第5話 マギ

 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

    『リーベラティーオー』の纏め役。

    プロンシキの元英雄。

    死兵使い。



 新生ロベストロニア帝国に着いた。


 チームメンバーに到着の報告をし、喫煙所に向かう。



 僕の神獣は、スライムだ。


 大きさは自由自在。


 物理攻撃を完全にいなす。


 魔法耐性も高い。


 但し、スピードに弱点がある。


 素早く動けるのは水の中だけだ。


 お陰で水魔法を鍛える羽目になった。


『ウォーターフォックス』は神獣と水魔法で連携する所からつけた。


 話が脱線していけない。


 喫煙所だ。


 走っての移動だったので、大変疲れた。


『ディープフォレスト』のメンバーの神獣を再現すると消耗が激しい。


 全員で走って移動した。


 ネロはベル、黒沼直樹の大学の後輩だ。


 面識がある。


 抜き取った情報から察するに、対抗意識もあったらしい。


 知識面でも負けていない。


 僕は瞬間移動出来るようになった。


 空間転移と人工衛星に対抗できる。


 ネロは死んでいるから、結局自分一人でやるんだが。


 移動の方は装置を設置すれば良いだけだ。


 製作はネロとクターの知識でなんとかなりそうだ。


 人工衛星は、レイセが用意した分を壊す。


 僕は人工衛星を上げる必要が無い。


『復讐者』に頼る。


 彼の『能力』のサテライトに頼る。


 また脱線した。


 喫煙所。


 タバコを吸うのよ。




 スー。


 ハー。


 スー。


 ハー。


 あー、落ち着いた。


 帰って来た感が出た。


 そうそう、これこれ。



 喫煙所にいると『トパーズ』のニックが来た。


『トパーズ』で吸うのは、ニックとガドルだけだ。


 ニックがチームの調整役。


 ガドルがノリ良く合わせる役。


 自然と会話が生まれる。



 ニック:「長旅お疲れ様です」


 キシ:「ああ、疲れたよ」


 ニック:「でしょうね」



 さっき報告は済ませた。


 カハが、『ディープフォレスト』が仲間になった事は話題にならない。



 ニック:「食事はどうでした?」


 キシ:「しっかりしていた」

 キシ:「フランス料理みたいなコース料理が出て驚いた」


 ニック:「いいですね」

 ニック:「フランス料理か」

 ニック:「白身魚をナイフとフォークで食べるイメージです」


 キシ:「間違いじゃ無いけど、メインは柔らかく煮込んだ牛頬肉とかだよ」


 ニック:「興味が増しました」

 ニック:「『ディープフォレスト』のメンバーに料理人いますか?」


 キシ:「はは、料理人がいるのは『トパーズ』だけじゃない?」

 キシ:「まー、可能性が有るとすればネロかな」


 ニック:「王かー」

 ニック:「ハードルが高い」


 キシ:「話のネタにはなるかもね」


 ニック:「なるほど」


 キシ:「あいつ、疲れるとタバコ吸うしね」


 ニック:「へー」


 キシ:「ところで、『マギ』のメンバーとはもう会ったかい?」


 ニック:「それはもちろん」


 キシ:「印象は?」


 ニック:「自分で判断された方が良いですよ?」


 キシ:「客観的な目が欲しいのさ」


 ニック:「……」

 ニック:「精神的な未熟さを感じました」


 キシ:「……」

 キシ:「んー、他には?」


 ニック:「警戒心が薄い」

 ニック:「さっきの感想と繋がりますが」

 ニック:「あと、全員の神獣に異質さを感じます」


 キシ:「『マギ』の神獣は、現世での精霊って感じらしいよ」


 ニック:「なるほど、納得です」


 キシ:「警戒心が薄い、か」

 キシ:「僕にも適応されるんだろうか?」


 ニック:「知りませんよ」


 キシ:「だよなー」

 キシ:「困ったな」


 ニック:「僕らは、何か教えると騙してるような気になるんじゃ、って心配してます」


 キシ:「僕もそれで困ったなって」


 ニック:「今、嘘つきました?」


 キシ:「さー、次の仕事だ」


 ニック:「はは」

 ニック:「もう一本吸ってから訓練に戻ります」


 キシ:「ああ」

 キシ:「明日からダンジョン攻略を開始する」

 キシ:「ほどほどに」


 僕は喫煙所を去った。




『マギ』の神獣は強力らしい。


 反して、主の精神が未熟らしい。


『トパーズ』は生かしたままだ。


 独自の判断で動いている。


 僕の思惑通りに動いている訳じゃ無い。


 でも、『リーベラティーオー』全員を死兵にするのは抵抗がある。


 処理能力の問題じゃない。


 臨機応変さの問題だ。


 人間は主観でしか物事を判断できないと思っている。


 僕一人で全てを司ると、僕の弱点に綺麗にハマった時に致命傷になる。


 自分以外の視点も必要だ。


 過信してはいけない。


『マギ』はどう扱うべきだろうか?


『マギ』は、魔道国家にいた所為で情報が少ない。


 魔道国家は『フィナリスラーウム』と関係が強い。


 んー。


 どうする?


 会う前に案を考えておきたいところだ。


 一時間半後には顔合わせだ。


 直に触れ合って印象を確かめるのが一番確実だ。


 そういう方向にもっていこう。


 頑張れ僕。




 一時間半経った。


『ディープフォレスト』と『静寂』を全力で操作した。


 あっという間に時間が経過した。


 僕の隣では、『ウォーターフォックス』のサブリーダーが会話している。



 アイアリ:「勝ち抜き戦がしたい」


 ベリー:「限りないじゃない」

 ベリー:「私、眠い」


 ジュリット:「疲れない?」

 ジュリット:「のんびりできるのが良いな」


 キシ:「ベリー、今度の土曜日だけど……」

 キシ:「時間、ある?」



 リアルに再現し過ぎて、ほぼ自動操縦なんだよね。


 イメージが暴走してるって言うか。


 ベリーを口説いてしまうのを辞められない。


 そして、答えはわかってる。



 ベリー:「ごめん」

 ベリー:「予定が入ってる」


 キシ:「そっか」


 予定なんか無い。


 僕はベリーがOKするイメージを持てないだけだ。


 凹んできた。


『マギ』がまだ来ない。


 早く来てくれー。


 それから五分間、アイアリとジュリットにからかわれた。




『マギ』のメンバーが、続々と会議室に入って来る。


 順番に名乗っていく。


 入って来たのは八人。


 リーダーはフレイズ。


 サブリーダーがロミルカ。


 他にメンバーが六人。


 チームは全員で三十人。


 主要メンバーは八人らしい。


 なぜかクインと名乗った女性から目が離せない。


 ベリーに感じる感情と似ている。


 そして、クインを気遣う気配。


 ジャドと名乗った男性に、共感を覚える。


 ジャドはクインを好いている。


 まず間違いが無い。


 チーム全員の印象は、若い、だった。


 恐らく、最短距離でここまでたどり着いたんだろう。


 苦労らしい苦労をしていないんじゃ無いかと思う。


 僕は二千歳を超えている。


 教えたい事は山ほどある。


 そう、生かして使う事にした。


 クインを殺せそうにない。


 僕にはベリーがいる。


 ジャドを手助けしたい。


 ジャドの僕に対するイメージはどうだったんだろ?


 正直、僕の後釜は彼に決定って感じだ。


 第一印象で決めるのは間違いか。


 慎重さもいるんだった。


 まずは会話だ。


 キシ:「はじめまして、みなさん」


 フレイズ:「はじめまして」

 フレイズ:「僕が代表して答えます」

 フレイズ:「リーダーのフレイズです」


 キシ:「よろしくお願いします」


 フレイズ:「『リーベラティーオー』に参加したいのですが、受入れて貰えるんですよね?」


 キシ:「もちろん」

 キシ:「但し、形式的ですが、目的を確認します」

 キシ:「いいですか?」


 フレイズ:「目的は契約解除です」


 キシ:「僕は契約解除を手助けしますが、僕自身が共感している訳じゃない」

 キシ:「その事は?」


 フレイズ:「理解してます」

 フレイズ:「相談にも乗って頂けるとか?」


 キシ:「?」

 キシ:「相談には乗りますけど、僕は胡散臭いらしいですよ?」


 フレイズ:「一人で複数の契約をしているなど、問題を多く抱えてまして……」


 キシ:「相談相手が欲しいと?」


 フレイズ:「そうなんです」


 キシ:「今おられる主要メンバーはダンジョン攻略を完了していますか?」


 フレイズ:「いえ、ロメイン、クイン、ジャドがまだです」


 そうだろう。


 そんな気がした。


 キシ:「では、貴方とその三名を入れて、ダンジョン攻略をしてみましょう」


 フレイズ:「その、可能なんでしょうか?」


 キシ:「可能です」

 キシ:「仮面の男『救世主』を呼び出します」


 フレイズ:「いいんですか?」

 フレイズ:「聞くところによると、別行動とか」


 キシ:「僕はこのダンジョン攻略が終わったら、大迷宮に向かいます」

 キシ:「大迷宮の四チームから引き抜けるだけ引き抜いてきます」

 キシ:「『救世主』が来ると時間は掛かりません」

 キシ:「難なく終わりますよ」


 フレイズ:「わかりました」

 フレイズ:「よろしくお願いします」


 キシ:「ハイ」

 キシ:「よろしくです」



 ジャドにクインか、話していないのに好感度が高い。


 初めての経験だ。


 面白くなってきた。

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