第3話 トゥエルブ
レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。
黒戸零維世。
連合国クロトと聖国クリアの王。
リビア:聖国クリアの元代表。
レイセと結婚している。
プロミ:プロミネンスの略で通り名。
本名はルビー・アグノス。
黒崎鏡華。
月と太陽の国アウグストラの女王。
国では現人神と扱われている。
レイセと結婚。
カーミュ:カーミュ・セーグル。
『トゥエルブ』第一席。
冒険者ギルドを創設。
アスマ:アスマ・アーゼス・カミキ・セーグル。
『トゥエルブ』第二席。
神木遊間。
メイ:メイ・ルイ・カジワラ・トト。
『トゥエルブ』第五席。
融合者。
ニーナ:ニーナ・アイマー。
黒戸美月と融合した。
五章主人公。
歌手。
ニーナ・アイマーのコンサートは戴冠式を行ったのと同じ闘技場で行われた。
人が大勢集まった訳じゃない。
私的なコンサートだ。
集まったのは、魔物の王の配下ギルバドとの戦争時のメンバーだ。
今度は『悠久の旅人』の二人や、ジークも来ている。
もちろん『トゥエルブ』も全員来ている。
『創聖』も来ていた。
その他関係者を含めても百人ほどだ。
ニーナは歌い、アリアが演奏を指揮した。
二十数曲が演奏され、最後の曲が歌われた。
出席者は全員、俺とカーミュが融合する事を知っていた。
人格、魂の融合は、喪失を伴わない。
だが、思想に幅が広がっても、現れる態度には一定の限界が有る。
その人らしさは見る人によって感じ方が違う。
カーミュらしさを俺が表現している間、俺らしさはカーミュの影に隠れる事に成る。
どうしようもない。
以前、融合が死ぬこととどう違うのかと聞かれたことがある。
その時は、死んだ事が無いのでわからないと答えた。
今は答えられる。
違う。
似ているが違う。
全く別のナニカになるが、引き継がれている。
最後の曲は、『――――』だった。
演奏が終わり、人が帰り始める。
時刻は夕方。
やけに赤い夕陽に照らされながら、人が帰るのを待った。
すでに仲間にはこの後の事を説明していた。
ほとんどの仲間を帰らせた。
日が完全に落ちた頃、俺とカーミュは闘技場の中央で手を繋いだ。
精神を同調させる。
俺達は重なり合った。
レイセと比較して身長が少し伸び、髪の色が黒から濃紺に変わる。
少し間をおいて、全身が黄金に輝き出した。
クレラメイとジークの時には無かった現象だ。
しばらくすると輝かなくなった。
瞼の裏で、レイセとカーミュの記憶が一度に流れ込んで来る。
一瞬のめまいの間に、人生二人分を体感した。
情報量が多い。
多いと感じていたが。
不快感は無かった。
残ったのは、レイセだった。
俺はレイセと名乗り続ける。
レイセ:「プロミ、リビア」
レイセ:「もう少し待っていてくれ」
レイセ:「やる事がある」
観客席から見ていた二人にそう声を掛けた。
『トゥエルブ』のメンバーは十二人。
第一席、カーミュ・セーグル。
第二席、アスマ・アーゼス・カミキ・セーグル。
第三席、マサト・バフェル・ショウウン・メジー。
第四席、リク・ジュカー・アザイ・ゲームク。
第五席、メイ・ルイ・カジワラ・トト。
第六席、オウジ・べワド・フジモト・ブルク。
第七席、ソウタ・オセル・カミキ・リンブル。
第八席、ソラ・ボイム・ハライ・フェイス。
第九席、ゲン・ナドエワ・タツミ・ロミル。
第十席、ミキ・イヴ・クリバヤシ・マーズル。
第十一席、ハルキ・タトー・モリ・タリオク。
第十二席、ヒカル・カイオン・ナルミ・ハウルス。
第一席のカーミュがレイセを名乗る。
つまり第一席がレイセになる。
席はそのまま戦闘力の順位だ。
トップが交代したという事。
他の十一人に認められなくてはいけない。
闘技場を選んだのはそういう理由だ。
最初に攻撃を仕掛けてきたのは、第八席のソラだ。
上空に飛び上がり、急角度から矢を連続で放ってきた。
頭を庇うように矢を弾く。
第四席リクと、第六席オウジが間合いに入って来る。
ソラは上空に結界を広げ、足場にし、連続で矢を放ち続けている。
俺が矢を弾いた瞬間、二人は間合いを詰めてきた。
オウジはダガーを一本ずつ握っていた。
片方は逆手。
振われたダガーを下から突き上げる。
オウジの右腕が折れる。
更に右足でハイキック。
右前にいたオウジが左に吹き飛ぶ。
リクの振るったハンマーを結界で防ぎ、そのハンマーの根元を斧で攻撃。
先の無くなったハンマーをリクが手放したと同時に、俺の右こぶしがリクの顔面を捉えた。
下から突き上げるようなパンチを受け、リクが斜め上に吹き飛ぶ。
両足を大きく広げ、屈伸。
ジャンプ。
ソラが大盾で防御していたが構わずハンマーで叩く。
大盾が粉砕し、ソラは地面に激突。
ジャンプの最高到達点に投げ込まれた槍を掴んで投げ返す。
第十二席ヒカルに向かった槍を第九席ゲンと第十席ミキが結界で防御。
結界全てを粉砕し、ヒカルの大盾で止まる。
俺は結界を足場にして、下に跳躍。
左足で地面に着地し、勢いを殺さず前に跳躍。
魔法を放とうとしていた第十一席ハルキの胴に右足が減り込む。
ハルキはその場に崩れ落ちた。
ミキとゲンが矢、ヒカルが魔法を使い金属の弾を放った。
同時に第二席アスマと第三席マサト、第五席メイが間合いを詰めて来る。
俺は黄金の領域を間合いに展開。
全ての飛び道具が領域に静止する。
俺はバスタードソードを両手で握り、水平に構えた。
アスマとマサトが間合いに入ったと同時にバスタードソードを振り抜く。
俺から見て右側のマサトが防御、左側のアスマが攻撃。
バスタードソードは刃を潰してある。
マサトの結界と盾の上に打撃を与え、マサトは横に吹き飛ぶ。
アスマの双剣を、十一本の飛翔する剣でいなす。
矢と金属の弾がその場に落下する。
俺はミキとゲンの間に跳躍し、バスタードソードを振るう。
ミキとゲンは盾で防いだが衝撃で気を失った。
マサトが槍で突いてきたが、躱して、ヒカルの前に出る。
マサトの槍を躱しながらヒカルの間合いに入る。
躱しながらそのまま一気に間合いを詰め、ヒカルの首を掴んで落とした。
マサトが双剣で連続攻撃を仕掛けてきた。
その後ろから、第七席ソウタが大剣で横に払ってきた。
右手片手剣でマサトの連続攻撃を捌き、ソウタの大剣を左の片手剣で上に弾く。
ソウタの首に左片手剣の腹を打ち付け、マサトの双剣を右手で粉砕する。
マサトが、崩れ落ちたソウタに目をやったタイミングで、マサトの首を掴み落とす。
離れて観察していたメイが更に間合いを詰める。
メイは大剣を前に構えた。
アスマへは飛翔する剣が相手している。
俺のバスタードソードがメイの大剣を弾く。
メイは焦らない。
俺がバスタードソードで彼女の大剣を弾いても、同じ間合いを維持し武器を構え直す。
隙が無い。
今までの様に一気に入っていけない。
時間を稼いでいる。
力の融合の持続時間が短いと思っている。
カーミュからそう聞いたのか?
なら、アスマが来るまで待ってやる。
数十秒後、アスマは飛翔する剣を引きつけたまま、メイと合流した。
俺がメイの大剣を弾こうとバスタードソードを振るうと、アスマが割って入って防御した。
メイが武器を変更して間合いを詰める。
俺は後ろに後退しながら飛翔する剣を戻す。
アスマが弓を構える。
俺は双剣を使う。
左手でメイのダガーを弾き、少し遅れて右手でアスマの矢を弾く。
左足でメイを膝蹴り。
メイは盾を間に入れたが衝撃で吹き飛ぶ。
間合いを詰めてきたアスマに水平に払ったバスタードソードが命中する。
盾で防御しても無駄なのは同じだ。
横に吹き飛んだ。
十一人全員が地に伏せた。
レイセ:「これで実力は認められたか?」
アスマ:「ふざけやがって、どういう腕力してやがんだ」
レイセ:「返事は?」
アスマ:「わかった」
アスマ:「認めてやるよ」
メイ:「腕が折れた」
メイ:「体感スピードは変化しましたか?」
レイセ:「ああ、動きがゆっくりに感じられる」
レイセ:「調子に乗ってしまいそうだ」
レイセ:「プロミ、リビア」
レイセ:「戦闘終了だ」
レイセ:「帰るよ?」
リビア:「転がってるメンバーはどうするんです?」
レイセ:「『トゥエルブ』は柔じゃない」
レイセ:「自分たちで何とかする」
プロミ:「神獣はどうなったの?」
レイセ:「二体に増えた」
レイセ:「色が変化した」
レイセ:「黒竜は黄金竜になった」
プロミ:「意識は?」
レイセ:「レイセがベースだな」
レイセ:「でも、クリアもカーミュも感じる」
レイセ:「今回は融合に時間が掛ってないから態度に差を感じるかもな」
リビア:「同一存在がどういう感じか知っている私達じゃ無かったら、不気味がっていました」
プロミ:「確かに」
レイセ:「どうしようもない」
レイセ:「ついていたとしか言えないな」
レイセ:「これで準備が整った」
レイセ:「上手く引き分けに持ち込む」
レイセ:「協力してくれよ」
プロミ:「ええ」
リビア:「そうですね」
アスマ:「そうだな」
アスマ:「協力してやる」
メイ:「発言がカーミュっぽいかも」
レイセ:「メイ」
レイセ:「意識しないでくれ」
レイセ:「やり辛い」
リビア:「ちょっと面白く感じますね」
プロミ:「威厳出るかもね」
レイセ:「お前ら、レイセがカーミュに劣っている感じがして嫌だぞ」
レイセ:「対等な」
皆は笑った。
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