7章

プロローグ



 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     リビア・クロト。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

     レイセと結婚。

 カーミュ:カーミュ・セーグル。

      『トゥエルブ』第一席。

      冒険者ギルドを創設。

 アスマ:アスマ・アーゼス・カミキ・セーグル。

     『トゥエルブ』第二席。神木遊間。

 メイ:メイ・ルイ・カジワラ・トト。

     『トゥエルブ』第五席。

      融合者。

 ナナ:聖国クリアのメイド。

    契約者では無い。

    戦闘能力も無い。

    有能。



 『トゥエルブ』の本拠地は南大陸の端にある。


 『トゥエルブ』が結成される前、元はカーミュとアスマ、あともう一人の三人でチームを組んでいたらしい。


 その三人組は目覚ましい功績を挙げ、一気に有名になった。


 あとのもう一人の詳しい情報は手に入らなかった。


 だが今回、もう一人がどんな人物だったかは関係ない。


 重要なのは『トゥエルブ』が結成される前から、カーミュの存在は目立っていたという事だ。

 

 目立つ、という陳腐な表現ではダメだな。


 輝きを放っていたと言うべきか。


 カーミュが頭角を現したのは俺が契約する少し前位らしい。


 『最初の冒険者』の海賊版を手に入れたカーミュは、冒険者になった。


 俺が素振りに明け暮れた二百年の間に、兄弟のアスマと協力し、仲間を得、冒険者ギルドを創設するに至る。


 そして、何らかの方法で神の法則にアクセスする手段を得たらしい。


 神の法則、つまり、根源の源である塊の更にその核となるナニカに至ったという事だ。


 魔法の体系化、ステータスの一般化は、ナニカに至ったカーミュが自ら得た情報をデータベース化して成立しているらしい。


 世界を革新に導いている。


 技術面が際立っているように感じるだろう?


 だが、戦闘面も素晴らしい。


 融合者で無いにも関わらず、部分融合を早くから操り、一騎打ちでは負け無しらしい。


 神獣は、剣魔。


 十一本の飛翔する剣を従える、特殊形状の剣の魔物だ。


 剣魔は刀身の異様に長い、片刃直刀のバスタードソードらしい。


 対人戦、対多数戦、両方に対応出来る。


 『トゥエルブ』と冒険者ギルドの関係は公表されていない。


 俺も調べるまで知らなかった。


 冒険者ギルドが最近の『トゥエルブ』と『フィナリスラーウム』の関係を考慮して口を割った。


 『トゥエルブ』が冒険者ギルドを動かしている。


 以前、冒険者ギルドを後回しにしようとプロミと話していたが、正解だったらしい。


 早くからカーミュに接触していたら、全てをカーミュに任せてしまっていた事だろう。


 ハッキリ言って化け物だ。


 突出しているという言葉では表現しきれない。


 その上、カリスマ性があるらしい。


 まったく凄い奴だ。


 俺の経歴もたぶん言葉にすると大概だろうが、こいつには負けているかもしれない。


 こんな奴が俺と同一存在らしい。


 ドッペルゲンガーみたいに、見たら死ぬ、とか無いよな?


 まだ死ぬつもり無いぞ。



 

 聖都クリアの城。


 大広間の玉座は、床より二段高い所にある。


 俺は階段を二段降りて待っている。


 隣には、プロミ、リビア。


 広間の扉の前に使用人のナナがいるが、その他は誰も居ない。


 人払いをした。


 ナナは気配に気付かなかった。


 大広間の扉は大きく開かれた。


 音は無い。


 スーッと開かれたあと、コツコツと足音が響く。


 足音は三人。


 前を女性が、後ろを二人、男性が来る。


 男性一人は、長い剣を肩に立てかけて歩いて来る。


 三人は目の前で止まった。


 三人とも頭を下げない。


 不敬な奴らだ。


 だが嫌いじゃ無い。


 前の女性が口を開く。


 女性:「『トゥエルブ』第五席、メイ・ルイ・カジワラ・トトです」

 女性:「お見知り置きを」


 リビア:「……」

 リビア:「頭を下げないのですか?」

 リビア:「感心しませんね」


 男性:「あっはは、言われたな、メイ」

 男性:「確かに、失礼でした」

 男性:「お詫び申し上げます」


 プロミ:「貴方は?」


 男性:「おっと、これまた失礼」

 男性:「私はカーミュ・セーグル」

 男性:「第一席です」


 男性:「お前ら、俺は恥ずかしいぞ」

 男性:「俺は、アスマ・アーゼス・カミキ・セーグルです」

 アスマ:「俺達は、ずっと立場が上でやって来たので礼儀を知らない」

 アスマ:「勘弁してください」


 レイセ:「第何席ってどういう意味だ?」


 アスマ:「円卓の騎士と違って序列があるんだよ」

 アスマ:「俺は第二席な」


 カーミュ:「君たち、馴れ馴れしいね」


 レイセ:「なんだ?」

 レイセ:「ダメなのか?」


 カーミュ:「妬ける」


 レイセ:「アスマ、お前苦労してそうだな」


 アスマ:「だろ?」

 アスマ:「俺を天然扱いしてたが、そうでもないだろ?」


 プロミ:「かもね」


 リビア:「ふふ、なんのために集まったんでしたっけ」

 リビア:「緊張して損しました」


 メイ:「えーと、カーミュに歌を聞かせる前に、一度会っておきたいとの事でしたね」


 カーミュ:「そうそう」

 カーミュ:「私は向こうの世界に行けないからね」

 カーミュ:「消える前に聞いておきたい」


 アスマ:「消える前?!」


 メイ:「どういう事ですか?!」


 カーミュ:「この先の流れを読めている」


 アスマ:「またそれか」


 メイ:「嫌な予感がします」


 レイセ:「そうなると思った」

 レイセ:「準備出来てるぞ」


 リビア:「レイセの言った通りになりましたね」


 プロミ:「同一存在か、なるほどね」


 アスマ:「何納得してるんだ?」

 アスマ:「説明してくれ」


 カーミュ:「ああ、つまり、レイセと私は同一の存在なのさ」


 アスマ:「?」


 レイセ:「俺の集合無意識からカーミュは出来ているってことだ」

 レイセ:「丸々全部じゃ無いが」


 メイ:「それと、消える、の、繋がりはどうなってます?」


 レイセ:「戦争に勝つには、『トゥエルブ』が仲間になるだけじゃ足りないんだな?」


 カーミュ:「その通り」

 カーミュ:「『ウォーターフォックス』達は強い」

 カーミュ:「数で上回るだけじゃ勝てない」


 アスマ:「……」


 レイセ:「融合の必要が有るんだな?」

 レイセ:「恐らく自意識の強い方が残る」


 アスマ:「それで事前に会いたいって言って来たのか?」


 レイセ:「可能性はあったからな」


 レイセ:「ただ単に、自意識に任せるんじゃ無いだろ?」


 カーミュ:「だね」


 プロミ:「訓練場に案内するわ」


 リビア:「人払いは済ませてあります」


 アスマ:「一騎打ちか」


 メイ:「みたいですね」


 アスマ:「カーミュは自分が負けると思っている」


 メイ:「そうですね」


 アスマ:「アイツが予想外した事あったか?」


 メイ:「無いですね」


 アスマ:「腹括らなきゃな」


 メイ:「……」

 メイ:「ですね」



 訓練場に着いた。


 レムリアスは霊体化を解いた。


 カーミュの浮遊する剣は円陣を組んでピタッと静止している。


 レイセ:「全力を出す」

 レイセ:「お前を殺すつもりでやる」


 カーミュ:「理解しているさ」

 カーミュ:「どうぞ」


 プロミとリビアは剣になった。


 俺は完全融合した。


 カーミュも完全融合している。


 カーミュは完全融合しても剣が消えない。


 剣はそのままだ。


 それでも俺の武器の性能は高い。


 カーミュは不利だろう。


 普通なら。


 カーミュ:「始める前に一言」


 レイセ:「なんだ?」


 カーミュ:「ウチの二人にね」


 アスマ:「ああ」

 アスマ:「なんだ?」


 メイ:「はい」


 カーミュ:「騙して悪かった」

 カーミュ:「負けないように努力する」

 カーミュ:「応援よろしく」


 アスマ:「勝つって言えよな」


 メイ:「ですね」


 カーミュ:「嘘は言えない」


 アスマ:「そうかよ」


 メイ:「バカですね」


 カーミュ:「話は済んだ」

 カーミュ:「後世に語り継がれる名勝負になるらしい」


 レイセ:「そんな話してたか?」


 カーミュ:「ふふ、さあ、楽しんで行こう!」



 俺は直剣二刀流。


 奴は長いバスタードソード。


 飛んでくる十一本の剣を二刀流で払い落とす。


 合間にカーミュの長い剣での攻撃が入る。


 勢いのついたバスタードソードを剣二本で受け止める。


 振りが速すぎて躱すのは無理だ。


 俺の剣で受け止めると、バスタードソードに罅が入る。


 奴は、武器の強度で負けていると自覚がある。


 だから押し込まない。


 合わさった瞬間に剣を引き、引いている間にイメージを補強して回復する。


 次のバスタードソードの攻撃までに、罅は直っている。


 戴冠式にダズと戦った時と似たような展開だ。


 素早さでの勝負だ。

 

 カーミュの体が光り出す。


 威力と素早さが一段上がる。


 俺も光る。


 威力と素早さが上がる。

 


 カーミュは迸らせていた光を内に秘めた。


 カーミュの輪郭だけが光る。


 カーミュの威力と素早さが更に一段上がる。


 おそらく、その光は、俺がプラスアルファと言っていた力だろう。


 形勢は奴に逆転した。

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