。


 耐えてくれ。


 手は有る。


 上手くやってやるさ。


 罠に嵌めるのは得意なんだよ。


 知ってた?


 カインが仮面の男に攻撃を仕掛ける隙も与えない。



 カインは魔道国家ネストロスの森の中に移動しやがった。


 シェルミと僕を遠ざけたのか?


 自分が仮面の男を相手したく無いのか?


 両方か?


 どっちでもいいさ。


 付き合ってやる。



 僕はカインがネストロスに飛んだと同時にカインの目の前に飛んだ。


 長柄のハンマーを斜め下から上に振り上げる。


 カインが盾で防いだタイミングでベリーをカインの真後ろに出現させ、ベリーは大剣を振り下ろす。


 カインは結界六枚で耐えた。


 結界は六面の立方体だ。


 立体を形作る事で強度を上げているんだろう。


 中々に強固だ。


 これは抜けない。


 僕は盾で弾かれた反動を利用して逆方向に一回転して今度は斜め上からハンマーで殴りかかる。


 ハンマーが触れる瞬間、カインは瞬間移動。


 やった。


 もう嵌めた。


 僕には七つの大罪”怠惰”と”嫉妬”がある。


 カインが僕に槍を投げたい中距離地点を予測して、僕も槍を投げる。


 ”憤怒”と”強欲”を使い、カインの遠距離攻撃を再現する。


 槍は部分融合で間に合わせる。


 一瞬遅れているのは、”暴食”で追いつく。


 残念。


 僕の方が速い。


 カインは槍を投げるしかない。


 相殺になる。


 僕の槍投げも捨てたものじゃ無いだろう?


 どう?


 ”強欲”で模倣したからな。


 完全再現は出来なかったけどね。


 同じ場所にもう一発槍を投げる。


 全力でだ。


 カインは防げない。


 カインは瞬間移動するしかなくなる。


 そして僕は先に別の場所に瞬間移動。


 聖国クリアへ。


 槍を投げる。


 また瞬間移動。


 聖国クリアと商業都市ノキシュとの中間地点へ。


 また槍を投げる。


 二発ずつ投げる。


 瞬間移動。


 投げる。


 瞬間移動。


 投げる。


 瞬間移動。


 この繰り返しだ。


 カインが逃げて瞬間移動する場所が”嫉妬”の予測で見えている。


 世界一周しといて良かったー。


 縦断はして無いけど、横断はしていた。


 さあさあ、どうなるか?


 残弾ある?


 残ってる?


 あれー?


 無い?


 無いよね?


 ある筈無いかー?



(仮面の男視点です。キシがカインを追いかけて瞬間移動した時点に戻ります)


 行ったか。


 俺の相手は女。


 苦手だ。


 青子を思い出す。


 同時に管理者の存在を感じる。


 全員始末したい。


 その結果、世界を俺一人で支えきれなくても、それでいい。


 管理者に頼らなければ存続できない世界など滅びればいい。


 管理者は数ある選択肢の中から、都合の良い道を選んでいる。


 そして、仲間である青子が消滅する道を選択しやがった。


 ふざけやがって。


 そんな選択許せると思うか?


 絶対に許さない。


 絶対にだ。


 運命は誰かに選択できるものであってはならない。


 俺の考えは間違っていない。


 確信がある。


 世界を勝手に調整しやがって。


 もっと公正なシステムに変更する。


 誰にも邪魔はさせない。



 シェルミ:「心ここに在らず、かしら?」


 仮面の男:「いや、いつもの事だ」

 仮面の男:「悪いな」

 仮面の男:「お前に恨みは無い」

 仮面の男:「但し、死んでもらう」


 シェルミ:「ふふふ」

 シェルミ:「その自信、何時まで持つかしら?」


 仮面の男:「攻撃が通らない自信があるのか?」

 仮面の男:「かもな」

 仮面の男:「それより名前を聞いて良いか?」


 シェルミ:「律儀なのね」

 シェルミ:「私はシェルミ」

 シェルミ:「気は済んだ?」

 シェルミ:「なら貴方は?」


 仮面の男:「俺か?」

 仮面の男:「俺に名は無いんだが……」

 仮面の男:「そうだな、アルコルと名乗ろう」

 仮面の男:「今決めた」


 シェルミ:「そう」

 シェルミ:「アルコル」

 シェルミ:「始めるわ」


 アルコル:「ああ」

 アルコル:「始めよう」



 俺は刀を右から左に振るう。


 斬撃が飛び、シェルミに届く。


 シェルミは防御しない。


 斬撃はシェルミを切り裂き、そのまま森に消えて行った。


 シェルミの切断面は瞬時に閉じた。


 予想通り。


 魔物の王と同じだ。


 超回復。


 だがどうだろう?


 痛みは感じないのか?


 そんな筈は無い。


 感じる筈だ。


 感じないなら楽勝で勝てるだろう。


 攻撃に反応するセンサーが無いなら、簡単にバラバラに出来る。


 連続攻撃を続ければ必ず防御する。


 手数で押して、封じ込める。


 決定打はキシが来てからになる。


 そう、キシは戻って来る。


 上手くやれよな。



 俺は斬撃を連続で飛ばす。


 シェルミは相変わらず防御しない。


 身につけている衣類も体の一部らしい。


 連続攻撃を浴びせても、衣類ごと回復する。


 シェルミは、ゆっくり、見せつける様に近づいて来る。


 向こうからの攻撃はまだない。


 ただゆっくりと近づいて来る。


 なかなか我慢強い。


 痛みを感じない筈がない。


 相当な精神力だ。


 まったく怯まない。


 浴びせた攻撃は、全て一撃必殺だ。


 逆にこっちの自信が砕けそうだ。


 一定の距離を取りながら、連続攻撃を続ける。


 戦いが長引くと面倒だな。


 いくら揺さぶろうとも想定の範囲内だ。


 さっさと攻撃を仕掛けて来い。


 やれやれ。


 まったく面倒だ。


 腹が立ってきた。


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