『ジ ワン』～神獣との契約者、不老の人外は挑み続ける～

第4話 やっとかよ

　レイセ：レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

　　　　　黒戸零維世。

　　　　　連合国クロトと聖国クリアの王。

　リビア：聖国クリアの元代表。

　　　　　レイセと結婚している。

　プロミ：プロミネンスの略で通り名。

　　　　　本名はルビー・アグノス。

　　　　　黒崎鏡華。

　　　　　月と太陽の国アウグストラの女王。

　　　　　国では現人神と扱われている。

　ニーナ：ニーナ・アイマー。

　　　　　黒戸美月と融合した。

　　　　　五章主人公。

　アリア：アリア・アランテ。

　　　　　篠宮美弥子と融合した。

　　　　　ニーナとは幼馴染。

　リアンナ：リアンナ・ドバスカリ。

　　　　　　海洋国家ドバスカリ女王。

　　　　　　黒沢香織。

　　　　　　ファガスと婚約。

　コナル：青井友介。

　　　　　連合国クロトの戦闘顧問。

　　　　　黒戸美月が気になる。

　ファガス：黄山十夜。

　　　　　　海 洋国家ドバスカリの重要処。

　　　　　　リアンナと結婚した。

　ベル：黒沼直樹。

　　　　聖国クリアの守護者長の纏め役。

　　　　ランと結婚した。

　　　　物理と数学の教師。

　ラン：聖国クリアの守護者長。

　　　　案内人最後の七人の内の一人。

　　　　案内人時代はリビアが師匠。

　ダズ：聖国クリアの代表代理。

　　　　クリアの元上司。

　　　　アリアにプロポーズした。

　フレド：フレドリック・ユルロア。

　　　　　ピナンナと結婚。

　　　　　連合国クロトの守護者長の纏め役。

　アル：聖国クリアの守護者長。

　　　　案内人最後の七人の内の一人。

　　　　戦闘は魔法タイプ。

　　　　好戦的。

　ボーデン：ボーデン・バレット。

　　　　　　フレドの補佐。

　　　　　　元冒険者。

　　　　　　戦闘は魔法タイプ。

　カー：聖国クリアの守護者長。

　　　　ベル、ラン、とは兄妹同然で育った。

　　　　琥珀聖。

　　　　魔法タイプ。

　シングライト・クルフェミュア：黒戸和馬。

　　　　　　　　　　　　　　　　管理者のバランサー。

　　　　　　　　　　　　　　　　昔の英雄。

　シグ：シグ爺。

　　　　クリアが案内人だった時の組織のトップ。

　　　　ダズの上司だった。

　　　　故人。

　俺は晴れない気持ちのままだった。

　憂鬱。

　嫌な予感は続いたままだ。

　気持ちを切り替えたい。

　必死に成れて無いのかもな。

　会談は明日だ。

　とにかく何かしないと、七つの大罪“怠惰”が出てしまう。

　会談中、部屋で引きこもってる奴が管理者に推される訳無い。

　でもなー。

　どうすっかな、この気持ち。

　あー、サボりたい。

　今日は昼から、『創聖』の代表、ロミールと会う。

　街の防衛に呼ばれないとすることが無い。

　ジークを呼び出して訓練するか。

　そう思ってると、メイドのナナが部屋の扉まで来た。

　戦闘能力が無い彼女は気配が駄々洩れだ。

　ノックする前に声を掛ける。

「入って良いぞ」

「失礼します」

　彼女は驚か無い、慣れている。

「おはようございます」

「身支度はお済のようですね」

「どうした？」

「実は、主様の親族を名乗る方がお見えになってるとの事で……」

　ふむ。

　朝から来客ね。

　罠の可能性がある。

　慎重に対処するべきだ。

「名前は？」

「バルド・ゼード、と名乗っておられるとか」

　やっと来やがった。

　懐かしい名だ。

　忘れる所だった。

　たぶん警戒は必要ない。

「ここに通してやってくれ」

「親族で間違いない」

「お連れの方もいらっしゃるとの事ですが……」

「構わん」

「通せ」

　五分後。

　ナナが扉まで来た。

　気配は二つ。

　もう一人連れて来る理由に心当たりが無い。

　一人で来てくれた方が、懐かしい話が出来たんだが……。

　しかし、今更会いに来る理由は何だ？

　まあ、会うんだが。

　ナナがノックする前に声を掛ける。

「良いぞ」

「では」

　四十代位の大男と、可愛らしい女性が入って来た。

「爺、随分若返ったな」

「ホントはこの年代が一番しっくりくるんじゃ」

「お前は変わらんな」

「爺には俺がどう見えてるんだか……」

「戴冠式には顔を出してくれても良かったんじゃ無いか？」

「まあな」

「状況が変わった」

「お前、ヤバい事に成っとるな」

「本題は後回しだ」

「ハグさせてくれ」

「ガキのまま大人になりやがってからに」

　俺達はハグした。

　ちょっと泣きそうだ。

「それで、そちらの女性は？」

「お前、わしに爺とはもう言えんぞ」

「久しぶり、お爺ちゃん」

「!!」

「アリシアか？」

「ええそう」

「私、アリシア・ノキシュ」

「ハグしとく？」

「する」

「抱っこの方が良いか？」

「子供扱い！」

　無視して、俺はアリシアを高い高いした。

「大きく成ったなー」

「お爺ちゃん、ちょっと、恥ずかしい……」

「別れた時はもう大きかったでしょ」

　俺はアリシアを降ろした。

「お爺ちゃんも随分立派になって……」

「凄いだろ？」

「凄いけど……」

「大変な事に成ってるね」

「クラン『悠久の旅人』は知っとるよな？」

「わしらはそこに所属しとる」

「もう本題か？」

「もう少し良いだろ？」

「あれからどうしていた？」

「お前がジグのとこに所属したのがわかったんでな、奴に任せて国を出た」

「あの絵本は？」

「シングライト・クルフェミュアは知っとるか？」

「ああ、知り合いだ」

「けっこう親しい」

「！？」

「親しい？」

「あんな奴とか？」

「融合者の存在を知ってるか？」

「当り前じゃ」

「ギレイがリーダーじゃぞ」

「お前もそうじゃろ」

「わかってたんだな」

「向こうの世界では、そのシングライト・クルフェミュアが俺の親だ」

「…………」

「バルド、シングライト・クルフェミュアって？」

「昔の英雄」

「今は管理者じゃ」

「…………」

「絵本は奴が持って来おった」

「なるほど」

「話を戻すぞ」

「クラン『悠久の旅人』は、どこの国にも所属せず、各国を旅して回ってるんだろ？」

「俺の知識はその程度だ」

「まあええじゃろ」

「ギレイを説得して、お前ら『フィナリスラーウム』に協力することにしたんじゃ」

「そうか、助かる」

「悪いが、爺たちの実力を試させて貰うぞ」

「お前はわしを爺と呼ぶな」

「ややこしいからな」

「バルドで良い」

「少し寂しい気がするな」

「わかった、バルド」

「お爺ちゃん、管理者に成るつもり？」

「誰かがやるなら俺がやる」

「そういう気持ちだ」

「まだその程度の覚悟だ」

「そう」

「嫌か？」

「うん、嫌」

「この子は自分より強い奴と結婚したいって言い張って、未だに結婚しとらん」

「お前が貰ってやってくれれば話が纏まるんじゃが？」

「はあ？」

「バルド、お前、アリシアに勝てないのか？」

「お前、自分が勝てると思っとるんじゃな」

「わしの見た所、二人の勝率は五分五分じゃぞ」

「ははは、それは無い」

「俺が負ける訳無いだろ」

「世界の広さを思い知るんじゃな」

「うふふ」

「私結婚できるかな？」

「まて、俺が勝っても、結婚は無い」

「えー、血、繋がって無いじゃない」

「そういう問題じゃない」

「まあ、お爺ちゃんが勝てればだから」

「傭兵王にして聖王たるこの俺に勝つとか……」

「自信満々」

「そういう奴ほど弱いけど大丈夫？」

「負けパターンだよ？」

　イラっとした。

　孫が相手でも本気出してやる。

　だがその前に紹介しとかないとな。

「ナナ」

「ルビーとリビアを呼び出してくれ」

「会わせたい人が来てる」

「承知しました」

「お急ぎですか？」

「まあそうだ」

「戦闘出来る格好でと伝えてくれ」

「午後に来客がある」

「悪いが今から訓練場に来てもらう」

「さっそくじゃな」

「いつでもどうぞ」

「俺も着替える」

「先に行っててくれ」

「ナナ」

「案内を」

「承知しました」

「楽しみだなー」

　その余裕、いつまで持つかな？

　十分後。

　訓練場。

「呼び出されたから準備しようとしたら、お客が先に訓練場に来るし」

「ふふ、挨拶は済ませましたよ」

「そうか、二人とも悪いな」

「それで？」

「実力を試すのよね？」

「そうなんだが……」

「アリシア、バルド、どっちからやる？」

「その前に一言良いじゃろうか？」

「この美しいお嬢さん二人も妻にするとは……」

「クリア、上手くやりおったな」

「だろ？」

「だから会わせたかったんだ」

　プロミとリビアは慣れっこだ。

　微笑んでるけど。

「兄貴、私に紹介無いの？」

「ふーん」

「お前、いたの？」

「いるわ」

「明日会談なんで、みんな訓練場に来てるから」

「アリアもニーナも出席しないだろ？」

「そうなんだけど、レイセさん、冷たい」

「なぜ、みんなを呼ばないのよ？」

「う、バルドが俺とアリシアは五分五分って言うから……」

「あんま見られたくない」

「保険だ」

「なんだそれ？」

「マジで言ってるのか？」

「フレド、お前入ってくんなよ」

「レイセが負ける所が見たいぜ」

「アリシアさん頑張ってくれよ」

「俺もレイセが負ける所、見たい」

「俺も、俺も」

　ファガス、コナル、お前ら。

「レイセと五分五分なら、俺も試したい」

　ダズ。

　お前、結構戦闘狂な。

「僕達は親族扱いではない、と」

　ベル、ラン、カーもいる。

「言い訳できるかしら～」

　リアンナ、うるさい。

「もういい、わかった」

「その位にしてくれ」

「王、ちょっと笑える」

　ジーク！

　お前は俺の味方しろよ！

「さっさと終わらせる」

「アリシア、俺とだ」

「準備運動させてくれ」

「いいけど……」

「ガッカリさせないでね」

　俺は剣を振る。

　槍を振るう。

　ハンマーを振るう。

　ブーメランを投げる。

　弓で結界を撃つ。

　霧に成る。

　蜃気楼に成る。

「アリシア、準備運動は？」

「する！」

　素直でよろしい。

「アリシアさん、レイセは衛星軌道上の魔物を槍で射抜いてます」

「理魔法の達人だ」

　ボーデン、アル、言うなよ。

　アリシアは、嬉しそうに笑ってやがる。

　アリシアは剣を振るう。

　槍で突く。

　ハンマーを振るう。

　ブーメランを投げる。

　弓で結界を撃つ。

　霧に成る。

　蜃気楼に成る。

　蜃気楼に成った所で、おお！

　と感心する声が聞こえた。

　アリシアは、一歩踏み出した。

　三メートル先に瞬間移動しやがった。

　理魔法が使えるらしい。

　楽しくなってきた。

　俺も三メートル瞬間移動する。

　アリシアは嬉しそうだ。

　皆は絶句している。

　なるほど、五分五分ね。

　この分だとバルドも相当やるな。

　子供の頃はわからなかった。

「さあ、もういいか？」

「OKよ」

「うふふ」

「こんな感覚久しぶり」

「俺が勝っても結婚はしないからな」

「勝ってから言ってよね」

　俺達は剣を交差させた。