エピローグ 戴冠式1
ニーナ:ニーナ・アイマー。
黒戸美月と融合した。
五章主人公。
アリア:アリア・アランテ。
篠宮美弥子と融合した。
ニーナとは幼馴染。
レイセ:レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。
黒戸零維世。
連合国クロトと聖国クリアの王。
リビア:聖国クリアの元代表。
レイセと婚約している。
すでにリビア・クロトと名乗っている。
プロミ:プロミネンスの略で通り名。
本名はルビー・アグノス。
黒崎鏡華。
月と太陽の国アウグストラの女王。
国では現人神と扱われている。
リアンナ:リアンナ・ドバスカリ。
海洋国家ドバスカリ女王。
黒沢香織。
ファガスと婚約。
コナル:青井友介。
連合国クロトの戦闘顧問。
黒戸美月が気になる。
ファガス:黄山十夜。
海洋国家ドバスカリの重要処。
リアンナと婚約した。
ベル:黒沼直樹。
聖国クリアの守護者長の纏め役。
ランと結婚した。
物理と数学の教師。
ラン:聖国クリアの守護者長。
案内人最後の七人の内の一人。
案内人時代はリビアが師匠。
ダズ:聖国クリアの代表代理。
クリアの元上司。
アリアにプロポーズした。
フレド:フレドリック・ユルロア。
ピナンナと婚約。
連合国クロトの守護者長の纏め役。
ボーデン:ボーデン・バレット。
婚約者がいる。
フレドの補佐。
元冒険者。
戦闘は魔法タイプ。
リトアニ:魔道国家ネストロスの宰相。
出来る宰相。
モテそうな見た目なのに独身。
サッサラ:魔道国家ネストロスの魔道技師。
ラナイア、へサルの上司。
リトアニがモテないように火種を潰して回っている。
リトアニには全く気付かれていない。
マジックバック開発者。
フィビニ:月と太陽の国の守護者。
能力が突出し過ぎて別枠扱い。
至って平凡な見た目。
聖都クリアは大勢の人で溢れている。
今日は、王の即位、戴冠式が執り行われる。
主役はレイセだ。
レイセ・クリア・クロト・ノキシュ。
北の傭兵王にして、聖国の王。
世界初の、二国の王だ。
レイセは連合国クロトで戴冠式を行ってない。
連合国の正式な即位も今日だ。
昨日レイセに会った。
緊張していやがった。
珍しい物を見た。
つい笑ってしまった。
私?
私は気楽なもん。
今日は観客。
私は用意していた歌を歌うのをやめた。
いつかすべてが解決したなら、その時が歌う時だ。
月と太陽の国女王ルビー・アグノスが、聖職者として式を執り仕切る。
式は、この日の為に作られた、野外闘技場で行われる。
式の流れは、まず、王に相応しい実力を持っていると、大勢の民衆に示す所から始まる。
つまり、試合をする。
今日は、殺陣の様な決まった動きをせず、本気で全力の試合をする事に成ってる。
それも三試合ある。
連合国クロトの代表、聖国クリアの代表、そして、月と太陽の国アウグストラの代表。
フレド、ダズ、フィビニだ。
三者とも、それぞれに思う所があるみたい。
レイセは馬鹿だから、
「良い試合をする所を見せるだけだ」
「勝っても良いぞ」
「勝てればな」
とか言って、三人を煽りやがった。
三人は、
フレド :「態と負けてやるつもりだったが、気楽になったぜ」
ダズ :「そうか」
ダズ :「なら、お前の成長を本気で試すぞ?」
フィビニ:「僕に負けたら、プロミ様との結婚は諦めて下さい」
て、言ってた。
ノリ良いよね。
レイセはまだ全快してない。
それでも三試合、全て勝つつもりだ。
次に、ルビー・アグノスが実力を認め、祝いの言葉を贈る。
そして、レイセの頭に聖油を塗り、レイセは王冠を被る。
そんな流れになっている。
そろそろ試合が始まる。
私達の席は、ちょっとVIPな席だ。
最前列の良いとこ。
身内だからね。
リビアや、リアンナ、クラウシア様、リトアニ様は、もっと特別な場所に座ってる。
管理者の二人もそこにいる。
私の隣は、アリアとランだ。
サッサラとか、ピナンナも前の席だ。
闘技場の観客席は、すり鉢状になっている。
野球場みたいな感じ。
試合場の全体を見たい場合は、一番遠くの席が上段で見易い。
コナルやファガスら男性陣は最上段で観るらしい。
ボーデンだけはエーディンさんと、どっか別の場所で観てる。
「私は月と太陽の神アウグストラ」
「王たらんとする者よ、我が前にその力を示せ!!」
管理者二人の前で、堂々と神を名乗る親友。
そこはいいか。
そろそろ始まる。
解説は、私、ニーナ・アイマーとアリア・アランテ、ラン・クロヌマで御送りします。
大きな正方形の石畳の上を、左右反対方向から中央まで、二人の男が歩く。
大きな歓声が会場に響く。
左がレイセ。
右がフレド。
歩み寄る二人。
二人が手に持った剣を交差させれば試合が始まる。
会場は静かになった。
剣と剣が触れたと同時に、試合が始まった。
レイセは触れさせた剣を右に引き、右から左へ。
フレドも同じ動作で、右から左へ。
剣と剣がぶつかり合う。
フレドの剣が、レイセの剣を押し返す。
レイセは一歩後退。
フレドは一歩前進。
前に一歩踏み込んだレイセのダガーが、フレドの盾に弾かれる。
フレドは、右手の剣を横に振るう。
レイセは大きく下がって距離を取る。
お互い、一定の距離を保ちながら、円を描くように歩く。
左手で盾を持つフレドの死角に入る為、レイセは時計回りに歩く。
フレドはそれに合わせて、同じように時計回りに歩く。
ニーナ:「解説のアリアさん」
ニーナ:「今の二合をどう見ますか?」
アリア:「え?」
アリア:「解説?」
アリア:「まあいいや」
アリア:「付き合ってあげる」
アリア:「そうね」
アリア:「フレドが優勢」
アリア:「レイセさんが押し負けてる」
ニーナ:「ランさんはどう見ます?」
ラン :「うん」
ラン :「同じ意見」
ラン :「やっぱり兄貴の体調は回復してないわ」
ニーナ:「そうですねー」
ニーナ:「私も同意見です」
ニーナ:「では、この先の展開をどう予想します?」
ラン :「ふふ、いつまでこれ続けるの?」
ラン :「フレドの得意武器は剣と盾」
ラン :「フレドは基本的に私と同じタンク」
ラン :「実は、兄貴は攻めより受けが得意だけど、フレドを相手に攻めを強いられてる」
ラン :「力で押し負けてる兄貴に長期戦は不利」
ラン :「兄貴は連続攻撃で一気に勝負するわ」
ニーナ:「なるほどー」
ニーナ:「私よりレイセの事知ってる口ぶりで若干腹立つ」
アリア:「解説するんじゃ無かったの?」
ラン :「ま、まー、私が知ってるのは、案内人時代の話だけど」
ニーナ:「私も同意見です」
ラン :「さらっと言いよる」
ラン :「何?」
ラン :「八つ当たり?」
ラン :「『七つの大罪:嫉妬』が出てるの?」
アリア:「ニーナはこれで平常」
アリア:「ラン、そろそろ慣れて」
ラン :「えー、無理ー」
ニーナ:「アリア、貴方の予想は?」
アリア:「初見同士の戦いなら、レイセさんは受けてカウンターを狙うと思う」
アリア:「レイセさんは『七つの大罪:怠惰』持ちだし」
アリア:「でも、二人は十年単位で訓練し合った間柄よ」
アリア:「手の内は知り尽くしてると思う」
アリア:「私は、得意武器を使っているフレドが長期戦で押され始めると思う」
ニーナ:「つまり、レイセが読みだけでタンクを崩すって事?」
アリア:「勘よ」
アリア:「勘」
ラン :「なんか、そんな気がしてきた」
ニーナ:「私も」
二人は見合ったまま、何周もぐるぐる回ってる。
レイセがフレドを誘ってるのだ。
フレドは誘いに乗らない。
めっちゃ慎重。
どんなに粘ってもフレドは誘いに乗らない。
絶対に勝つという意思を感じる。
レイセもそれを解ってる筈。
なのに攻めない。
時間の無駄じゃない?
どんな意味が有るんだろ?
レイセが短剣を投げた。
フレドの正中線上に短剣が飛ぶ。
フレドは左手の盾で短剣を弾く。
レイセは素早く、時計回り。
フレドは一歩下がって、時計回り。
レイセはまた短剣を投げた。
フレドは盾で弾いて時計回り。
レイセが消えた。
と、フレドからは見えてる筈。
私達観客からは丸見えだ。
どうなったか?
正中線上の短剣を盾で弾いた時に引っかかっていたのだ。
フレドは盾で防ぐよう、誘導されていた。
時計回りばかりさせられて、盾を使う事を強いられていた。
加えて、レイセが左から攻めると思い込まされた。
レイセは短剣を投げた瞬間、フレドの盾側、逆側に、斜めに前進した。
レイセの動きは、フレドの盾の死角に入っていた。
レイセは長柄のハンマーを右に振りかぶり、前進。
射程で、光り輝くハンマーを逆側に振りぬいた。
フレドは気配を読んで、とっさに盾で防いだが、ハンマーの威力は凄まじかった。
盾ごとフレドの腕が折れた。
腕の回復は間に合わない。
フレドの左側がガラ空きに成り、レイセはフレドの首裏に剣を押し当てる。
ニーナ:「ああー、盾で防ぐからー」
アリア:「ふふ、そう見えたんだ」
ラン :「うあー、盾を粉砕されるって、タンクとして最大の屈辱よ」
アリア:「そうよねー」
アリア:「レイセさん、性格悪っ」
ニーナ:「そう見えたって、何よ」
アリア:「全快してなくて、フレドの盾ごと腕を折れるって思うの?」
ニーナ:「じゃ、最初に押し負けてたところから、引っ掛けてたって事?」
アリア:「そうじゃないと説明つかないもの」
ニーナ:「私達、全員引っかかってるよね?」
ラン :「そうなるね」
ニーナ:「………」
ニーナ:「ムカつく」
剣を押し当てた状態で、レイセとフレドが会話してる。
私達は前の席だから会話が聞こえる。
レイセ:「こんな手に引っかかりやがって、何やってんだよ」
レイセ:「奥の手使えよ」
フレド:「うっせー」
フレド:「お前が、んなにはやく賭けに出るとは思わなかっただけだ」
フレド:「奥の手は封印中だ」
フレド:「実際のとこどうなんだ?」
レイセ:「四割って感じだな」
フレド:「だろうな」
フレド:「俺だって本調子じゃない」
フレド:「それに、俺に押し負けるって演技がお前に出来る筈ない」
フレド:「お前、次の試合、ダズが楽しみにしてるぞ」
フレド:「どうすんだよ」
レイセ:「知らん」
レイセ:「なんとかなるだろ」
レイセ:「ハンマーにあれほど威力が出るとは、俺もっとハンマー使おう」
フレド:「やれやれだ」
アリア:「…………」
アリア:「解説、やめよっか」
ラン :「だね」
ニーナ:「さあ、盛り上がってまいりました!」
ニーナ:「次の試合はどうなるんでしょうね?」
アリア:「もう」
アリア:「知らないわよ」
ラン :「解説、続ける気なんだ」
一旦始めると、簡単には終われない。
人生と一緒だ。
心が折れても、休み休みでも、続けるのだ。
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