第10話 対決前夜


 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 ニーナ:ニーナ・アイマー。

     黒戸美月と融合した。

 アリア:アリア・アランテ。

     篠宮美弥子と融合した。

     ニーナとは幼馴染。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

 コナル:青井友介。

     連合国クロトの戦闘顧問

     黒戸美月が気になる。

 ファガス:黄山十夜。

      海洋国家ドバスカリの重要処。

      リアンナと婚約した。

 ベル:黒沼直樹。

    聖国クリアの守護者長の纏め役。

    ランと結婚した。

    物理と数学の教師。

 カー:聖国クリアの守護者長。

    ベル、ラン、とは兄妹同然で育った。

    琥珀聖。

    魔法タイプ。

 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

    死兵国プロンシキの英雄だった。

    死兵使い。




(レイセ視点です)


 氷上国家カハの目の前に来ている。


 レムリアスに跨って限界速度でカハまで来た。


 カハまで来たのは、俺、コナル、ファガス、ニーナ、アリア、ベル、カーだ。

 


 プロミとリビアは置いてきた。

 


 俺はここで死ぬかも知れない。


 そんな予感がしている。


 俺はその予感を乗り越えたかった。


 二人が来てしまうと、俺が成長出来ない。


 俺は自分の甘えを自覚していた。


 最近は二人に助けられ過ぎている。



 コナルとファガスの活躍も見たいしな。

 


 カハの前で皆を待つ。


 中で待つわけにはいかなくなった。



 壁の大扉に兵士らしき人物達が整列して待っていた。

 

 完全に動きを読まれている。

 

 先に来ているな。


 キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。



 一応の歓迎が有るのは、カハが態度を決めかねている為だろう。


 慎重な国だ。


 全員揃った。


 大扉まで歩く。




 整列する兵士達の中央に目を引く人物が一人。


 風格がある。


 レイセ:「私は『フィナリスラーウム』のレイセです」


 ネロ:「『ディープフォレスト』のネロです」


 目と目が合う。


 何の動揺も感じられない。


 お互いそう感じている。



 お互いが自然と手を伸ばし、握手していた。


 好感が持てる。


 仲間になって欲しい。


 敵に回すと大変そうだ。


 ネロ:「一旦宿でお休みになられますか?」

 ネロ:「我々は後日でも構いませんよ?」


 レイセ:「お言葉に甘えます」


 ネロ:「宿の手配を」


 兵士:「はッ!」



 俺達は兵士の後に続き、宿まで案内された。


 上品な良い宿だ。


 嫌味が無い。



 コナル:「レイセ、急がなくて良かったのか?」


 レイセ:「休んだ方が良いから勧められたんだ」


 ファガス:「休憩無しで駆け付けたからな」

 ファガス:「休みたかったのが本音だろ?」


 コナル:「そうだけど……」

 コナル:「アイツいるだろ?」

 コナル:「弱味を見せて良かったのか?」


 ニーナ:「私、会った事無いけど……」

 ニーナ:「警戒し過ぎじゃない?」


 コナル:「動きを読んで先回りしてる奴を警戒するなって言うのか?」


 アリア:「レイセさん、何の為だと思います?」


 レイセ:「ネロ王との話し合いに立ち会うつもりだろ」


 ファガス:「話し合いだけで済まない可能性もある」


 カー:「休みを促されたんだ」

 カー:「話合いだけでは終わらないね」


 ベル:「僕もそう思います」


 レイセ:「どっちにつくか、代表の実力が見たい、ってなるかもな」


 ベル:「なるでしょうね」


 カー:「……、で、『ウォーターフォックス』は自信満々で待ってる訳かい?」


 レイセ:「かもな」


 コナル:「警戒は必要だろ?」


 ニーナ:「そうみたいね」


 アリア:「キシが提案したのかしら?」


 レイセ:「言いそうだ」


 はー、やっぱりな。


 だと思った。


 キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。



 めんどくせーな。

 

 蹴散らしてやる。




 *     *




 (キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー視点です)


 ネロ王が戻って来た。


 一人でだ。


 キシ:「言った通りになりましたね?」


 ネロ:「……、貴方には好感が持てません」


 キシ:「何度も聞いて飽きてきました」

 キシ:「試して頂けるのですよね?」


 ネロ:「不本意ですが……」


 キシ:「もうこの話し方止めて良い?」


 ネロ:「好きにしろよ、外道!」


 キシ:「君、嫌なら話に乗ってこないでいいよ」


 ネロ:「裏があるかもしれないだろ!?」

 ネロ:「俺は自国第一なんだよ!」

 ネロ:「どう転んでも破滅に向かいそうだろ」

 ネロ:「迂闊に動けるか!」


 キシ:「慎重に動くってのは、クターも同意見なんだろ?」

 キシ:「自信持てよ」


 ネロ:「はぁー、お前なんでクターを知ってるんだよ?」


 キシ:「なぜかな~?」


 クターは『ディープフォレスト』の頭脳。


 そして精神的支柱だ。

 


 ネロ王は文武に優れたカリスマだが、頭脳においてはクターに頼っている。


 キシ:「明日は『ディープフォレスト』の主要メンバーが全員揃うんだよね?」


 ネロ:「そうだ」


 キシ:「クターは隠した方が良いかもね」


 ネロ:「どういう意味だ」


 キシ:「メッキが剥がれる」

 キシ:「目線で誰に頼ってるのかバレるよ」


 ネロ:「お前はもう帰れ」

 ネロ:「チームで打ち合わせる」


 キシ:「真面目だなー」

 キシ:「勝手に決めたく無いって?」


 ネロ:「お前、ホント帰ってくれ」


 カハが魔物の王の配下に狙われた際に助けてやった事がある。


 クターの事はその時知った。



 紹介は無かったが、兵士と会話を制限されていた訳じゃ無い。


 名前は簡単にわかった。



 開放日に声を掛けておいて良かった。


 コツコツ頑張った甲斐があった。


 日頃の努力って大事だなー。



 メッキが剥がれるなんて言ったが、ネロ王は正真正銘のカリスマだ。


 戦闘能力も統率力もかなり高い。

 


 僕は今回一人で来た。


 誰も連れて来ていない。


 動けるのが僕一人だった。


 と、言うか『静寂』十九人達を動かし続けている。


 この人数にはまだ慣れていない。

 


 レイセと組まれるとその場で殺されかねない。

 

 レイセは何人連れて来たのか?

 

 正式な立ち合いに持っていかないと、詰む。


 賭けに出てるのは僕の方なんだよね。


 でも正々堂々と戦ってくれるだろう。


 正義の味方は大変だ。



 キシ:「帰るよ」

 キシ:「宿はレイセと別にしてくれよ?」

 キシ:「レイセ、か」


 ネロ:「案内してやってくれ」


 兵士:「承知しました」


 この勝負、互角に持って行かないと、『リーベラティーオー』が瓦解する。

 

 だけどまだこの段階では殺され無いだろ。


 気楽に行こう。



 *     *



(レイセ視点です)


 ネロ王との会談は今日の昼からだ。


 ゆっくり休めた。



 どの程度動きが読まれているか気に成る所だ。


 関係ないけどな。



 まず間違いなく一騎打ちになる。


 コナルとファガスの活躍は無いな。



 正式な立ち合い。


 真剣勝負になるのだろうか?


 ならないな。



 どっちかが死んだら、戦争が決定する。


 管理人の選定はコインの枚数だ。


 最悪ネロ王が止めるだろ。



 昨日暗殺されなかった時点で、死人が出る心配は無くなった。


 勝負の行方を決める要素は何か?


 奴の実力を予想する。

 


 奴の特徴は死兵を使う事。


 それしか解っていない。

 


 個人の戦闘能力が不明だ。


 神獣との完全融合は出来るだろうか?


 出来るだろう。



 結界の強度も高そうだ。


 武器の扱いはどうだろう?


 俺は紫幻師範代とアイナ先生に手ほどきを受けている。


 そんな奴はまずいない。



 分がある筈だ。


 魔法はどうか?


 俺は理魔法が得意だ。


 支援魔法は得意じゃない。



 奴は魔法をどの程度使えるのだろうか?


 俺が劣っている可能性がある。



 俺は七つの大罪”怠惰”持ちだ。


 長期戦が有利。



 奴はどうだろう?


 大罪の欠点を克服していると仮定する。


 ”傲慢”の利点は、運動限界の維持。


 ”強欲”の利点は、動きの模倣。


 ”嫉妬”の利点は、先読み。


 ”憤怒”の利点は、瞬発的な力の向上。


 ”色欲”の利点は、精神干渉に強い事。


 ”暴食”の利点は、動作の最適化。


 ”怠惰”の利点は、弱点を見つけ、後の先を取りやすい事。


 俺は短期決戦に弱い。


 と、言うか、”嫉妬”と相性が悪い。


 その次は”憤怒”か。

 

 この勝負に続きがあるなら、”強欲”にも警戒が必要だ。


 全ての可能性を選択肢に入れておく必要がある。


 その他のカードは何か?


 霧化。


 奴も出来そうだ。


 蜃気楼化。


 これも出来そうだ。


 瞬間移動。


 理魔法が使えるだけでは無理だ。


 そして、対処法がほぼ無い。


 奴が使えない可能性がある。


 質量増加。


 使えるだろう。


 武器化。


 出来ない可能性がある。


 が、今回の勝負には出番が無い筈。


 一騎打ちだ。

 

 遠方から魔法を撃ちあう勝負になり難い。


 勝負を分けるのは、武器の扱い、七つの大罪、瞬間移動。


 ダンジョン攻略のレポートは出回ってる筈。


 奴も手に入れてるだろ。


 なら、存在感にダメージを与えるコツは掴んでるだろ。


 やはり勝負を分けるのは、武器の扱い、七つの大罪、瞬間移動。


 そうなる。


 

 考えを整理しておいて良かった。


 ある可能性を思いついた。


 勘だ。


 俺の手持ちのカードで勝負できるか不安に成って来た。


 奴はファイブカードを手札に持っている可能性がある。


 ポーカーの様にいかないと思い知らせてやる。


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