6章
プロローグ
戴冠式と結婚式を終えた俺達は、俺が高校二年になるまで、美月が高校一年になるまで『トゥルーオーシャン』での活動を停止した。
その間、美月には『トゥルーオーシャン』について一切話さなかった。
俺達が説明してしまうと、その時点で未来が確定し改変が起こる可能性があった。
話さない場合、俺達は異世界で出会わないかもしれない。
美月がいないと魔物の王の配下、ギルバド達三人を倒す事が出来ないかもしれない。
俺達の結婚式に美月が出席出来ないかもしれない。
それでも良かった。
妹達には『トゥルーオーシャン』に来てほしく無い気持ちもあった。
魔物の王、仮面の男、『ロストエンド』が出来た経緯を考えると、俺達の将来には困難が待ち受けている。
妹達が巻き込まれない可能性も残したかった。
『トゥルーオーシャン』には、新たに管理者を選定する機能がある。
マスター、黒巣壱白がハッキリ宣言していたから確実だ。
管理者。
神。
俺は中学三年生の時に『異世界転生録 ロストエンド』を書き上げた。
その物語の主人公は、物語の最後、神に至る。
俺が描きたかったのは、その過程にあった。
これからいよいよ管理者の選定が本格化する。
この流れを傍観している融合者を取り込むための予言書のつもりだった。
物語を書き上げてから二年ほど経つが協力を願い出る者は現れていない。
これは諸刃の剣だ。
この物語は後になるほど効いて来る筈だ。
物語の効き目についての不安は無い。
効き目を重視した俺は、俺が背負った責任を果たす為リスクを負った。
世界は、管理者は、よりドラマ性の高い方向へ舵を切るだろう。
俺は自分が本当に管理者となる可能性について考えなければならなくなった。
俺は永遠に生きる覚悟をした。
しかし、管理者となるのはどうか?
想像できない。
俺にはまだその覚悟が無い。
俺の目指す所は、改変の無い世界にする事、仮面の男とマスターを同一の存在に戻す事。
そして、世界を守る事だ。
俺は考えないといけない。
どうすれば全てを実現できるのかを。
マスターが『ロストエンド』を造ったのは、仮面の男を管理者から遠ざける為の協力者を得る事が目的だった。
マスターは『フィナリスラーウム』に賭けてくれるらしい。
『ロストエンド』は融合者を増やす事を、止めた。
マスターは、黒戸和馬に力の一部を譲渡し、『ロストエンド』の運営に関わるのを止めた。
シロさんは管理者では無くなった。
今、『ロストエンド』に行くと、出迎えるのは樹百枝さんと長月瑠璃さんだ。
明日、俺は四年ぶりに『トゥルーオーシャン』での活動を再開する。
しばらく、現世に戻れないだろう。
世界を守る、か。
いつか今を思い出し、懐かしむ未来が訪れるのだろうか?
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