第15話 融合者
零維世:黒戸零維世。
レイセの現世の姿。
黒羽高校二年生。
副会長。
芸能活動をしている。
車が止まった。
前のドアが開き、二人降りた。
たぶん今車には誰も載っていない。
後ろ手に持ったナイフで手の拘束を切る。
アイマスクを外す。
足の縄を切断する。
後ろの席をすべて外したワゴン車だ。
後ろの扉を開いて出ようとした。
扉は開かない。
俺は扉を蹴飛ばした。
扉が開いた。
素早く車から降りる。
車の周りに四人。
森の中だ。
チンピラ風の男たちが集まって来ていた。
手前にいた男が手に持ったナイフで突いてきた。
俺は右足で男の手を蹴り上げてナイフを手放させる。
続けて男の顔面に右ストレート。
男は意識を失った。
スマートフォンで連絡を取ろうとしている奴の腹に蹴りを入れる。
スマートフォン男は蹲った。
残りの二人が蹴りを放つ。
俺は両腕でガード。
一人にタックルし転ばせる。
馬乗りになり、顎に二発かました。
男は気を失う。
もう一人が蹴って来る。
素早く起き上がり、そのもう一人の顎にハイキック。
男は崩れ落ちた。
残っていたスマートフォンの男の右を受け止め、車の側面に叩きつける。
側面から引っぺがして回り込み、右腕を首に回す。
徐々に締め上げていく。
零維世:「おい」
零維世:「目的は?」
男は黙ってもがくだけだ。
返事しやがらない。
そのまま締め上げて、落とした。
男が手に持っていたスマートフォンを拾った。
画面はまだロックされていない。
電話番号帳を探る。
電話番号や名前に不自然なところが無い。
おかしい。
保存している写真を順番に見ていく。
風景や建物の写真が続く。
不自然さが無い。
こいつの服装からチンピラと判断したが、それすらも偽装の可能性がある。
もう少し写真を見ておくか。
やはり風景が続く。
送信済みメールに添付された写真を確認する。
わかった。
出てきた。
白金組だ。
ヤ〇ザだ。
その関係者。
白金組は国内最大のヤ〇ザだ。
そして、最新の送信済みメールは俺の素性と写真だ。
俺に懸賞金をかけるといった文章が複数人相手に送信されている。
そこまで調べた所で、スマートフォンは煙を出し始めた。
余りの熱さに放り投げると、炎をあげて燃え尽きた。
先に仲間に連絡すれば良かったか?
連絡手段が無くなった。
事態は不味い方へ不味い方へ移行していく。
仲間を呼ばれた。
ここはたぶん東京都心から離れた田舎の山中だ。
人の気配所か、道の気配が無い。
森にどうやって入って来たのかさえ分からない。
この場所で待ち合わせていた可能性もある。
さっさと移動しよう。
索敵で人気が多い所をめざす。
人の多い所に行くと回りに被害が出るのでは?
一瞬だけそう感じたが考え直す。
そんな場合じゃない。
日本最大の暴力組織だ。
どんな手に出て来るかわからない。
自分の身を最優先させる。
最悪を想定すると、その通りになってしまう。
首に手を回す。
首に巻かれた魔道具が取れない。
非常に不味い。
首と魔道具が深く一体化しているのがわかった。
力で引き剥がすと間違いなく首が損傷する。
損傷が酷すぎて再生が追い付かない可能性がある。
首の再生が追い付かないと死ぬ。
首に一体化しているので気付いた。
これは魔道具じゃない。
部分融合だ。
敵の誰かが部分融合で出したんだ。
神獣を操る力を減衰させる部分融合。
こっちで部分融合出来ている事だけでもかなりのやり手だ。
その上特殊な効果を付与していやがる。
さっき倒したチンピラ風の奴等にはそんな実力者はいなかった。
この部分融合は本体と繋がってる筈。
俺の位置はバレバレだ。
今首輪の解除は無理だ。
すぐにでもここを去らないといけない。
でもここを離れる前にしておく事がある。
車の中に俺の持ち物が無いか確認した。
無い。
俺の持ち物は何も残っていなかった。
全力で山を下る。
* *
ハッ、ハッ、ハッ。
ダァーーーン!!
零維世:「クソッ!!」
人がいる場所に出る前に数人に追いつかれた。
あらかじめ近くに待機していたらしい。
そして銃で撃たれている。
当たってはいないが、いつ当たるかもわからない。
それに山の中に一般人がいたら迷惑がかかる。
銃相手に背を見せるのは得策じゃない。
始末する。
俺は振り返って音が出た方向へ向かう。
ハッ、ハッ、ハッ。
ハッ、ハッ、ハッ。
機敏に移動する。
まだ余裕がある。
大分近づいた筈だ。
そろそろ撃って来るだろう。
ダダァーーーン!!
二発ほぼ同時。
複数個所から発射。
二発共には対処できない。
一発ずつだ。
二発来たと認識した瞬間、一発ずつの方向が別と判断した。
二方向の内一方向にナイフを投げた。
銃弾一発が肩を掠めた、が関係ない。
俺の投げたナイフは敵の体に命中した。
手ごたえがあった。
部分融合のナイフだ。
敵の位置が正確にわかる。
ナイフは刺さると引き抜けない構造だ。
ハッ、ハッ、ハッ。
軽快に走って目的地に着く。
この男は移動しなかった。
左足にナイフが刺さっているが、動けない訳じゃ無かっただろ。
態とだ。
こいつは囮だ。
そろそろ他が撃って来る。
腰を下ろし木に背を預けて両足をダランと広げていた男の顔面を蹴った。
男は気を失った。
男に刺さったナイフを消し、止血する。
止血するのに両腕が塞がったタイミングで発砲音が鳴り響く。
姑息な手を使う。
仲間意識が無いらしい。
発砲は一発だけだ。
位置の見当が付いた。
位置と気配を照らし合わせ、対象を絞り込む。
銃弾は俺の左脇腹に当たっていた。
銃弾が当たったせいで左脇腹の肉がシェイクされている。
非常に痛い。
部分融合で補強し、再生をイメージする。
こっちの世界でも部分融合出来る。
その他の能力も意志の強さによっては使えるだろ。
たぶん今回は大分無理しないと乗り越えられない。
結界も実現させないとな。
止血を終えた俺はさっきの気配を探す。
虫の様な小さい気配だが見つけるのは簡単だった。
気配を消して近づき、背後から不意打ちで気絶させた。
どいつも身分証になる物を持っていない。
その場を後にした。
しばらく走ると民家が見えてきた。
バス停の外灯がチカチカと点滅している。
接触不良かな。
ベンチに座る。
五分程休憩した。
落ち着いて来た。
一度考えを整理する。
テレビ局から連れ出されて何時間経ったのだろう?
収録は正午過ぎに終わっていた。
どこかで昼食を済ませて次の場所に移動するつもりだった。
思い出すと空腹を感じる。
腕時計を取り上げられて時間が正確にわからない。
日が傾き始めていた。
夕方五時頃って感じだ。
山の中で暗闇という状況を避けられた。
それは良かった。
だが、首輪があっては位置がバレるのを避けられない。
俺はこの局面をどう乗り切るか考えないといけない。
まず一つ。
俺は狙われている。
誰にか?
白金組だ。
何のために?
このタイミング、『トゥルーオーシャン』の戦争が関係してそうだ。
香織の予言通りになった。
『リーベラティーオー』のメンバーの中に白金組と顔が効く奴がいるんだろう。
俺を消す気なら、こっちの世界で俺を消した方が手っ取り早い。
俺はどうするべきか?
このままでは無限に追いかけられる。
敵の本拠地に行って頭を潰すか、安全な場所に逃げるかだ。
友介達と連絡を取りたい。
一旦オヤジのグループに匿って貰えないか?
準備して、白金組の本拠地を叩く。
連絡はどうする?
交番で借りれる。
最悪パトカーで近所まで送って貰う。
財布を落としたと言ったら何とかなるだろ。
正直に狙われてると言ってもいい。
俺は芸能人だ。
普通よりかは有り得る話だ。
そうと決まれば急いだほうが良さそうだ。
暗くなってきた。
交番が見つからなかったら野宿する事に成る。
しばらく村を走り回る。
どの家も灯りが点いていない。
あからさまに不自然だ。
公民館の様な建物があった。
掲示板で周辺の地図を確認する。
交番、交番。
…………。
あった。
近い。
交番に着いた。
少年が机の前に腰かけている。
制服を着た警官はいない。
どういう状況だ?
仕方ない、声を掛ける。
零維世:「すいません」
???:「あ、今はパトロールに行ってますよ」
零維世:「貴方は?」
???:「神木遊間(カミキアスマ)です」
???:「貴方は、もしかして黒戸零維世さん、ですか?」
零維世:「知られているのは悪い気しませんね」
零維世:「神木遊間さんよろしく」
遊間:「こんなところでどうされました?」
零維世:「実は財布を無くしてしまいまして、電話を貸して貰えないかと……」
遊間:「そこに有るのを使って下さい」
零維世:「ありがとうございます」
なんでお前が許可出すんだよ。
そもそもお前なんでいるんだ?
聞きたいが電話が先だ。
妙な事に成って来た。
神木遊間。
こいつ融合者だ。
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