第1話 カーミュ・セーグル
レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。
黒戸零維世。
連合国クロトと聖国クリアの王。
リビア:聖国クリアの元代表。
レイセと結婚している。
プロミ:プロミネンスの略で通り名。
本名はルビー・アグノス。
黒崎鏡華。
月と太陽の国アウグストラの女王。
国では現人神と扱われている。
レイセと結婚。
カーミュ:カーミュ・セーグル。
『トゥエルブ』第一席。
冒険者ギルドを創設。
アスマ:アスマ・アーゼス・カミキ・セーグル。
『トゥエルブ』第二席。神木遊間。
メイ:メイ・ルイ・カジワラ・トト。
『トゥエルブ』第五席。
融合者。
ニーナ:ニーナ・アイマー。
黒戸美月と融合した。
五章主人公。
奴の輝き方が変わって形勢は完全に覆った。
バスタードソードでの攻撃が速く、重くなっている。
武器の強度で優っているので、なんとか受け止めて凌いでいる。
でも、やっとって感じだ。
攻撃を受け止めるだけで、ゼエゼエと肩で息をしてしまっている。
反撃の糸口は?
何か無いか?
レイセ:『レムリアス、策は?』
レムリアス:『…………』
なにかあるが言えないって?
そうかよ。
なら自分で考える。
奴がやった事をそのままマネできないか?
奴と俺は同一の存在だ。
奴に出来るなら、俺にも出来る筈なんだよ。
奴がやった事とは?
光を放出。
これは俺もやった。
次は光を内包した?
それでスピードと威力が上がるのか?
上がるんだろうな。
やるしかない。
光は内側にあった物が外に溢れている訳じゃ無い。
身体能力の強化をイメージすると、体から発生しているんだ。
その発生させた力を、体内に内包する。
そういう事だろう。
精神を集中する。
ふぅーーー。
出来た。
身体が軽くなったのを感じる。
カーミュ:「……」
カーミュ:「やっぱりか」
カーミュ:「ならこれに付いて来れるかい?」
今度は奴の十一本の飛翔する剣が光を放出している。
飛翔する剣の動きが格段に良くなった。
また、スピードと威力が一段上がった。
飛翔する剣を俺の武器で弾くと、バラバラに砕けるが、威力が増している。
だが、凌げる。
更に飛翔する剣は光を内包した。
光を内包した飛翔する剣は、砕けなくなった。
俺の武器で弾いても、軌道を逸らして戻って来る。
威力もスピードも上がっている。
途端に忙しくなった。
武器で躱せない攻撃は結界で凌ぐ。
はぁー。
それにしても。
カーミュ。
こいつどういうつもりだ?
俺を指導しているつもりか?
自分の存在が掛ってるんだぞ。
ふざけやがって。
真剣勝負じゃないのか?
なんのつもりだ!
レイセ:「……」
レイセ:「ハァー、ハァー」
レイセ:「お、おまえ、どういうつもりだ?」
カーミュ:「何がだ?」
レイセ:「何故一気に攻めてこない?」
レイセ:「お前の方が強いだろ」
カーミュ:「……」
カーミュ:「そう思ってるなら、君は自分の実力を過小評価している」
レイセ:「ハァー」
レイセ:「ハァー」
レイセ:「お前が手加減しなきゃ、俺に会話の余裕はない」
レイセ:「実力差は歴然だ」
カーミュ:「君に焦りが感じられない」
カーミュ:「私は慎重なだけだ」
カーミュ:「君が付いて来られなくなったら私の勝ちさ」
カーミュ:「君には爆発力がある」
カーミュ:「警戒は必然だ」
レイセ:「そうか?」
レイセ:「俺にはお前が俺を鍛えている様に感じるが」
カーミュ:「そういう見方も出来るな」
レイセ:「勿体ぶるな」
レイセ:「真意を話せ」
カーミュ:「私は駆け引きしない」
カーミュ:「全て真意さ」
レイセ:「じゃー、質問を変えてやる」
レイセ:「目的は?」
カーミュ:「エウェルさんの愛が欲しい」
レイセ:「そう来たか」
レイセ:「なら、目的は達成だな」
カーミュ:「やはりそうか」
カーミュ:「接触があったんだな?」
レイセ:「プロミとリビアにはまだ話していない」
レイセ:「たぶん今驚いている筈だ」
カーミュ:「……」
カーミュ:「本気で君を試す」
カーミュ:「負荷を上げる」
カーミュ:「付いて来れ無きゃ君の負けだ」
カーミュの見た目は変化していない。
だが動きが格段に良くなっている。
バスタードソードの一振りで、両手の武器が吹き飛ばされる。
俺は武器から手を離してしまった。
プロミとリビアが元の姿に戻る。
次にバスタードソードが振るわれたら、俺の負けだ。
だがまだだ。
なんとかしてやろう。
俺はまだ負けていない。
俺は絶望を感じていない。
まだやれる。
まず、神獣を光らせる。
一心同体なんだから、俺の意思で光らせる事が出来る筈だ。
部分融合の鎧から光が出た。
出来た。
そして光の内包。
神獣でも、部分融合でも同じ事だ。
出来た。
次が問題だ。
カーミュが何をしたかわからなかった。
でも格段に動きが良くなっていた。
何かやっている筈だ。
俺は二百年間武器を振るっていた時、プラスアルファをどう出すか考えていた。
クリアと零維世が束なった事による、力の相乗効果。
融合による力の増幅。
カーミュは融合していない。
では、カーミュの動きが良くなった理由は?
………。
急げ、俺。
時間が無い。
考えろ!
わかった!
神獣との融合による力の相乗効果だ。
人と融合していない契約者が神獣との力の相乗効果を編み出せるなら、俺はどうなる?
俺は零維世とクリアとレムリアスの力を引き出せる。
一人多い分、もっと大きな力が引き出せるんじゃ無いか?
契約者より、融合者が強いのは、そういう理由か?
やってやる。
同時に全部を内包し、練り上げる。
俺は水平に振るわれたバスタードソードを両手で受け止めた。
そしてそのまま押し返した。
吹き飛ばされたカーミュが訓練場の壁面に着地する。
カーミュ:「やはりか」
カーミュ:「こうなると思った」
レイセ:「勝負ありか?」
レイセ:「負けを認めるんだな?」
カーミュ:「ああ、こうなっては勝てない」
アスマ:「なんで負けを認めるんだよ」
アスマ:「お前らしくないぞ」
メイ:「そうですよ」
メイ:「最後まで諦めないのが『トゥエルブ』です」
レイセ:「そう責めてやるな」
レイセ:「こいつにはもう戦う目的が無いんだ」
カーミュ:「……」
カーミュ:「済まない」
プロミ:「目的がエウェルさんってどういう事?」
リビア:「そうです」
リビア:「どういう事ですか?」
レイセ:「俺に全滅の未来を見せたのが、『女性』の管理者だった」
レイセ:「と、言うのは言ったな?」
プロミ:「ええ」
レイセ:「『女性』の管理者と同一存在だったのがエウェルだ」
カーミュ:「それだけじゃないでしょう?」
カーミュ:「話しておくべきです」
レイセ:「……」
レイセ:「俺に話す気は無かった」
レイセ:「悩むからな」
リビア:「私とプロミが同一の存在という話でしょうか?」
カーミュ:「それだけじゃ無い、貴方達は『女性』の管理者と同一です」
プロミ:「なるほどね」
リビア:「私達が気付いてないと思ってたんですね?」
レイセ:「関係ない」
レイセ:「俺はお前達にはそのままでいて欲しい」
レイセ:「それだけだ」
プロミ:「って貴方が辛いからでしょ?」
プロミ:「勝手な奴」
レイセ:「ハァー」
レイセ:「俺の身にもなれよ」
レイセ:「それで、アスマ」
レイセ:「納得できたか?」
アスマ:「まあな」
アスマ:「兄貴が『最初の冒険者』のヒロインに惚れていたのは知っていた」
アスマ:「兄貴は実現できるなら必ずやり遂げてきた」
メイ:「そうですね」
カーミュ:「まあそうだね」
カーミュ:「今回も辿り着いてしまった」
カーミュ:「照れるな」
カーミュ:「それに融合だからね」
カーミュ:「自分の意識が全て押し流される訳じゃないしさ」
アスマ:「それはそうだけど……」
メイ:「決めてしまうと絶対に曲げないから、言っても無駄なんですよね」
アスマ:「そうだったな」
プロミ:「レイセは結構グラグラよ」
リビア:「ですね」
リビア:「優柔不断なところあります」
カーミュ:「ノーコメント、かな?」
レイセ:「カーミュも自信無いらしい」
レイセ:「この二人は特別なんだよ」
レイセ:「そう感じるんだ」
レイセ:「だから結婚した」
レイセ:「お前らにもわかるはずだ」
アスマとメイは顔を見合わせた。
バレていないと思っていたらしい。
カーミュは苦笑いだ。
アスマ:「お、俺達の事は良いだろ?」
リビア:「結局、さっきの戦闘ではなにが起こったのです?」
プロミ:「そうよ」
プロミ:「どうなったの?」
話しの切り替えが上手い。
頼りになるなー。
レイセ:「光を放つ攻撃の威力を高めると、体が光るよな?」
プロミ:「そうね」
プロミ:「光る」
リビア:「ですね」
レイセ:「出したい部分以外が光るってのは、無駄が出てるって事だ」
レイセ:「出てしまった無駄な部分を、もう一回内包する」
レイセ:「力の循環効率を向上させる」
レイセ:「そうすると、もう一段階引き出せる力が上がる」
プロミ:「そうね」
プロミ:「言ってなかったっけ?」
リビア:「初耳です」
プロミ:「で?」
プロミ:「神獣でも同じことが出来ると?」
レイセ:「察しがいいな」
レイセ:「その通り」
レイセ:「光を内包するのを伝えとけよ」
カーミュ:「そんな、ついでみたいにしか指摘できない力関係なのか、そうか」
リビア:「カーミュ」
リビア:「あくまでも対等です」
アスマ:「どこがだよ!」
プロミ:「で?」
プロミ:「その後、どうなったの?」
レイセ:「俺達融合者は、存在が融合されたが、力までは融合しきっていない」
レイセ:「力を融合すると地力が上がり過ぎる」
レイセ:「本能的に避けてきた、筈だ」
レイセ:「光を内包した状態で、本能的に避けてきた力の融合を、意識的にやる」
レイセ:「本能的に避けてきたのは、神獣の力も同じだ」
レイセ:「そこも意識する」
レイセ:「全部を融合すると、地力が飛躍的に上がる」
プロミ:「『トゥエルブ』で、カーミュ以外に力の融合が出来る人いるの?」
カーミュ:「いないな」
リビア:「だと思いました」
リビア:「どうしましょう?」
リビア:「練習する時間が無い」
メイ:「今回の戦争に間に合わせたいと?」
メイ:「無理に決まってる」
アスマ:「イメージの流し込みでも無理だった」
アスマ:「理由もわからなかった」
アスマ:「本能的に避けている?」
アスマ:「だと?」
アスマ:「今聞いたぞ」
この後、俺達はニーナの歌を聞く日とそのスケジュールを確認し、解散した。
カーミュと融合すれば更に戦闘力が上がる。
長い年月を生き、自分と同一の存在と融合する。
その在り方は正しいのか?
融合する事によって無くすものはないのか?
好転する状況の中で、人からかけ離れて行く自分に漠然とした不安を感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます