エピローグ 戴冠式3

 ニーナ:ニーナ・アイマー。

     黒戸美月と融合した。

     五章主人公。

 アリア:アリア・アランテ。

     篠宮美弥子と融合した。

     ニーナとは幼馴染。

 レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。

     黒戸零維世。

     連合国クロトと聖国クリアの王。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

     すでにリビア・クロトと名乗っている。

 プロミ:プロミネンスの略で通り名。

     本名はルビー・アグノス。

     黒崎鏡華。

     月と太陽の国アウグストラの女王。

     国では現人神と扱われている。

 リアンナ:リアンナ・ドバスカリ。

      海洋国家ドバスカリ女王。

      黒沢香織。

      ファガスと婚約。

 コナル:青井友介。

     連合国クロトの戦闘顧問。

     黒戸美月が気になる。

 ファガス:黄山十夜。

      海洋国家ドバスカリの重要処。

      リアンナと婚約した。

 ベル:黒沼直樹。

    聖国クリアの守護者長の纏め役。

    ランと結婚した。

    物理と数学の教師。

 ラン:聖国クリアの守護者長。

    案内人最後の七人の内の一人。

    案内人時代はリビアが師匠。

 ダズ:聖国クリアの代表代理。

    クリアの元上司。

    アリアにプロポーズした。

 フレド:フレドリック・ユルロア。

     ピナンナと婚約。

     連合国クロトの守護者長の纏め役。

 ボーデン:ボーデン・バレット。

      婚約者がいる。

      フレドの補佐。

      元冒険者。

      戦闘は魔法タイプ。

 リトアニ:魔道国家ネストロスの宰相。

      出来る宰相。

      モテそうな見た目なのに独身。

 サッサラ:魔道国家ネストロスの魔道技師。

      ラナイア、へサルの上司。

      リトアニがモテないように火種を潰して回っている。

      リトアニには全く気付かれていない。

      マジックバック開発者。

 フィビニ:月と太陽の国の守護者。

      能力が突出し過ぎて別枠扱い。

      至って平凡な見た目。




 休憩時間中にベルがピナンナの座っていた席に座った。



 まだ次の試合まで時間が有る。


 さっき、レイセの控え室に向かうベルを見かけた。


 ベルに詳しい話を聞かんといかんな。



 ニーナ:「どしたの?」

 ニーナ:「ランが恋しくなった?」


 ベル :「ランの事はいつも思ってるよ」

 ベル :「でも、この席に座ったのは、休憩時間にレイセから指示があったからだね」


 アリア:「試合内容に係る事かしら?」


 ベル :「どうもそうらしい」


 ラン :「ふーん」

 ラン :「兄貴、理由言ってた?」


 ベル :「言う訳無い」

 ベル :「アイツ、勿体つけやがって」


 アリア:「聡明な黒沼先生、見当は?」


 ベル :「フィビニが僕に興味持つように仕向ける、みたい」

   

 ニーナ:「なんで?」


 ベル :「さあー?」

 ベル :「正直迷惑なんだけど」


 ラン :「後輩が欲しいって言ってたよね?」


 ベル :「優秀過ぎるのは、ちょっと…………」


 アリア:「正直!」


 ニーナ:「正直だね」


 ラン :「確かに、狂信者ってとこ以外欠点無いしね」


 ベル :「意地張っても仕方無いから言うけど、追い抜かれるのイヤだなー」


 ニーナ:「笑とけ、笑とけ」


 アリア:「そね、笑い飛ばすしか無いわ」


 ベル :「他人事だと思って」

 ベル :「全然笑えません」


 ラン :「ほら、二人は音魔法で抜かれたから」


 ニーナ:「おい!」

 ニーナ:「抜かれてない」

 ニーナ:「並ばれただけ!」


 アリア:「失礼な!」


 ベル :「笑とけ、じゃ無かった?」


 ニーナ:「う」


 アリア:「流石の切り替えし」

 アリア:「聡明」


 ラン :「うふふ」




 話してると時間が来た。



 そろそろ始まる。



 合図のラッパが鳴った。



 二人が出て来る。



 大きな正方形の石畳の上を、左右反対方向から中央まで、二人の男が歩く。


 大きな歓声が会場に響く。

 


 左がレイセ。


 右がフィビニ。


 


 歩み寄る二人。



 会場は静かになった。



 剣と剣が触れたと同時に、試合が始まった。



 レイセの剣が右から左へ。


 フィビニの剣が右から左へ。



 剣と剣がぶつかり合う。




 剣で押し合いながら、二人は睨み合っている。


 レイセ :「人を賭けの対象にする奴に、アイツは渡さん」


 フィビニ:「それは貴方の方では?」


 レイセ :「じゃあ、俺が負けてもアイツを諦められるんだな?」


 フィビニ:「そんな訳無いでしょう!」

 フィビニ:「あれは僕のだ、返してもらう!」


 レイセ :「諦めろ」

 レイセ :「お前は勝てない」


 フィビニ:「貴方は相応しくない」

 フィビニ:「諦めるのは、貴方だ」

 フィビニ:「証明してあげます」


 レイセ :「やってみろ」




 フィビニは右肩の上に腕を作り、剣を振り降ろした。



 レイセは、結界で細長い杭を作り、それを防いだ。



 フィビニは自身の左側に菱形の結界を三つ作った。


 菱形の結界は碧に輝いている。


 結界は引き伸ばされ、杭状になる。



 結界三つが猛スピードでレイセの右側に突っ込む。



 レイセは、細い杭状の結界で、それを防いだ。



 結界を維持したまま、二人は大きくバックステップ。



 フィビニの左肩にもう一本腕が生えた。



 フィビニは元からあった腕に弓を持ち、肩に生えた腕で矢をつがえる。


 弓を二つ同時に使う気らしい。



 矢は、碧の結界で出来ていた。



 フィビニから連続で矢が放たれる。



 矢は光となってレイセに向かう。



 レイセはさっき出していた結界四つと、追加で出した結界三つで矢を払い落とす。



 がむしゃらに矢を放つフィビニ。


 七つの結界をそれぞれ別々に動かし、丁寧に対処していくレイセ。



 遠距離戦が続く。



 矢は次第に複雑な軌跡を描いて飛ぶようになってきた。


 が、レイセは意に介さない。




 ニーナ:「さあ!」

 ニーナ:「盛り上がってまいりました!」

 ニーナ:「解説のベルさん、今のやり取りをどうご覧になります?」


 ベル :「解説?」

 ベル :「いいでしょう」

 ベル :「ノってあげますよ」

 ベル :「そうですね」

 ベル :「レイセが優勢です」

 ベル :「レイセはカウンターを狙うのが得意です」


 ニーナ:「レイセがカウンター型なのは、ランさん、アリアさんと同意見です」

 ニーナ:「私も含めた四人が同じ意見でしょう」

 ニーナ:「では、ベルさん、この先の展開は?」


 アリア:「その予想、ハズレるわ」


 ラン :「うふ、だね」


 ベル :「予想を言ってからにして貰えるかい?」


 ニーナ:「ささ、予想を! (当てるなよ)」


 ベル :「今小声で何か言わなかった?」

 ベル :「まあいいや」

 ベル :「フィビニは戦いながら成長する」

 ベル :「目に見えて変わる」

 ベル :「そろそろ、レイセの結界捌きをコピーし始める」

 ベル :「レイセの奥の手がどこまで続くかの勝負だろうね」


 ニーナ:「勝負の行方はどうでしょう?」


 ベル :「レイセが逃げ切るさ」

 ベル :「そのために僕を前の席に来させた」


 アリア:「説得力があるわ」


 ベル :「ダズさんを止めて僕に乗り換えるかい?」


 アリア:「うふ、いい気分」


 ラン :「うふふ」


 ニーナ:「ラン、よく笑えるね」


 ラン :「本気じゃ無いって解ってるもん」

 ラン :「じゃ無いとカーが悲しむ」


 よく見ると、ランとベルは手を繋いでた。


 お熱い事で。



 コナルも隣に来ればよかったのに。



 あいつ、誘わないと今だに遠慮しよる。


 私に引っ張り役させるとは、解せん。




 フィビニは相変わらず矢を打っていた。



 打つ速さはどんどん加速していく。



 レイセは相変わらず、七つの結界で払い落としてる。



 フィビニが追い付くのを待ってるのか?



 フィビニは矢を打ちながら、結界を出した。



 七つ。



 フィビニの結界は、レイセの結界の動きを阻害しにかかる。



 レイセはフィビニに向かって、ゆっくりと歩き出した。



 フィビニの結界がレイセの結界を攻撃する。



 フィビニの結界は次々と粉砕される。



 フィビニは次々と結界を創り出す。



 フィビニの結界は輝き出した。



 レイセの結界を食い止め始める。



 レイセは結界を更に倍出した。



 フィビニの額から汗が零れる。



 フィビニも倍出す。



 レイセは更に四本結界を出した。



 レイセの左右に二本ずつ浮遊している。



 フィビニの矢は、レイセの左右二本ずつの間に吸い込まれ砕け散る。



 フィビニが他に出していた結界も、吸い込まれて、砕け散る。



 レイセは一歩踏み出した様に見えた。




 一瞬でフィビニの前にレイセがいた。



 見えなかった。



 強く輝くレイセはフィビニの腹を剣で払った。



 フィビニは腕を更に二本追加し、盾で防御していた。



 レイセの全力の払いで、盾は大きく歪み、フィビニは観客席に吹き飛ばされた。



 フィビニは観客席に張られた結界にぶつかって、落ちた。



 気を失っている。



 レイセはフィビニまで歩いて、抱き起した。



 フィビニは気を失ったままだ。



 レイセはフィビニを抱いたまま、闘技場の中央まで歩いた。



 レイセはフィビニの頬を軽く叩きながら声を掛ける。


 レイセ :「フィビニ!」

 レイセ :「おい!」

 レイセ :「しっかりしろ!」

 レイセ :「手加減してやっただろ、何やってる!」


 フィビニ:「…………」

 フィビニ:「う、聞こえてます」

 フィビニ:「何が手加減だ!」

 フィビニ:「全く!」


 レイセ :「気が付いたか?」

 レイセ :「じゃあ立て!」


 フィビニ:「貴方ね~!」

 フィビニ:「いや、いいです」

 フィビニ:「すぐに立てそうに無いです」


 レイセ :「そうか?」

 レイセ :「まだやれますって言われると思ってたぞ」


 フィビニ:「今回は負けにしといてあげます」


 レイセ :「そうか、俺達を認めるか」


 フィビニ:「今回は、ですよ!」


 フィビニはレイセにしがみ付いて、立ち上がった。



 レイセはフィビニの手を掴み、挙げさせた。



 二人は観客に手を振って控室に戻った。



 手を振った時、大声援で耳が痛かった。




 ニーナ:「ベルさん、予想通りでしょうか?」


 ベル :「概ねは」


 アリア:「矢が吸い込まれ出してからの展開は、理解が追い付かなかった」

 アリア:「ベル、解説お願いできるかしら?」


 ベル :「予想を言う事なら可能だけど……」


 ニーナ:「アレを予想出来るの?」

 ニーナ:「マジで?」


 ラン :「あたしの旦那は凄いでしょ」


 ニーナ:「そんな、惚気に構ってられるか」

 ニーナ:「邪魔しないで」


 アリア:「そうね、解説が聞きたい」


 ラン :「余裕無いなー」


 ベル :「はは」

 ベル :「予想だから、あとで本人に確認してね」

 ベル :「まず、矢が吸い込まれたのは結界の質量が増えたからだ」

 ベル :「結界を部分融合させて質量を増大させ、光をねじ曲げたんだろう」

 ベル :「この世界の僕たちは、概念で出来てるが、物理法則も適応されてる」

 ベル :「ちょっと想像できない位の質量を、あの結界は持っていたんじゃないかな」

 ベル :「僕達の作り出す結界や光は軽いんだろうね」


 アリア:「相対性理論の話?」


 ベル :「そう、よく勉強してるね」

 ベル :「その通り」


 ニーナ:「…………」


 ラン :「…………」


 アリア:「じゃ、じゃあ、一瞬で目の前にいたあれは…………」


 ベル :「たぶん、アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ、じゃ無いかな」

 ベル :「僕達はこの世界で、気体にも、液体にも、金属にも成れる」

 ベル :「光にも」

 ベル :「加えて、時空間魔法で空間を湾曲させられる」

 ベル :「現実には実現できない、負のエネルギー、そのものにも成れるはずだ」

 ベル :「物理学的に、莫大なエネルギーが必要でも、僕達自身が不老の魂」

 ベル :「永久不滅のエネルギーだしね」

 ベル :「実証されてしまうと、可能だと言う他無いね」


 ニーナ:「アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ、ってアレ?」

 ニーナ:「ワームホール?」


 アリア:「それ」


 ラン :「何の事?」


 ベル :「簡単に言うと、瞬間移動、空間転移、とかかな」

 ベル :「フィビニがいくら優秀でも、偉大な天才物理学者達には届かないらしい」

 ベル :「僕、物理と数学でマウント取れるんだった」

 ベル :「心配して損した」


 

 私は付いて行けるか心配になって来た。




 *      *




 プロミ:「王足らんとするものは、その実力を示しました!」

 プロミ:「彼の者を王として認めます!」

 プロミ:「レイセ・クリア・クロト・ノキシュ」

 プロミ:「民の為、良き王として務めを果たしなさい」


 レイセ:「ははっ!」


 プロミ:「頭をこちらへ」



 レイセはプロミに頭を向け、プロミが聖油をレイセの頭に振りかける。



 神官長のヒルデが、王冠を載せた台座をプロミに差し出す。



 プロミは、片膝をついたレイセの頭に王冠を被せた。


 プロミ:「レイセ・クリア・クロト・ノキシュ、連合国クロト、聖国クリアの王に祝福を!!」



 レイセが民衆に向かって手を振る。



 会場全体から割れんばかりの拍手が鳴り響く。




 レイセ:「この時を以て年号を聖王歴と改める!」

 レイセ:「我らに祝福を!!!」




 戴冠式が無事に終わった。



 後は、結婚式だ。



 本来は盛大に行われる筈だった結婚式。


 だが、式には民衆を招かず、小規模となった。


 戦いの前に宴を行ったメンバーのみ招かれた。


 カインとシェルミのいない結婚式は、盛り上がりに欠けるものとなった。




 皆は戴冠式の様に空元気を振りまかなかった。




 花嫁達の豪華な装いも、儚く見えた。

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