第3話 今出来る事

 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 ニーナ:ニーナ・アイマー。

     黒戸美月と融合した。

     五章主人公。

 アリア:アリア・アランテ。

     篠宮美弥子と融合した。

     ニーナとは幼馴染。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと結婚している。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

 リアンナ:リアンナ・ドバスカリ。

      海洋国家ドバスカリ女王。

      黒沢香織。

      ファガスと結婚。

 コナル:青井友介。

     連合国クロトの戦闘顧問。

     黒戸美月が気になる。

 ファガス:黄山十夜。

      海洋国家ドバスカリの重要処。

      リアンナと結婚した。

 ベル:黒沼直樹。

    聖国クリアの守護者長の纏め役。

    ランと結婚した。

    物理と数学の教師。

 ボーデン:ボーデン・バレット。

      フレドの補佐。

      元冒険者。

      戦闘は魔法タイプ。

 ロウエル:ロウエル・ノキシュ。

      エウェルの娘の子孫。

      商業都市ノキシュの代表。

      契約者。

 クルダム:クルダム・ゼロス。

      連合国クロトの文官長。

      宰相。

      契約者。

      長身。

      痩身。

 ダズ:聖国クリアの代表代理。

    クリアの元上司。

    最後の案内人七人のうちの一人。

 フレド:フレドリック・ユルロア。

     通称フレド。

     連合国クロトの守護者の纏め役。

 カイン:聖国クリアの守護者長だった。

     レイセごとシェルミに胸を貫かれた。

 シェルミ:聖国クリアで賢者と呼ばれていた。

      現在は魔物の王と行動を共にしている。





 三つの光は像を描き出した。


 ホログラムって奴だ。



 映し出されたのは杖を突いた老人だった。



《この世界の摂理に触れる者が現れた》


《わしは、世界に七つ存在する、言わば神の様な存在の一つじゃ》


《わしら七つに欠員がでた》


《その数、三つ》


《補填せねばならぬ》


《選定はこれを多く集めたものから順に行うものとする》



 老人の掌の上にコインが浮かび、ゆっくりくるくると回転する。



 像は消えた。



 再び、ブンと像が復元した。


《おっと、そうじゃった》


《大迷宮には無いぞ》


《あれは摂理の外側にあるものじゃ》


《早うせいよ》


《わしらにも限界はある》


《健闘を祈る》

 


 像は完全に消えた。



 ブブ、ブブ、ブブ。



 魔道具が振動している。



 プロミからだ。



『どうした?』


『引き金を引いたのね』

『アウグストラの空中におじいさんが映し出されたわ』

『この世界の主要都市全てに映し出されたんじゃない?』


『一旦アウグストラに戻る』

『その後、メロイリスとネストロスに連絡を取る』


『…………、わかったわ』

『リアンナにも連絡しとく』


 通信を終えた。


 俺はベルに連絡をしなければな。


『…………』


『見ました』

『聖国に集まるんでしょう?』

『準備しときます』


『頼む』

『人工衛星はどうなった?』


『まだ三つですね』

『みなが集まるまでには残りを上げときます』


『衛星に対してキシは動いたか?』


『確認出来てませんが、仮面の男と合流してたなら必要無いのでは?』


『……』

『撃ち落とされる可能性がある』

『警戒を緩めないでくれ』


『……』

『なるほど、了解』


『また後でな』


 通信を切った。


「みんな聞いてたか?」

「アウグストラに戻ろう」


 皆は頷いている。



 俺達は洞窟を離れた。




 *     *




 アウグストラに戻った後、転送装置を使って聖国に移動した。


 関係国のトップが揃う予定だ。



 コインはダンジョンから得られる。


 国同士の争いに発展するのは目に見えている。


 関係国だけでも意見を同じにしとかないといけない。

 


 会談は五日後に決まった。


 国内の意見を統一するには短い期間だ。


 が、急がないといけない。


 人工衛星から他国の動きを探っている。


 詳細な動きまでは正確にはわからないが、人の動きが活発になってきているようだ。



 俺もメロイリスとネストロスが来る前に意見を確認しとかないとな。


 ダズ、リビア、フレド、クルダム、ロウエル、プロミ、リアンナ。


 この七人に確認を取る。


 レイセ:「はいどーもー、えー、それではこの七人で話し合う訳ですけども」


 ダズ:「レイセ、真面目にやれ」


 ダズ、お前が言うな。


 レイセ:「わかった」

 レイセ:「…………」

 レイセ:「で?」

 レイセ:「俺以外にいないだろ?」


 プロミ:「…………、まあね」


 ダズ:「仕方ない」


 ロウエル:「私は賛成ですが」


 リビア:「……、ちょっと心配です」


 リアンナ:「無茶しそうなのよね~」


 クルダム:「確かに」


 レイセ:「俺、神に成りたかったんだ」


 プロミ:「嘘付け」


 ダズ:「ファガスとコナルはどう言ってる?」


 リビア:「嫌そうでした」

 リビア:「ニーナとアリアもそうです」


 フレド:「ベル達もうちの奴等もみんなそうだぜ」

 フレド:「他にいねぇんだよなー」


 レイセ:「じゃー、決定な」


 フレド:「チッ」


 レイセ:「舌打ちやめろよ」

 レイセ:「態度悪いぞ」

 レイセ:「メロイリスとネストロスにも俺を推して貰うぞ」


 プロミ:「んー、そうね」

 プロミ:「そうなるわね」


 レイセ:「他に言っとくことは?」



 …………。



 みな無言だ。



 レイセ:「そうか」

 レイセ:「自分担当の町のダンジョンを攻略する準備を始めてくれ」

 レイセ:「魔物の動きも活発化してる」

 レイセ:「邪魔してくるかもな」

 レイセ:「俺は攻略じゃ無く防衛に専念する」

 レイセ:「わかってると思うが、自国の攻略が終わったら他国が侵略してくる可能性が有る」


 プロミ:「連合都市ゼススト、ロベストロニア帝国、氷上国家カハ、三国とも協調性が無いわ」

 プロミ:「私達『フィナリスラーウム』関係国なら脅威に成り得ないと思うけど……」

 プロミ:「そうならない、と思ってるのね」


 レイセ:「ああ」

 レイセ:「キシが仮面の男と何か仕掛けて来る」

 レイセ:「管理者に成れば契約を解除できると考える奴等もいるだろ」

 レイセ:「融合者からの接触は、今の所聖国の『創聖』だけだからな」

 レイセ:「妨害は避けられない」


 リビア:「『創聖』は力に成ってくれそうです」


 ダズ:「愛国心の強い奴らだ」

 ダズ:「代表のロミールには一度会っておいてくれ」


 レイセ:「そうだな」

 レイセ:「じゃ、解散だ」



 皆が会議室から出ていく。



 俺は執務室に戻った。



 ふう。


 疲れる。


 話の規模が大きい。


 特に管理者。


 正直、別に成りたいわけじゃ無い。


 そういう流れだからそれに従ってるだけだ。

 


 世界をぶっ壊す。



 気持ちがわからなくも無い。

 


 シロさんに融合者として選ばれる人間の条件を聞いた。


 寿命で死ねない人間が選ばれるらしい。


 俺達は老衰する前に、何らかの形で死んでいたという事だ。


 だからと言って、融合者にしていいと思っている訳じゃ無い。


 しかし、彼に協力者が必要なのも事実だ。


 世界の危機だからな。


 彼に発破をかける奴が必要だったんだろ。


 彼の助けをすることに不満は無い。


 

 『ロストエンド』に行く前の俺はどんなだったっけか?


 美月の成長とオヤジの仕事を継ぐ事しか考えてなかったな。


 あれは、あれで幸せだった。


 今ならそう思える。



 今は幸せなのだろうか?


 たぶんそうなんだろ。


 カインとシェルミの事を含めてもそう思える。


 あの二人がああなる事は想定外だった。


 あの時は。



 でもだ、二人の父親を殺した後、二人が俺を殺しに来る予感はしていた。


 今振り返ってみると腑に落ちる。


 ダズには悪いが、父親を殺された恨みはそう簡単に割り切れない。


 そしてカインは生き返ってるだろう。


 シェルミは魔石を回収していた。


 らしい。


 ギルバド達も生き返っている可能性が有る。


 二人を取り戻せる可能性は残されているだろ。



 俺は楽観視して、追い詰められてはいないのだろうか?


 どうだろう?


 むしろ、悲観的なのかもしれない。


 ギルバド達が攻めて来た時、奴らの想定を上回る事が出来なかった。



 今俺達は能動的に動けてるだろうか?


 ただ状況に対処しているだけなんじゃ無いか?


 奴らを上回る事が出来るだろうか?



 今度の相手はキシだろう。


 『ウォーターフォックス』、キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。


 奴が仮面の男に合流している筈だ。


 一人で一国を守り続けていた男。


 今度こそ想定の上を行かないといけない。

 


 考えろ。


 考えろ。


 奴らはどう出て、この先どうなるか。


 俺は今状況に押し流されようとしている。


 茫然と時間だけが過ぎようとしている。


 それで良いのか?


 他に何かできる事は?



 この先、管理者になるとしても、当分先だ。

 

 まず今に集中する。


 今。


 今だ。



 …………。



「コンコンコン」


「入って良い?」


「ああ」

「暇にしてたとこだ」


 プロミとリビアが執務室に入って来た。


「慰めに来てやったわ」


「少し心配で」


「バレてたか」

「受け身になるしかない状況にイライラしてるのかも、と考えてたとこだ」


「考えても仕方ないじゃない」


「何か起こってからじゃ、対処できるかわからないぞ」


「最善を尽くすしかないです」

「でも、その最善を考えてるんですよね?」


「そうだな」


「出来る事と出来ない事がある」

「想定しておけば対処できるなんて、思いあがりかもね」


「…………、なるほど」


「今出来る事を考えましょ」

「一緒にね」


「ですね」


「じゃ、貴方に質問していくわ」


「おう、どうぞ」


「この先の最悪の状況ってどう考えてるの?」


「仮面の男が管理者に成り、力を得てしまう事だ」

「そうなったら他の管理者が殺されるだろう」

「きっと世界が破滅する」


「随分先の事を考えてますね」

「今の最悪を想定してください」


「ああ、そうだった」

「今、今な」

「うーん」

「陣取り合戦で負ける可能性が有るのは、その他の勢力全てが手を組んで来ることだ」


「それです」

「その位先の事で良いんです」


「魔物の王と仮面の男は手を組まないでしょ?」


「たぶんな」

「魔物の王は試練の一つだ」

「南大陸のほとんどが奴の物だ」

「南大陸のダンジョンは後回しになる」

「俺達が連合都市ゼススト、ロベストロニア帝国、氷上国家カハのダンジョンを攻略出来るかどうかだ」

「そうしないとコインを独占できない」

「何せ、席は三つある」


「何か思いついた?」


「俺がキシなら、プロンシキで勝負に出ない」

「位置が悪い」


「それで?」


「ゼスストかロベストロニアに取り入る、かもな」


「最悪はそれ?」


「ちょっと待て、最悪は三国取られる事だ」


「なるほど」

「では、そう想定しておきましょう」


「やっぱ人間同士の戦争になる」


「ならないかも知れないわ」


「そうだと良いが…………」


 嫌な予感がする。


 そうならないと良いが…………。

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